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陳満咲杜の「マーケットをズバリ裏読み」

ドラギ・ショックでユーロ爆上げ! しかし、
米ドル高トレンドは終わらず、押し目の好機

2015年12月04日(金)17:28公開 (2015年12月04日(金)17:28更新)
陳満咲杜

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■饒舌すぎたドラギ総裁、市場はショックでユーロ急騰

 中国には「言多必失」という諺がある。文字どおり、「言葉が多ければ必ず失うものがある」ということを言い表す。

 昨日(12月3日)のユーロの急反騰をみて、ドラギECB(欧州中央銀行)総裁は自分の饒舌さに後悔しているのではないかと推測される。

 

 何しろ、昨日(12月3日)、ユーロ/米ドルは1.05ドルの節目手前から何と一気に1.0981ドルまで急騰、ECBが望むユーロ安と逆行する方向に大きく突っ込んだ。 

ユーロ/米ドル 1時間足
ユーロ/米ドル 1時間足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 1時間足

ネコも杓子もユーロを売っていたから、ECBの決定をみて皆が一斉に手仕舞いし、ユーロの急騰がもたらされたわけだ。

 ネコも杓子もユーロを売っていた状況を作り出したのは、ほかならぬドラギ総裁を始めとするECBのメンバーたちだ。

 特にドラギ総裁は、「何度もやる」、「すべての政策手段を尽くす」といった発言を繰り返し、ECBが事前にマスコミに「大幅利下げ」といったリークをもらしたのかと疑われるほど、市場はECBの行動、それも大胆な行動に期待を膨らませていた。

■過剰なサプライズを期待した結果、“予想どおり=失望”に

 ウォール街もあおっていた。あのGS(ゴールドマン・サックス)はECB理事会前にユーロ/米ドルが1.05ドルの節目に迫ることを予想(これは当てた)、さらにECBの発表後に200~300pips下落する見込みありと予想していた。

 GSがユーロ安予測の最右翼とはいえ、ドラギ総裁の話を聞く限り、ユーロ安の観測に異議を唱える者はいなかった。ネコも杓子もユーロ安に賭け、違いは程度の差のみだった。

 何を隠そう、筆者もその1人だった(せめてネコにしておこうか…)。ドラギさんがあんなに言っていたのだから、サプライズがあるとすれば、ユーロ高ではなく、さらなるユーロ安に作用する材料があるのではないか、と思っていた。

 しかし、一抹の不安もあったため、ECBの金利決定直前、このようにつぶやいた。 

 結局、こういった不安が現実になった。心配したとおり、マーケットの事前予測と同じ政策が発表されても、ユーロはさらに売られるのではなく、逆にショート筋の総踏み上げが展開された。何しろ、マーケットは大きなサプライズを期待していたから、予想どおりの政策は物足りないばかりか、かえってマーケットの失望を誘ったわけだ。

 もっとも、ドラギ・マジックという言葉があったように、ドラギ総裁は市場の予想範囲を超えた行動を起こし、サプライズを演出するのに長けていた。が、今回は明らかに失敗だった。

 強いていえば、今回は予想範囲を超えるどころか、予想よりも見劣りのある内容だったと言える。あんなに「何でもやる」と言い切ったドラギ総裁の言葉を思い出せば、市場関係者は多少であれ、ドラギ・ショックを受けたに違いない。

■「ごく普通のQE」に市場は失望した

 というのは、ECBは量的緩和(QE)を6カ月延長して少なくとも2017年3月まで継続すること、購入対象資産に地方債を含めること、中銀預金金利を0.1ポイント引き下げることを決めたが、QEの月間購入額は600億ユーロ(約8兆円)を維持。さらなる拡大はなかったのだ。

 また、市場は0.1ポイントより大幅な金利引き下げを織り込み、0.3~0.5ポイントの予想も多かっただけに、まさに量も質も足りなく、「ごく普通のQE」になってしまった。

 ネコも杓子も「普通ではない」ものを期待し、ユーロを売ってきたから、このショックで市場はユーロの買戻しに殺到、米ドルは大きく売られ、パニック相場の様相を呈した。ECBは自ら演出した過剰期待を剥落させ、それが局面の急転につながったと言える。

 当然のように、ユーロの急騰は米ドル全面安をもたらし、ドルインデックスは一昨日(12月2日)の100.51から一気に97.59まで反落してきた。 

ドルインデックス 日足(クリックで拡大)
ドルインデックス 日足

(出所:CQG)

■ドラギ・ショックで米ドル全面高トレンドは終わったのか?

 ここから重要なのは、米ドル高トレンドが今回のドラギ・ショックを受け、果たして早期終焉したかどうかだ。

 今晩(12月4日)の米雇用統計がまた、重要なヒントを示唆してくれるだろう。イエレンFRB(米連邦準備制度理事会)議長が今回の雇用統計を重視するといった発言をしていただけに、昨日(12月3日)、ユーロのポジションを損切った投資家の多くは、今晩(12月3日)の米雇用統計に挽回のチャンスを賭けるはずだ。

 結論から申し上げると、今回のドラギ・ショックを受け、市場関係者は「中銀不信」に陥り、これからドラギ総裁や他のECB当局者らの言葉を鵜呑みにせず、これまでより大幅に割り引いて聞く姿勢が強まるだろう。

 したがって、ユーロ安、すなわち米ドル高のターゲットが修正される可能性が大きいが、ユーロ安・米ドル高トレンド自体の修正は、なお時期尚早であろう。

 何しろ、一昨日(12月2日)にドルインデックスはすでに2015年年初来高値更新を果たしており、米ドル高トレンドがここで終焉したとは認定しにくい。 

ドルインデックス 日足(クリックで拡大)
ドルインデックス 日足

(出所:CQG)

 その上、今回ECBが政策余地を温存した分、いざという時、政策を打ち出せる可能性が大きいので、ECBのQE策拡大自体が不変である限り、ユーロ安の早期底打ちは望みにくい。

■ECBは早晩、今回の失敗を取り返そうとするかも

 もっとも、ユーロ当局にとって、今回の失敗で招いたユーロ高がもっとも懸念すべき材料の1つだから、近々何らかの形で市場と対話し、市場関係者を慰めることも予測される。

 言い換えれば、ECBの政策余地はのりしろが大きく残っており、また、失敗したからこそ、挽回の意欲が刺激されるから、次回のドラギ・マジックのパフォーマンス効果はかえって高まるのではないかとみる。このあたりもまさに塞翁が馬、ということだと思う。

■雇用統計の結果にかかわらず、米ドルは押し目を拾う好機

 対照的に、今晩(12月4日)の米雇用統計はどうであれ、今月(12月)の米利上げが確実視される以上、米ドルの押し目は、出遅れたロング筋にとって拾う好機となろう。この意味では今晩(12月4日)の米雇用統計が、市場の想定より悪い数字になったほうが、「割引き」が大きいから、逆張りの好機に恵まれるだろう。

 米FRBが利上げを見送るという可能性は100%否定されるわけではないが、FRBの地位と重要性から考えると、その確率はかなり小さいとみる。よほどまずい状況(世界株式市場の暴落とか、大規模な戦争とか)にならない限り、米利上げが規定路線である以上、米ドル高の頭打ちはあっても利上げ後になるはずで、利上げ前の反落は想定しにくい。

 ゆえに、早ければ今晩、遅ければ来週(12月7日~)あたりに、またユーロ売り・米ドル買いのチャンスに恵まれるとみる。市況はいかに。

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