米ドル/円が急騰。関税が25%で頭打ちの可能性、ユーロ/米ドルの1.2000ドルの壁、夏季休暇前の投機筋の円ロング解消が要因
西原宏一(以下、トレーダー西原) 叶内文子(以下、MC叶内) みなさん、こんにちは。
トレーダー西原 先週(7月7日~)も最強通貨のスイスフラン/円が史上最高値を更新する中、ユーロ/円、そして米ドル/円も高値を更新するという流れが続きましたね。
国内では、7月20日(日)に参院選(参議院選挙)を控えるなか、参政党の勢いが凄まじく、それがマーケットに影響を与えそうです。
それでは、まず先週の株の振り返りからいきましょうか?
MC叶内 はい、今週(7月14日~)もよろしくお願いします。
米国株市場全体としては高値圏で小動きでした。利下げ期待や個別業績ニュースに支えられ、S&P500とナスダック総合指数は7月10日(木)、過去最高値を更新しています。
週末終値はS&P500が前週末比0.31%安と、小幅ながら3週ぶりの反落。NYダウは1.0%安、ナスダック総合指数は0.4%安で4週ぶりの下落でした。
トランプ大統領が上乗せ関税に関する通知を各国に送り始めるなか、市場は落ち着いていますが、カナダへの関税が想定より高いことなどが頭を抑えました。
エヌビディアが最高値を更新し、史上初となる時価総額4兆ドル超えとなるなどハイテクの一角が強い動きでした。ただ、マグニフィセントセブン(※)、半導体株はまちまちです。ビットコインの大幅高、最高値更新も目を引きました。
(※マグニフィセントセブンとは、米株式市場を代表するテクノロジー企業であるアルファベット、アップル、メタ、アマゾン、マイクロソフト、テスラ、エヌビディアの7社を指す)
一方で、高関税が米国内の物価上昇圧力を高めるとの見方も根強く、長期金利は高止まりしています。
日経平均は前週末比241円(0.6%)安の3万9569円と2週連続で下落しました。週間の値幅が473円で、24年以降では最小だそうです。米国株同様小動きで、TOPIXも0.17%安と小幅続落でした。
トランプ関税は日本に対して1%上乗せの25%と書簡が届きましたが、実質8月1日(金)までの延期、一部では35%との予想もあったため、むしろ安心感につながったとも聞かれました。
ETF(上場投資信託)分配金捻出売りや、ファーストリテイリングが決算を受けて大幅安となったことなどが下押し要因となりました。指数は下落していますが、年初来高値をつける銘柄が多くみられ(金曜日は179銘柄)、物色のすそ野は広がったようです。なお、SQ値は4万4円と高く決まり、幻の値になりました。
為替市場はいかがでしたか。
トレーダー西原 まず先週の値動きからチェックしましょう。先週の主要通貨の対米ドル騰落率は以下です。

先週もスイスフラン/円が史上最高値を更新しているので、日本円以外は主要通貨で米ドル安が進んでいるという印象があるのですが、先週はクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)の上昇に、米ドル/円の急騰が寄与するという展開でした。
そして、先週はスイスフラン以上に値上がりしている通貨があります。それは豪ドルで、その要因はRBA(オーストラリア準備銀行[豪州の中央銀行])会合です。
先週の作戦会議コラムを振り返ると「7月8日(火)のRBAで、先物市場では、0.25%の利下げが91%程度織り込まれており、誘導目標金利は3.85%が3.60%に引き下げられるというのがコンセンサス」となっています。
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⇒ユーロ/円は昨年高値175.43円を目指す! 米国産米の輸入拡大を断った日本の首相は、真の危機の所在を見誤った!?7/9の関税延長期限に注目。米ドル/円は142〜147円か(7月7日、西原宏一&叶内文子)
ところが、実際は据え置きというサプライズ。これにより、先週は豪ドルがスイスフランを抜いて対米ドルで最も値を上げています。
そして米ドル/円は、先週のヘッジファンドの思惑コラムで懸念したとおり、反発しています。要因は下記の3点です。
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⇒米ドル/円は150円台を今月回復か! 関税が25%で頭打ちの可能性、ユーロ/米ドルの1.2000ドルの壁、夏季休暇前の投機筋の円ロング解消が、米ドル/円を押し上げそう!(7月10日、西原宏一)
米ドル/円反発の要因
①関税が25%で頭打ちの可能性
②ユーロ/米ドルの1.2000ドルの壁
③夏季休暇前の投機筋の円ロング解消
今週は上記の3点に加え、参院選という材料も加わりました。これについては、展望で触れますね。
それでは、今週のスケジュールと株の展望をお願いします。
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米ドル/円やクロス円は急騰したため押し目待ち。7月20日参院選での与党敗北を織り込み、円安が進行する流れか
MC叶内 はい、まず今週のスケジュールです。
米国では7月15日(火)のJPモルガン、シティを皮切りに4~6月期の決算発表が本格化します。金融のほか、J&J、アメックス、ネットフリックスなどもあります。
そして、注目されているのは7月16日(水)の蘭ASML、7月17日(木)の台湾TSMCの半導体大手です。
ASMLは前回4月に新規受注が予想を下回って売られました。米国関税の影響も気になる今回はどうでしょうか。TSMCはすでに4~6月期の売上高は過去最高と発表しており、サプライズはなさそうですが、先行きの強い見通しなどが語られるかもしれません。熊本第2工場の延期が伝わっている点は残念です。
国内でも、ディスコの上方修正などがすでに発表されています。半導体関連が好反応を見せるなら、指数にもインパクトは大きいでしょう。
経済指標では、7月15日(火)に発表される6月米CPI(消費者物価指数)が注目です。市場予想は前年比+2.6%、コア指数は+3.0%と5月から加速する見込みになっています。
関税の物価への影響を探るうえでは、7月17日(木)発表の輸入物価、7月16日(水)のPPI(卸売物価指数)も要チェックです。
7月17日(木)の6月米小売売上高も気になります。4月、5月と減少していたので、反動増が予想されていますが、想定外に消費の落ち込みが続いているとなると、利下げ思惑が強まりそうです。
米国株は「悪いニュースは良いニュース」の反応を続けるのか、最高値圏だけに神経質にもなりそうです。
見どころの多い週ではありますが、日本は週末が3連休、中日に参院選です。積極的な売買はしづらいかもしれません。
為替市場はいかがですか。
トレーダー西原 先週も注目のユーロ/円やスイスフラン/円が高値を更新しています。
円安要因は前述の3点に加え、来る参院選が新たな円売り材料になりそうです。
地上波でも報道が増えていますが、参政党の支持率が急速に伸びているようです。彼らの躍進により、参院選において自公で過半数を割り込むのではないか?との見方が増えています。
7月20日(日)の参院選に向けて、与党敗北を織り込む形で、円安が進行する流れになるのではないでしょうか?
ここまでは、これまでのこのコラムの円安の見方と変わりませんが、ちょっと警戒しているのがクロス円のレベル。
当コラム注目のスイスフラン/円は一時185円台まで値を伸ばし、史上最高値を更新中。昨年高値の180.07円を超えてくると、まず185〜186円あたりまで値を伸ばすと想定していましたが、そのレベルまであっという間に急騰しています。
そのため、スイスフラン/円やユーロ/円はいったんロングを減らし、押し目を待ちたいところ。

(出所:TradingView)
米ドル/円も同様です。先週あっという間に147円台まで駆け上がったため、方向性は変わりませんが、押し目で拾いたいところです。

(出所:TradingView)
トレーダー西原 MC叶内 それでは、今週も株と為替のトレーディングを楽しんでいきましょう。
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