東大卒プロゲーマーとして活躍中のときど氏とFX界のレジェンド・西原宏一氏の夢の対談が実現。一見、接点のなさそうなFXとゲームの世界。しかし、頂点を極めた二人には孤独な勝負の世界で戦い続けているもの同士が感じる共通点が数多くあった!
ときど
東大卒のプロ格闘ゲーマー。1985年沖縄県那覇市生まれ。麻布中学校・高等学校卒業後、東京大学へ進学、卒業。同大学院工学系研究科中退。2010年、日本で2人目となるプロゲーマーに。出場する国際大会ではいずれも上位に入賞するなど、「ときど式」と呼ばれる合理的なプレイで活躍。世界最大の格闘ゲームeスポーツ大会Evolution(EVO)では2002年、2007年、2017年と3度の優勝。著書『世界一のプロゲーマーがやっている 努力2.0』が話題に。
西原宏一
青山学院大学卒業後、1985年大手米系銀行のシティバンク東京支店入行。1996年まで同行為替部門チーフトレーダーとして在籍した後、活躍の場を海外へ移し、ドイツ銀行ロンドン支店やシンガポール開発銀行シンガポール本店などで活躍。現在は個人投資家としてトレードするほか、個人投資家向けの情報配信も。有料メルマガ『西原宏一 FXトレード戦略指令!with日経先物』では、為替や日経先物のポジションや方向性をタイムリーに配信している。
「なんでオレじゃないんだよ」
ときど はじめまして。以前、梅原大吾さんと対談していましたよね。
西原 梅原大吾さん、懐かしいですね。いつだったか……。もう6年前くらいですね。
【参考動画】
●ザイFX!TV(原宿)世界のウメハラ×西原宏一「“勝ち続ける”ノウハウ」
ときど 以前はプロゲーマーという世界がなく、趣味でゲームを続けていくしかないと思っていたんですよ。そんな中、梅原さんが2010年にプロとなり、ゲームの世界で食べていく道ができた。そのとき、「なんでオレじゃないんだよ」って思ったんですよね。そこから飛び出しちゃいましたね。
西原 「なんでオレじゃない」とは?
ときど 自分のほうが強いだろう、ゲームで強いのは自分だろう、と。
西原 その自信はすごいですね。
ときど 大間違いだったんですけどね(笑)。今も梅原さんの背中を遠くに追いかけています。格闘ゲームというものが世に出てから20年、30年近く、ゲームがお金にならなかったから、自分なりの意味を求めるしかなかったんです。
西原 そんなときに梅原さんがプロに転向し、ときどさんも触発された、と。不安でしたよね?
ときど 不安……。不安なのは決断するまででした。決断するまではすごく時間がかかっちゃったんですけど。
西原 今、おいくつですか?
ときど 34歳ですね。海外に行くようになったのは18年くらい前。「終わったら受験勉強に専念するから」って、親に頼み込んで旅費を出してもらって。
西原 それが第一回の「EVO」(Evolution、世界最大の格闘ゲーム大会)ですね。ときどさんが見事に優勝した、と。
ときど それで親もびっくりしちゃって。
賞金の受け取りは円かドルか?
西原 その後も2007年、2017年と合計3回優勝を果たしたそうですね。大規模な大会になると10万ドル、20万ドルといった賞金がもらえる聞いていますが、大会の賞金は米ドル建てで受け取るんですか?
ときど 賞金は米ドル建てですが、僕が受け取るのは日本円の銀行口座ですね。自動的に両替されて円になっています。米ドルで受け取ったほうがいいですか?
西原 とりあえず米ドルで受け取って、それから円に替えるタイミングを考えればいいですよね。ただ、そういうことをやり始めると、キリがない。僕らみたいに為替レートがずっと頭に入っているならともかくとして、普通の人が為替を気にすると本業がおろそかになってしまいますよね。
ときど そうなんですよね。一度気にしだすと、どこまで気にしないといけないのかなって。
西原 あっちもこっちも考えると、集中力が削がれますよね。不動産を買うタイミングはいつがいいのかとか、人生の決断っていっぱいあるんですよね。僕も「あのとき、買わなければよかった」と思ったりはするけど、あまり考えないようにしています。本業である為替で儲かることに集中したいから。それにしても、ときどさんのユニフォーム、大手企業の名前が入っていますよね。ロート製薬、ソニーミュージック――。スポンサーですか?
