無風通過と思ったら、日銀が意外な「補完措置」を決定
2015年12月17日(木)~18日(金)、日本銀行(以下、日銀)は金融政策決定会合を開催し、金融政策は維持し、追加緩和は行われなかったものの「補完措置」と呼ばれる措置を決定。ETFやJ-REITの買い入れ額を増加させることとなった。
今回の日銀会合では、金融政策は維持され、何も起こらず、無風通過になると事前に予想されていた。
【参考記事】
●米利上げは100%織り込んだ! 注目は…!?ドル/円120円割れは日銀にとって好都合?(12月15日、西原宏一&松崎美子)
そのため、補完措置の発表には意外感があり、為替市場では一時、円全面安となり、株価も急激に大きく上昇した。
しかし、この補完措置の内容が大したものでないことが明らかになってくると、市場には失望感が拡がり、あっという間に相場の流れは逆流。「行って来い」となるだけではなく、日経平均などは前日比で大幅安となるまで売り込まれた。
日銀発表後は円全面安・株高もその後は逆流
日経平均は一時、1万9800円台まで上昇したものの、その後は、1万9000円割れまで急反落。高値から安値までは900円近い値幅があり、結局、前日比360円超の大幅安となった。
(出所:株マップ.com)
米ドル/円は122.50円近辺から123.50円水準まで急騰した後は急反落し、122円の大台を割り込むまで円高が進んだ。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 5分足)
日銀が発表した補完措置の内容とは?
今回、日銀が新たに追加したQQE(量的質的金融緩和)の補完措置の中で、おもなものは以下のとおり。
(1)新たなETF買い入れ枠の設定
(2)長期国債買い入れの平均残存年限の長期化
(3)J-REITの買い入れ限度額の引き上げ
(1)の新たなETF買い入れ枠の設定については、現在の年間3兆円の買い入れに加え、新たに3000億円を追加するという。
ただ、これは日銀が過去に買い入れた銀行保有株の売却を2016年4月から、年間3000億円ずつの規模で再開するため、その市場への影響を打ち消すために行われる措置。株式+ETFで買い入れ額と売却額を合計すれば、買い入れ額が増額されるわけではないことになる。
また、(2)の長期国債買い入れの平均残存年限の長期化に関しては、これまで7~10年程度だったものが、7~12年に長期化される。
さらに、(3)のJ-REITの買い入れ限度額の引き上げについては、銘柄別の買い入れ限度額を当該銘柄の発行済み投資口の「5%以内」としているところを、日銀の保有残高が増加していることから、「10%以内」に引き上げるという。
これについてはハッキリ、日銀の購入額増額に結びつく話であり、そのため、株式が大きく下落するなか、この日の東証REIT指数は前日比1.54%高と比較的大きく上昇した。
なお、日銀の重要な意思決定は、総裁、副総裁2名、そして審議委員6名の合計9名による多数決で行われるが、今回の補完措置はいずれも賛成6人、反対3人での決定だった。
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【参考コンテンツ】
●FX会社おすすめ比較:取引コストで比べる「米ドル/円スプレッドの狭い順」
(ザイFX!編集部・庄司正高&井口稔)
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