■米ドル高予想に試練! 株の反騰についていかず!
米ドル高の予想は、目先試練にさらされている。ドルインデックスは93前半の水準に逆戻り、米サイドの材料に反応しなくなってきたところも、頭の重い印象を助長してる。

(出所:Bloomberg)
米下院での税制改革法案可決が伝えられ、昨日(11月16日)の米国株の反騰に日経平均も追随しているが、執筆中の現時点の米ドルは、軟調に推移している。
米ドル/円は、日経平均の反騰についていかないばかりか、逆に反落しているから、背離する傾向すらみられる。

(出所:Bloomberg)
市場関係者は、上院による税制改革法案審議の難航を予想しているから、米ドルのロングを躊躇している、といった解釈が多く聞こえてくるが、株式市場のパフォーマンスは同じ理由で解釈しにくい。よって、あくまで適当な言い訳であろう。
米ドル全体、特に米ドル/円の値動きは、米長期金利との連動性から考えるべきだと思う。
■米長期金利の上昇なしでは本格的な米ドル高になれない
米長期金利(10年物国債の利回り)は、10月末の2.477%から一時、2.304%まで下落、執筆中の現時点では2.354%の水準に留まっている。さらに、日足に照らして考えると、三尊型(※)というフォーメーションの可能性も見られ、それが指し示すとおりに動くなら、米金利は低下傾向にあると思われる。
(※編集部注:「三尊型」はチャートのパターンの1つで、天井を示す典型的な形とされている。仏像が3体並んでいるように見えるために「三尊型」と呼ばれていて、人の頭と両肩に見立てて「ヘッド&ショルダー」と呼ぶこともある)

(出所:Bloomberg)
ゆえに、日本株が11月9日(木)まで大幅上昇していた中、米ドル/円の上値が重かったことや、その後、米ドル/円が相応の下落を果たした市況は「納得」できる。
米利上げ観測がくすぶる中、米長期金利の上昇なしでは本格的な米ドル高の構造になれず、市場関係者は総じて疑心暗鬼の心理状況であるからだ。
この意味では、米ドル/円は一時7月高値をブレイクし、11月6日(月)にて114円台後半まで迫ったものの、その後、一転して反落、一時112円台前半まで落ちていることも「仕方がない」と思われる。
だから、冒頭で述べたように、米株も日経平均も反騰しているが、米ドル全体や米ドル/円はついていかずにいる。場合によっては、株高に米ドルはついていけず、株安の時のみ米ドル/円がつられて下落、といった印象さえ受ける。
換言すれば、株高が米ドル/円に連動しなかったので、これからの米ドル/円の動向も、株式市場ではなく、米長期金利の方がカギとなろう。
■米長期金利と米ドル/円の値動きを比較してみると…
米長期金利は、10月末にいったん5月、7月高値を更新したものの、その後一転して反落してきたため、高値更新自体が「フォールス」、すなわち「ダマシ」であった可能性がある。

(出所:Bloomberg)
米ドル/円で検証すると、やはりいったん5月、7月高値更新を果たしてから反落し、同じく「フォールス・ブレイクアウト」の疑いが持たれている。

(出所:Bloomberg)
米ドル高の継続を「三度目の正直」と期待していたところ、「二度あることは三度ある」になるリスクが浮上し、9月安値を起点とした米ドル高・円安も結局115円の大台を超えられずに終わってしまうのだろうか、と多くのロング筋が自問し始めたのではないだろうか。
■米金利のチャートポイント、どれがダマシでどれがホンモノ?
米10年物国債利回りの値動きがカギとなるなら、同利回りのチャートが示すポイントも重要になってくる。
米10年国債利回りの日足を検証すればわかるように、9月安値の6月安値に対する一時の下放れは短期に終わり、その後、10月の高値トライをもって、5月、7月高値の更新を果たしていた。

(出所:Bloomberg)
よって、9月安値と10月高値のどちらが「ダマシ」のサインになりやすいかと聞かれると、既成事実としてやはり9月の安値打診、すなわち6月安値に対する一時の下値更新は「ダマシ」であったと認定できる。
なぜなら、これからの値動きがどうなるかはわからないが、すでに5月、7月高値をブレイクしているだけに、10月の高値トライは「ホンモノ」の確率が高いと言えるからだ。
■あくまで中段保ち合い、これから高値更新の可能性大
ここで注意していただきたいのは、9月安値打診が点灯したサインを「フォールス・ブレイクアウト」と認定するなら、10月高値打診自体がまた「フォールス」、すなわち「ダマシ」のサインになる可能性が低いこと。
換言すれば、10月高値自体が9月安値のサインを証左する条件であった以上、「ホンモノ」のサインになりやすい、ということだ。
この視点では、10月初頭からの、いわゆる「三尊型」形成の疑いがあっても、本格的な下放れを果たせない公算が高い。
言い換えれば、あくまで今は中段保ち合いで、これから高値更新をもって、9月安値を起点とした上昇波を延長させる公算が高い。
■米ドル/円の高値トライを失敗と判断するのは時期尚早!
同じロジックで米ドル/円を検証すれば、同じ結論にたどり着く。
9月の安値トライは、6月、4月安値をいったん下回ったものの、10月高値(もちろん11月6日の高値も)は5月高値、7月高値に対するブレイクを果たした。これにより、9月安値の意味合い、すなわち「フォールス・ブレイクアウト」のサインが証左された以上、上限である高値更新自体は再度「ダマシ」のサインになりにくい。
(出所:FXブロードネット)
一目均衡表やGMMAなどのテクニカル指標で測ると、目先、112円台前半まで深く押してきているが、米ドル/円の基調は、なお強気変動を保っていることがわかる。
つまるところ、米長期金利にしても、米ドル/円にしても、上昇スピードは鈍らせているものの、ブル(上昇)基調が完全に崩れてはいないから、「三度目の正直」となる高値トライ自体が失敗だった、という判断は時期尚早だ。
米ドル/円に限ってみれば、11月6日(月)の弱気「リバーサル」のサイン、目先112円前半のトライをもってその効き目を十分に果たした可能性が大きく、むしろ下げ止まりが期待できるのではないだろうか。
■ドルストレートよりユーロ/円が狙い目かも?
最後に、前回指摘した「クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)よりドルストレートの方が仕掛けやすい」といった見方は、いったん修正する必要があると思う。
【参考記事】
●ドル/円は高値更新なら上昇トレンド加速!今後はクロス円よりドルストレートが狙い目(2017年11月10日、陳満咲杜)
結論から申し上げると、ユーロ/円の高値更新は、なお想定されるべきかとみる。このあたりの理屈はまた次回、市況は如何に。
株主:株式会社ダイヤモンド社(100%)
加入協会:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)