ときど そうですね。大会の賞金も増えていますし、ゲームを取り巻く環境が向上していて、今まではコントローラーのメーカーだったり、ゲームにもろに関係のある会社のスポンサーがほとんどだったんですが、去年くらいからゲーム関連以外の業種がスポンサーについてくれるようになりました。他の業界もそうだと聞いていますが、賞金よりもスポンサーからいただく額のほうが大きいんですよ。
西原 プレイしていると目が疲れるでしょうから、ロート製薬さんは相性がいいですね。トレーダーも目を使うのでスポンサーについてほしいくらいです(笑)。
雀士あがりのゲーマーはメンタルが強い
ときど 僕らの世界にも麻雀をやっていた人がいたりするんです。
西原 梅原さんもそうですよね。
ときど 「今日の結果次第ではご飯が食べられなくなっちゃう」という勝負の世界からゲームの世界に入ってきた人はメンタルが強いなって思うんですよ。僕らはずっと遊びでやってきて、いざ試合となっても「自分の好きな技で勝ちたい!」とか、勝負として捉えたときに必要がないことをまだまだ排除しきれていないんですよね。
西原 為替ディーラーでも麻雀やポーカーをやっている人は多いですよ。僕が銀行に入るときも、「ポーカーをやるか、麻雀は強いか」と聞かれましたから。
ときど FXも勝負の世界ですから、メンタルの部分は大きいんでしょうね。僕は株を少し持っているくらいでトレードはしていないんですが。
西原 他のことをやっていると集中力を奪われてしまいますからね。
ときど 同じ部分を使いますから休ませないと。でもトレーダーが日々の緊張感とどう対峙しているのか、というのは気になりますね。
西原 慣れてしまった、というのはありますよね。負けず嫌いな人が勝ち残るんだろうと思いますが、時々、僕らも1日で数百万円とか1000万円とか飛ばしたりすることがある。だからこそ、意識しているのはデパートに行くとか、クルマを見に行くとか、普段の1万円、2万円を大事にすること。「今、ベンツ1台分飛んだ」とか考えると頭がおかしくなりますから(笑)。
ときど そういう金銭感覚のズレはいまだにあるんですか?
西原 トレードしていると、だんだんおかしくなるんですよ。だから僕はバランスをすごく気にしていて。とくに負けているときは、僕も長くやっているのでいずれ挽回できるとわかっているんですが、感覚がおかしくなってくる。お金がバーチャルになってくるんですね。
ときど その感覚、あります。米ドルに換金すると、日本の紙幣に慣れているので、「これだったら使っちゃおうかな」ってなるんですよ。たいしたものを買うわけじゃないですけど、普段よりも高いものを食べてしまう、とか。
西原 僕もシンガポールに4年いたんですが、シンガポールドルはおもちゃみたいな感覚になってしまいましたね。けれど、プロ野球選手もそうですが、「好きでやっていたことが生活の糧になる」とつらくなることがありませんか。勝ち続けるために何か工夫していることは?
明日勝つこと/アベレージを残すことの違い
ときど 「次の大会に勝つぞ!」と思うことも大切ですが、それだけに焦点を当ててしまうと、僕はダメだったんですよ。「次の大会に勝つ」ことと、「ロングスパンでアベレージを残す」ということとは、取り組み方が異なるだろうと気がついて。
西原 それはそうですね。
ときど 次の大会で勝つことだけを考えるのであれば、僕は多分、今のやり方をしていない。みんなと一緒に練習しないで、「みんなをどうやって出し抜くか」を考えます。でも、そのやり方だと次の大会には勝てても、いつか勝てなくなる。実際に過去の僕がそうだったんです。今の僕がやりたいことは、長いスパンで勝ち続けること。長いスパンで自分が存在感を出し続けることが、僕のやりたいことだなと。
西原 為替ディーラーも同じですね。入ったばかりの為替ディーラーは1日の勝ちをめざす。ルールは「1日いくら以上負けたらペナルティ」。それがシニアになると年単位で見られるようになる。「今日買った、今週負けた」というのは気にしなくていいし、気にもならなくなる。気にしなくていいというのは重要で、今日勝たないといけないと思うと、負けたらすぐに取り返そうと思ってムリな勝負をしてしまう。それは最低だし、ロングスパンで「1年の中でどれだけ勝てるか」を最重要視して考える。それが勝ち続けることだと思います。
ときど 僕は現時点ではロングスパンで考えることが許されるんですが、若いプレイヤーだとそうもいかないことがありますね。「次で勝ってくれ」と言われると、相手の癖を調べたり、相手に合わせた戦術を考えてしまう。それで勝っても、相手が弱点を克服したらまったく通用しない選手になってしまいます。新しい弱点を見つけるとなっても、相手だって進化するからどんどんアラがなくなっていくし、難しいですよね。
西原 最初の段階では認められるために「今日勝つ、次に勝つ」ということを求められるステップがありますが、そこを抜けていくと楽になるんですよね。
ときど 僕も昔は目先の勝ちだけを追い求めて、相手の弱点を突くタイプだったんですけど、相手が強くなると勝てなくなっちゃった。昔はレベルが低かったので、それでもどうにかなりましたが、今のようにプロが増えてレベルが上がると、弱点を突くだけでは勝てなくなりますね。
西原 レベルが上がるにつれて、だんだん厳しくなっているんですね。
ときど そうだと思います。昔は遊びだったので上手くなろう、勝とうと思っている人が少なかったんです。それが、好きなこと、ゲームで生活できるとなってきてレベルが全然変わっちゃいましたね。勝ちづらい世界になったと思いますよ。
(「【後編】ゲームとFX、大事なのは集中力。カリスマに共通する思いとは?」へつづく)
(取材・文/高城泰 ミドルマン 撮影/和田佳久)
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