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陳満咲杜の「マーケットをズバリ裏読み」

日銀は追加緩和を最後のカードとして温存。
なのに米ドル高・円安に振れた理由とは?

2015年10月30日(金)17:38公開 (2015年10月30日(金)17:38更新)
陳満咲杜

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■日銀は追加緩和を最後のカードとして温存

 本日(10月30日)、日銀は追加緩和を見送った。それはサプライズではなく、むしろ当然の成り行きだ。

 何しろ、今までQQE(量的・質的金融緩和策)が効かなかったのだから、さらに追加実施しても効く保証はどこにもない。よって、追加緩和自体の意味合いは、もはや緊急時の保険ということしかなく、たびたび強調してきたように、日銀はそれを最後のカードとして温存するしか選択肢はない。

■「ある指標」が本日の「見送り」を示唆していた

 ところで、あまり良い数字が出てこない足元では、昨日(10月29日)だけが違っていた。昨日(10月29日)、発表された「ある指標」は、本日(10月30日)、日銀の黒田総裁が動かないことを一層示唆していたと思った。

 実際、昨日(10月29日)FOMC(米連邦公開市場委員会)の声明文がリリースされた後の市況において、その「ある指標」がもたらした変動は、一層目立つものだった。

 FOMCのタカ派スタンスを受け、ドルインデックスは昨日(10月29日)未明に2カ月半ぶりの高値を記録した。昨日(10月29日)の午前中、米ドル全般が堅調に推移する中、米ドル/円のみ一時急落した。 

米ドル/円 1時間足
米ドル/円 1時間足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 1時間足

 これは、「ある指標」が市場予想より良かったことが、米ドル売り・円買いを招いたからだ。これは指標が良いから円買いといった単純なロジックではなく、日銀の金融政策決定会合を控えて、日銀追加緩和の思惑後退につながったために円買いとなったわけだ。

 その「ある指標」とは、経済産業省が昨日(10月29日)、8時50分に発表した9月の鉱工業生産指数(速報値、2010年=100、季節調整済み)だ。

 鉱工業生産指数は前月より1.0%高い97.3となり、3カ月ぶりに上昇した。マーケットの予想は-0.6%だったから、ちょっとしたサプライズだった。 

日本鉱工業生産(前月比)
日本鉱工業生産(前月比)

(詳しくはこちら → 経済指標/金利:その他地域主要経済指標の推移

 同指標を受け、第3四半期マイナス成長の心配はやわらげられ、日銀追加緩和の必要性も小さくなっているとマーケットは受け止め、敏感に反応したというわけだ。

 こういった「前兆」もあって、日銀政策の据え置きは一層当然とみなされており、マーケットが極めて冷静に受け止めていることにも納得がいくだろう。

■黒田日銀の資産購入総額はGDPの69%相当まで膨張

 そもそも2013年4月から、黒田日銀総裁が主導したQQE政策では、計366.6兆円の資産が購入されており、日本のGDP(国内総生産)の69%に相当するという、とんでもない規模に膨らんでいる。

 どこまで巨大化されたかというと、単純に比較した場合、日銀のQQE総額は、米FRB(連邦準備制度理事会)、ECB(欧州中央銀行)、英BOE(イングランド銀行[英国の中央銀行])の量的緩和金額を足した総額よりも大きい。このまま政策が継続されていった場合、それはGDPの100%を超え、日銀の負債も前記中銀三行の負債総額の2倍まで膨らむ見通しだ。

 ちなみに、日銀以外では米FRBがもっとも大規模な量的緩和を実施してきたが、それでもGDPの25%にすぎなかった。

 その意味では、これ以上の追加緩和は必要ないばかりか、現在の政策自体、いずれ見直さないといけないだろう。

 何しろ、国債市場は、ほぼ日銀に「買占め」られ株式ETFの3分の1以上も日銀が直接買っている状況だ。これは明らかに異常であり、また、いずれその反動が出てくる。国債市場の硬直化は確実に進んでおり、将来の「出口なし」のリスクを考えると、さらなる追加緩和は、やはり正気の沙汰とは思えない。

