■追加緩和の有無をはかるのに重要な4月の日銀短観
日銀短観については、中小企業貸出態度指数に加えて、
「もう1つ、直接的に雇用情勢を見る指標として、『日銀短観・雇用人員判断DI』という指標があります。これは雇用が不足しているのか、過剰なのかを示す指標ですが、これを見ても雇用の不足感がどんどん強まっている状況です」(会田さん)という。

(出所:2016年1月 ソシエテ ジェネラル証券会社 東京支店「新しい日本経済の見方~デフレ完全脱却と財政安定化へ今回は何が違うのか?~」)
「日銀短観のこれら2つのDIを見て、雇用環境が持続的に改善していると判断される限り、日銀は緩和をしないだろうと考えられます。
このように、日銀の金融政策を占う上では、日銀短観がとても重要な役目を果たしますが、次の日銀短観は2016年4月の頭ということになります。
1-3月にマーケットに混乱が続いた場合、4月頭発表の日銀短観でその影響が出ているかどうかを見極め、悪い兆候が出ていれば日銀は追加金融緩和に動く可能性が出てきます。
それまでは、おそらくサプライズ的な追加金融緩和はないのではないかと思われます」(会田さん)。

日銀追加緩和があるとしたら、次回2016年4月の日銀短観を見極めてから。それまで、サプライズはなさそう?
■2015年10月と状況が変わらないなら、追加緩和はしづらい
しかし、2016年1月や2月にも追加緩和があるのでは? という観測も根強いようだが…
「3月までの追加緩和ということになりますと、2015年10月30日(金)の追加緩和なしの決定がどうしても足かせになります。10月30日(金)に比べて、どのくらい状況が悪化したのか、ということが示されないと、なかなか追加金融緩和はできません。
10月30日(金)は、GDP成長率と物価上昇率の見通しを大幅に引き下げましたし、2015年10月当時の日経平均は1万7000円台、米ドル/円相場は118円台まで落ち込むこともある状況でした。
こうした状況とあまり変わりがないのであれば(※)、追加金融緩和はしづらいということになります」(会田さん)
(※編集部注:本取材は2016年1月8日(金)に行っている)
「1月8日(金)には、2015年12月の補完措置決定の際の政策委員の主な意見が発表されましたが、政策委員たちのスタンスは総じて、『物価が上昇していく基調に変化がない』というものであり、10月30日(金)とほとんど変わっていません。
もう1つ重要なポイントは、2015年12月の決定会合で、日銀は輸出の判断を上方修正しているということです。
ということは、政策委員は景気モメンタムは循環的に底打ちして上がってきたんじゃないか、という判断をしているということになります。
そういう状況では、やはり追加金融緩和に踏み切るのは難しいだろうと思います」(会田さん)
(「ソシエテ ジェネラル・会田卓司氏に聞く(3)「1ドル=130円」を目指すと算出した計算式」へつづく)
(取材・文/小泉秀希 撮影/和田佳久)
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