「当時、私の上席である渡部から会社四季報を全部読破しろと最初に言われたのが2009年。それから毎号、すべて読破しています。最初に選んだ株はウェストホールディングスでした。100円ほどだったのが20倍に。株のおもしろさに目覚めました(笑)」

トルコ人ながら会社四季報を完全読破しているエミン氏。初めて買った株が20倍になったという逸話を持っている
エミンさんの会社の本棚には歴代の会社四季報がズラリ。最新号にはエミンさんがチェックした証であるフセンが恐ろしい数、貼られている。

エミンさんがチェックしている会社四季報には、フセンがビッシリ! それにしてもスゴい数だ…
「昨日はフェイスブックに『グノシーが安い』と書いたのですが、今日は20%ほど上がりましたね」(※)
(※編集部注:この取材は2015年9月28日(月)に行っている)
エミンさんの四季報分析の腕前もとても気になるところだが、今回の本題はトルコリラ。トルコ出身だからというだけでなく、エミンさんは世界のマクロ経済についても精通している。
「野村證券では2年間、アメリカ株のセールスもやっていましたし、今はトルコの政府機関にエコノミックレポートを定期的に提出しています。
最近はオイルマネーが市場に与える影響も大きいですが、それも私の専門です」
エミンさんって単なる「オモシロ外人」では決してない。オモシロだし、外国人なのは確かだけれど、証券会社のエコノミスト顔負けの経済・金融に関するプロなのだ。
■トルコリラは経済よりも政治で動く
前置きが長くなったが、本稿のテーマはトルコリラの今後。エミンさんはどう見ているのだろうか。
「トルコリラは経済よりも政局と深い関係があります。トルコ共和国が成立した1923年以降、トルコでは10回の通貨切り下げがありました」

トルコ共和国が成立した1923年以降、10回の通貨切り下げが行なわれた。トルコの紙幣には、建国の父であり初代大統領のムスタファ・ケマル・アタテュルク氏の肖像が描かれている。
写真:ロイター/アフロ
通貨切り下げって最近だと中国がやったばかり。変動相場制ではない国が自国通貨安へと為替レートを変更することだ。
【参考記事】
●中国人民銀行はなぜ人民元安に誘導したのか? 人民元を取引できるFX会社はどこ?
「トルコでは通貨切り下げの直後に必ず政権交代が起きています。10回中10回すべてです。トルコリラが変動相場制に移行したのは2001年ですが、その後も政局の不安が起きる前後にトルコリラは急落しています」
■トルコ政治を15年間牛耳ってきた政党の危機!
円を見る時に米ドル/円が基本となるように、トルコリラも基本は対米ドル。上の米ドル/トルコリラのチャートを見ると、政権交代や総選挙、反政府デモなど、政局が混迷を深めるとトルコリラ安が進んでいる(上のチャートは米ドル/トルコリラなので、トルコリラ安ならチャートは上昇)。
「変動相場制への移行は事実上の通貨切り下げでしたが、直後に政権を握ったのがAKP。
それ以来、13年間政権を握っています。銀行危機などを切り抜け、リベラル派としてこれまでトルコを成長させてきたのですが、2011年の総選挙以降は、メディアへの規制など、強権的な姿勢が目立ち始めています」

そうした不満がゲジ公園での大規模な反政府デモとして噴出。今年(2015年)6月の総選挙でのAKP過半数割れへつながったようだ。
【参考記事】
●トルコ総選挙は与党が初の過半数割れ! トルコリラ/円は大窓開け、約2円の急落!
「ゲジ公園でのデモが始まったのは2013年。その直後からトルコリラの大幅な下落が始まっています。過去の例から言えば、政権交代が近いかもしれません。その意味で非常に注目されるのが11月の総選挙なんです」
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