昨日は早朝にドル円は107.49の高値を付けた。急激なジャンプであった。これはスポット取引のバリューデートが変更するに伴い、個人投資家らの強制ロスカットに引っかかったためだ。やはり意識されていたのは、イギリスの国民投票後の最大の戻し高値である106.80だった。
そこを一日の終値ベースでも超えてきたので、やむなしの損切りに至ったのである。でも107円台は無理やりに付けた感もあって、ドル円がブルになりきるのはかなり懐疑的。アジア時間の間はなんとか107円台をキープできたものの、欧州序盤にかけてやや重くなってきた。
6月下旬にドル円は100円の大台を割り込んで以来、7円も8円幅も反発している。これはファンダメンタルズ的には逆らっている状態だとしか言いようがない。経済を取り囲む環境は、イギリスのEU離脱に加えて、さらに悪化しているとしか言いようがない状態だからである。
ニースでの悲惨なテロもあり、またトルコでクーデター騒ぎも起こった。そして当のイギリスも夏はバカンスで休みことにして、離脱交渉は秋口から始めるとしている。つまり経済にとっていいことは何もなかったのだ。それを支えているのは緩和期待だけである。
マイナス金利が実際にはできないのと同様に、ヘリコプターマネーも国家として運営している以上は不可能なのである。ばらまくお金があるほど収入が余っているならば、まずは税金をゼロにしろということにつながる。それでも余ったら配ればいいのだ。
それが松下幸之助翁も主唱していた無税国家の原点である。それができないで消費増税とかを議論している最中なのに、すなわち税金を下げることもできないのに、国家権力だけでお金をばらまくことはできないのである。
それを信じたフリをして、ムシャムシャとリスクテークしてしまった反動が昨日の夕方に出た。黒田総裁がBBCラジオのインタビューで、ヘリコプターマネーなんかできないし、必要もないと発言したようである。この収録が1か月前のものであり、古い記事なのだが、それでもマーケットはすぐに反応した。ドル円は2円ほど急落し、日経先物もトップから500円落ちた。
とりあえず海外市場ではリスク回避の動きは沈静化したが、米国株は続騰を一服したので、ちょっと流れに異変が生じ始めている。そして黒田総裁の話を額面通りに受け取れば、まだまだ下げ幅は足りていないのが実情だ。それでもマーケットが多くズレにならないのは、来月はじめにもまとまるとされている財政支出のほうに淡い期待を抱いているからだろう。
昨夜の報道では20兆円とか30兆円にまで規模が膨らんできているのだが、ここまで来るともはや真水の部分は期待できない。すべて将来の支出分の前倒しと基金への積み増しだけの作文で終わってしまいそうである。マーケットもまた、その記事に反応はしていない。
どこまで期待がもつのか、そこに注目である。ドル円で言えば、ここ1か月の半値押しである103円台の前半くらいまではありうるものとして、覚悟してマーケットに臨むべきなのだろう。
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