 したがって、今回の日銀の決定は正しく、マーケットは行くべきところまで行っていると思われる。

■FRBが利上げ可能性を明白にしたこと自体が好材料に

 となると、執筆中の現時点で再び米ドル高・円安の局面に振れているのも、日銀政策云々よりも米ドル全面高の一環としてとらえるべきであろう。何しろ、FOMC声明は、市場の想定よりタカ派だったからだ。

 FOMCは2015年年内利上げの余地を指摘し、ウォール街の大半が米FRBの12月利上げを予想し始めた。今まで、利上げするかどうかに関して、FRBのスタンスは一進一退を繰り返してきたから、利上げ可能性を明白に表明したこと自体、ウォール街では明るいサインと受け止められ、これが一昨日(10月28日)の株式大幅上昇につながった。

NYダウ 1時間足
NYダウ 1時間足

(出所:CQG)

■市場は12月米利上げの可能性に確信を持っていない

 ところで、FRBのスタンスは急激に変わったわけではなく、あくまで12月の会合にて利上げの可能性を検討すると表明しただけで、言わば状況次第といった変動要素がなお大きい。したがって、ウォール街は手放しで歓迎しているように見えるが、表と裏の温度差は実に大きい。

 本音を探れるのはエコノミストのレポートではなく、金利先物の動向であろう。最新のデータに照らして考えると、マーケットが想定する12月米利上げの可能性は高くても46%~50%程度に留まり、今年(2015年)8月の水準より低い状態にある。

 換言すれば、FOMCが今までで最もタカ派色の強い声明文を出したにもかかわらず、2015年年内利上げの可能性について、マーケットは8月時点よりも確信を持っていない、ということだ。

 一般論では、先物市場の値動きから計算されるこの確率は、60%に達しないとマーケットが利上げの可能性を織り込もうとしない。高くても50%の確率ということは、俗にいう半々だから、確信を持つというよりは確信を持たないという意味合いが強いと見なされる。

 FRBが利上げに踏み切れないもっとも大きな原因は、市場の混乱を恐れているからだと言われている。2015年年内利上げができるかどうは米国内環境のみでなく、国際金融市場の落ち着きも必要不可決だ。

 前回利上げを見送った理由として、チャイナリスク米ドル高の弊害が指摘されていただけに、この2つの懸念が消えない限り、FRBは引き続き身動きを取れないのではないかと、多くの市場関係者は危惧している。

 この意味では、FRBは金利先物市場の利上げ予想確率が気になり、マーケットはFRBの本音が気になるという構造ができあがっているわけで、ちょっと奇妙な光景が続いている。

■ECBとFRBが同時に行動すればユーロ/米ドルはパリティ?

12月と言えば、あのECBが行動すると言っている(※)から、FRBが行動に踏み切れば、全く相反する政策が同時に行われることになり、大きなインパクトをもたらすだろう。

 こういったシナリオに基づき、ユーロに一番厳しい見方を示してきた米ゴールドマン・サックス(GS)が再びユーロ/米ドルのパリティを言い始めた。早ければ2015年年内と言っているらしいが、果たしてそうなるだろうか。 

(※編集部注:ECBが12月の理事会における追加緩和決定を示唆していることを指す)

ユーロ/米ドル 月足
ユーロ/米ドル 月足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 月足

 このあたりの検証はまた次回に譲るが、ここで言っておきたいのは、仮にGSさんの予想が正しければ、米ドル/円の反落も相当覚悟しなければいけないことである。

 なぜなら、ユーロ/円経由の円高圧力が米ドル/円にのしかかってくるからだ。米ドル高の受け皿がユーロに集中している場合、常にそういった構図ができあがるから、無視できない。市況はいかに。

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松崎美子