■ドルインデックスは6週連続の陰線引けに終止符か
米ドルは反騰してきた。ドルインデックスをみると、今週(2月6日~)は陽線引けになりそうで、ここまでの連続6週間の陰線引けに終止符を打つ公算が高い。
(出所:Bloomberg)
今年(2017年)に入ってから、米ドル全体の反落が一貫して進んできただけに、いろいろな思惑が噴出してきた。
しかし、昨年(2016年)11月9日(水)から始まり、2016年年末まで続いていた、いわゆる「トランプ・ラリー」の行きすぎから考えると、先週(1月30日~)安値までの反落は、単純に言えばスピード調整というほかあるまい。これ以上の解釈も、これ以下の解釈もいらないと思うほど、シンプルな値動きだったのではないだろうか。
だから、先週(2月3日)のコラムで指摘したように、米ドルの反落は一服しやすく、大型「下落ウェッジ」というフォーメーションの示唆するとおりなら、反転してくる公算も大きかったわけだ。
【参考記事】
●2月3日の米雇用統計で米ドルは反発!? クロス円の動向に相場の大きなヒントあり(2017年2月3日、陳満咲杜)
この「下落ウェッジ」に対する反転がすでに確認された以上、米ドル全体の反騰も継続されやすいだろう。
ただし、米ドル全体の底打ちは、ある「転換点」の通過をもって証左されるので、目先、なお「通過待ち」の状態である。
その転換点とは1月30日(火)の高値(101.02)であり、同日の陰線が「弱気リバーサル」のサインを点灯し、「下落ウェッジ」の拡大につながったから、再度ブレイクがあれば、米ドルの底打ちが確定するだろう。
(出所:Bloomberg)
目先の市況に照らして考えると、その可能性は高いとみる。
■材料はトレンドのあとを追う存在。今回も然り
巷では、トランプ米大統領や側近による日本の為替政策批判を「トランプ・ショック」ととらえ、また、米ドル下落の理由と解釈する向きが多かったが、これらは米ドルがすでに反落し、また、反落が続いているときに出た材料であったことは見逃せない。
要するに、材料というものは、往々にしてトレンドのあとを追う存在であり、トレンドを決定する要素というよりも、トレンドを証左する要素である、といった性質が強い。
だから、先週(1月30日~)、ドルインデックスがすでに底を打ち、また、今週(2月6日~)に入って反騰してきたため、昨日(2月9日)は米ドル高を加速する材料があとを追う形で出てきたというわけだ。
もちろん、今回もトランプ氏の話となるが、「驚異的」税制改革案を示唆したり、側近が日米トップ会談では為替問題は優先議題ではないと言ったと伝えられたりして、米ドル高に寄与する材料が出始めたことも全然サプライズではない。サプライズどころか、当然の成り行きと思うほどの出来事で、仮にこれから米ドル高が継続していけば、トランプ氏が一転して米ドル高のメリットを語り始めても筆者は別に驚きはしない。
■米ドル高と米ドル安、どちらが良いか悩むトランプ氏!?
おもしろいのは、米ハフィントン・ポストの報道によると、2月7日(火)の午前3時、トランプ氏が「米ドル高と米ドル安のいずれが米経済に良いのか」で悩み、フリン大統領補佐官(国家安全保障担当)に電話したという。軍人出身のフリンは「自分はわからない、エコノミストに聞くべきだ」と答え、トランプ氏の悩みが深まった模様だ。
「米ドル高と米ドル安のいずれが米経済に良いのか」で悩み、フリン大統領補佐官に電話したとされるトランプ米大統領 (C)Alex Wong/Getty Images
報道が事実(おそらく事実であろう)であれば、トランプ氏にしても、トランプ政権にしても、まだはっきりした為替政策を持っていないことが露呈される。氏の日欧批判は、これまでの主張からすれば、一貫性があるものの、気まぐれの部分もかなり大きかったといえる。もっとも、トランプ氏の性格からして、このような「気まぐれ」も想定されやすかったので、今さら驚くことではなかろう。
だから、我々トレーダーはいちいち高官たちの発言に振り回されるのではなく、相場の内部構造をもっと注意深くフォローしていけば、いち早くサインを発見でき、また、トレードに応用できるだろう。
この場合、高官発言をあとづけの材料と見なして、材料が出てからは、むしろ一部ポジションの利益確定に動くことも可能であり、また、賢明なやり方だと言える。
米ドル/円を例として挙げてみると、安値111.58円を…
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