■FRBが利上げ可能性を明白にしたこと自体が好材料に
となると、執筆中の現時点で再び米ドル高・円安の局面に振れているのも、日銀政策云々よりも米ドル全面高の一環としてとらえるべきであろう。何しろ、FOMC声明は、市場の想定よりタカ派だったからだ。
FOMCは2015年年内利上げの余地を指摘し、ウォール街の大半が米FRBの12月利上げを予想し始めた。今まで、利上げするかどうかに関して、FRBのスタンスは一進一退を繰り返してきたから、利上げ可能性を明白に表明したこと自体、ウォール街では明るいサインと受け止められ、これが一昨日(10月28日)の株式大幅上昇につながった。
(出所:CQG)
■市場は12月米利上げの可能性に確信を持っていない
ところで、FRBのスタンスは急激に変わったわけではなく、あくまで12月の会合にて利上げの可能性を検討すると表明しただけで、言わば状況次第といった変動要素がなお大きい。したがって、ウォール街は手放しで歓迎しているように見えるが、表と裏の温度差は実に大きい。
本音を探れるのはエコノミストのレポートではなく、金利先物の動向であろう。最新のデータに照らして考えると、マーケットが想定する12月米利上げの可能性は高くても46%~50%程度に留まり、今年(2015年)8月の水準より低い状態にある。
換言すれば、FOMCが今までで最もタカ派色の強い声明文を出したにもかかわらず、2015年年内利上げの可能性について、マーケットは8月時点よりも確信を持っていない、ということだ。
一般論では、先物市場の値動きから計算されるこの確率は、60%に達しないとマーケットが利上げの可能性を織り込もうとしない。高くても50%の確率ということは、俗にいう半々だから、確信を持つというよりは確信を持たないという意味合いが強いと見なされる。
FRBが利上げに踏み切れないもっとも大きな原因は、市場の混乱を恐れているからだと言われている。2015年年内利上げができるかどうは米国内環境のみでなく、国際金融市場の落ち着きも必要不可決だ。
前回利上げを見送った理由として、チャイナリスクと米ドル高の弊害が指摘されていただけに、この2つの懸念が消えない限り、FRBは引き続き身動きを取れないのではないかと、多くの市場関係者は危惧している。
この意味では、FRBは金利先物市場の利上げ予想確率が気になり、マーケットはFRBの本音が気になるという構造ができあがっているわけで、ちょっと奇妙な光景が続いている。
■ECBとFRBが同時に行動すればユーロ/米ドルはパリティ?
12月と言えば、あのECBが行動すると言っている(※)から、FRBが行動に踏み切れば、全く相反する政策が同時に行われることになり、大きなインパクトをもたらすだろう。
こういったシナリオに基づき、ユーロに一番厳しい見方を示してきた米ゴールドマン・サックス(GS)が再びユーロ/米ドルのパリティを言い始めた。早ければ2015年年内と言っているらしいが、果たしてそうなるだろうか。
(※編集部注:ECBが12月の理事会における追加緩和決定を示唆していることを指す)
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 月足)
このあたりの検証はまた次回に譲るが、ここで言っておきたいのは、仮にGSさんの予想が正しければ、米ドル/円の反落も相当覚悟しなければいけないことである。
なぜなら、ユーロ/円経由の円高圧力が米ドル/円にのしかかってくるからだ。米ドル高の受け皿がユーロに集中している場合、常にそういった構図ができあがるから、無視できない。市況はいかに。
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