■米ドル/円はどれくらいオーバーボートなのか?
もっとも、スピード調整とはいえ、必ずしも激しい値動きを伴うとは限らないが、やはり、オーバーの度合いが大きければ大きいほどその可能性も増大していく。
また、仮に値幅ではなく、調整の期間、すなわちスパンにおける調整がメインになってくる場合、高値圏での保ち合いが長引く傾向にあると思われる。
では、なぜ今の米ドル/円はオーバーボートなのか、そして、どれくらいオーバーなのか。
それについて、実は厳密に判定する基準はなく、また、必ず正解となる答はない。が、それにしても、一般的にオシレーター系指標をもってトレンドの行きすぎを測れると言われるから、日足において、オシレーター系指標の王者RSIをもって測定してみよう。
スパンを14と設定したRSIは、現在約78.06の数字を示し、対応する現時点の高値は110.78円となる。では、記憶に新しいいわゆる「逆噴射」をもたらした今年(2016年)1月末日銀会合後の高値121.69円に対応するRSIがどのぐらいかとみると、約63.95だったのがわかる。
換言すれば、現在、ザラ場高値の110.78円は1月末高値121.68と11円に近い差があったにもかかわらず、RSIは逆に今の方がずいぶん高くなっているから、オーバーボートであることは間違いないと思う。
もっとも、RSIも終値をもって初めて計算されるものだから、昨日(11月17日)終値の110.24円に対応していたRSIを確認してみると、77.02であるから結論は変わらない。
では、どれぐらいオーバーになっているのだろうか。
日足で見てみると、昨年(2015年)6月高値125.86円を起点とした大型下落波は、2015年8月の人民元ショックを経て、一回大きくリバウンドし、2015年11月の戻り高値を形成していた。
2015年11月におけるRSIの最高水準は71.20だったので(それに対応した高値は約123.12円だった)、昨日(11月17日)終値110.24円との差から考えて、RSIの77.02はいかに行きすぎであるかを暗示していると思う。換言すれば、その程度も深刻であり、また、歴然としたサインである。
■米ドル/円は早ければ今晩反落?
だから、トランプ氏の勝利を経て、ウォール街一夜の大反転を経て、また、イエレン議長の次回会合利上げ明言を経て、米ドル高・円安に寄与するすべての材料を織り込んだ形で足元の高値まで進行してきた米ドル/円は、そろそろ頭打ち、場合によってはいったん反落してくるタイミングに差し掛かっているとみる。
早ければ今晩(11月18日)、遅ければ来週(11月21日~)前半だと思う。
■「トランプノミクス」は幻想、ハゲタカの演出に注意!
ところで、内外を問わず、足元の米ドル高を正当化する面々の多くは、先日のトランプ氏の当選を予測できたどころか、最初から氏をバカにしていた者が多い。が、今となって氏を礼賛し、いわゆる「トランプノミクス」を延々と講釈している。
それはほかならぬ、株高・円安が進行しているからだ。
換言すれば、逆の市況になっている場合、彼らは今延々と「トランプ・ショック」を講釈しているはずだ。とはいえ、理屈の後付けが誰でもできるとは限らない、彼がこれを本当にうまくやれるからこそ、世の中で「センセイ」と呼ばれる存在になるわけだ。
筆者からみると、「トランプノミクス」は幻想だ。「アベノミクス」は、今となって不確実なものになっているが、構想を打ち出す最初の段階では、一応理念に沿った形で構築されたプランだったと思う。
対照的に、「トランプノミクス」は最初から矛盾、また厳しく言えば、欺瞞に満ちた作り話だと思う。ウォール街の連中がトランプ氏を最初からバカにしていたのは、正直なところ、わからなくもないが、今となって「トランプ・ユーフォリア」になった風潮は、見るに堪えないほど残念なことだ。
トランプ氏の大統領選当選後からにわかに巻き起こったトランプノミクス相場。それは幻想に踊らされている状態なのだろうか? (C)Scott Olson/Getty Images
が、ここで注意しておきたいのは、日本の一部自称インテリ、実際は風見鶏のセンセイと違って、ウォール街のハゲタカにとって、ユーフォリアはあくまで彼らの一種の演出にすぎない、ということだ。彼らの狙いは次のカモを射止めることだ。言うまでもないが、カモになるのはいつものとおり、センセイたちのあおりを受けた「良い人」たちだ。
次回は「トランプノミクス」のウソについて話したい。市況はいかに。
株主:株式会社ダイヤモンド社(100%)
加入協会:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)