今週の為替マーケットは、小康状況が続いている。各主要外貨対ドルは高値を保っているが、円だけがドルに対して弱含んだ。その結果、クロス円(「ドル/円」以外の円との通貨ペア)相場は総じてブル(強い)基調を保っている。
■チャートを見ていれば相場は予想できた
背景については、前回指摘した通りだ。例えそのような分析ができなくても、チャートを見れば、実は誰でも同じ結論を出せるはずなのだ。
例えば、クロス円の代表としてのユーロ/円を見てみると、先週からはっきりした強気シグナルが出ていた(私のブログ「FXの真実」には、09年3月16日に「ユーロ/円の強気を示すGMMAチャート」という記事がある)から、きちんとフォローしていれば、目下の円安はある程度予想できたはずだ。
私のブログ記事では、GMMAというちょっとユニークなチャートを使っていたが、最も一般的なチャートを使っても同じ判断ができる(GMMAは移動平均線システムであり、市場参加者を長期組と短期組と分け、両組や組内の移動平均線の位置関係を分析して売買のシグナルを出す。詳しくは拙作「FXトレーディングの真実」を参照)。
■普通のチャートでも十分予想できたのだ
例として、下のチャートでは、単純移動平均線の5、10、20と50日線(それぞれ黄、赤、緑と青線で表示)を使っているが、5日線>10日線>20日線>50日線という順番に並び(いわゆる「パーフェクト序列」)、かつレートが新高値を更新し、5日線とも離れていたのが16日あたりであったことがわかる。これらの線は揃って上向き傾向で、強い上昇相場を示している。
(出所:米国FXCM)
また、過去のチャートを見ればすぐわかるように、このような「パーフェクト序列」といったシグナルは昨年7月以来初めてであったため、一層重要であると判断できたはずだ。従って、順張りしてユーロ買い/円売りポジションを取るのが、ごく自然かつ合理的な判断だ。
しかし、こういったケースで一部の投資家はまったく違った行動に出る。
また、過去のチャートを見ればすぐわかるように、このような「パーフェクト序列」といったシグナルは昨年7月以来初めてであったため、一層重要であると判断できたはずだ。従って、順張りしてユーロ買い/円売りポジションを取るのが、ごく自然かつ合理的な判断だ。
しかし、こういったケースで一部の投資家はまったく違った行動に出る。
■「セミプロ」ほど、大きく間違うのはこういう理由だ
このようなテクニカル・メソッドはテクニカル・アナリシスの世界では最も基礎的、初歩的な部類に入る。だからこそ、一部の個人投資家にバカにされ、重視されないということも起こりがちだ。
そのため、最もわかりやすい相場においても判断ミスを犯したり、取引のチャンスを逃したりなど過ちを犯す投資家が多いのは残念だ。
彼らは相場より先に走れる、といった幻想を持ち、基礎的な知識と手法をきちんとマスターしていなかったくせに、やたら難しいテクニカル・メソッドを好み、自己満足な「お勉強」に没頭しがちだ。
また、明確なトレンドを示すシグナルは普通最初からではなく、トレンドがすでに進行したなかで出る傾向にあるため、「後出しジャンケン」と一蹴されがちである。
そのため「後出しジャンケン」に拒絶反応を示す「セミプロ」たちほど、素直に相場のトレンドに追随する能力が失われるとも観察される。
■素人の想像とまったく逆なのが本当のプロの姿
だが、シンプル・イズ・ザ・ベストという格言のように、初心に戻れば、相場は本来ピュアであることに気づく。私から見れば、個人投資家こそ「後出しジャンケン」しかやってはいけない。
それどころか、プロといわれている連中は実に「後出しジャンケン」にしか参加していなかったため、プロとしての地位と優位性を保っていることは意外に知られていない。そう、金融の世界では、素人の想像とまったく逆なのが本当のプロの姿だ。
■中国から公然と米ドルの地位に挑戦する言及が
さて、今週はいくつか注目すべき材料があったので、少し触れることに。まず、中国人民銀行の周小川総裁は、 国際通貨基金(IMF)の特別引き出し権(SDR)が準備通貨として機能していくことが望ましいという趣旨の論文を発表し、ロシアは4月の20カ国・地域(G20)首脳会議で、国際機関が発行する新たな準備通貨の創設を提案するという。呼応するように、香港の曽蔭権(ドナルド・ツァン)行政長官は香港ドルと米ドルのペッグ制度から離れ、人民元とリンクする可能性について言及した。
前回で指摘したように、これらの言論は他ならぬ、基軸通貨の地位を悪用し、危機を他国に転化しようとする米国への反発であり、FRBがドルを刷りまくることへの怒りの表明である。
米ドルの地位に挑戦するようなはっきりした意見表明は中国としては初めてであり、通貨戦争は新たな時代に突入しようとしていると感じざるを得ない。
■トレーダーはアナリストになるな!
が、強調しておきたいのは、これらの材料を根拠に、相場のシナリオを立てることができるとしても、取引の根拠にはならないことだ。言い換えれば、ドル安の相場が続くかどうかは、ドルが準備通貨としての地位が危ないかどうかに関する論議と観測ではなく、チャート上のドル安トレンドを確認できるかどうかにある。
トレーダーはアナリストになってはいけない。敢えて先に警鐘を鳴らしておくのは、評論家達はこれらの材料を利用し、また相場を後解釈する光景が見えているからだ。
相場は相場に聞け、そしてシンプルでいこう。
このようなテクニカル・メソッドはテクニカル・アナリシスの世界では最も基礎的、初歩的な部類に入る。だからこそ、一部の個人投資家にバカにされ、重視されないということも起こりがちだ。
そのため、最もわかりやすい相場においても判断ミスを犯したり、取引のチャンスを逃したりなど過ちを犯す投資家が多いのは残念だ。
彼らは相場より先に走れる、といった幻想を持ち、基礎的な知識と手法をきちんとマスターしていなかったくせに、やたら難しいテクニカル・メソッドを好み、自己満足な「お勉強」に没頭しがちだ。
また、明確なトレンドを示すシグナルは普通最初からではなく、トレンドがすでに進行したなかで出る傾向にあるため、「後出しジャンケン」と一蹴されがちである。
そのため「後出しジャンケン」に拒絶反応を示す「セミプロ」たちほど、素直に相場のトレンドに追随する能力が失われるとも観察される。
■素人の想像とまったく逆なのが本当のプロの姿
だが、シンプル・イズ・ザ・ベストという格言のように、初心に戻れば、相場は本来ピュアであることに気づく。私から見れば、個人投資家こそ「後出しジャンケン」しかやってはいけない。
それどころか、プロといわれている連中は実に「後出しジャンケン」にしか参加していなかったため、プロとしての地位と優位性を保っていることは意外に知られていない。そう、金融の世界では、素人の想像とまったく逆なのが本当のプロの姿だ。
■中国から公然と米ドルの地位に挑戦する言及が
さて、今週はいくつか注目すべき材料があったので、少し触れることに。まず、中国人民銀行の周小川総裁は、 国際通貨基金(IMF)の特別引き出し権(SDR)が準備通貨として機能していくことが望ましいという趣旨の論文を発表し、ロシアは4月の20カ国・地域(G20)首脳会議で、国際機関が発行する新たな準備通貨の創設を提案するという。呼応するように、香港の曽蔭権(ドナルド・ツァン)行政長官は香港ドルと米ドルのペッグ制度から離れ、人民元とリンクする可能性について言及した。
前回で指摘したように、これらの言論は他ならぬ、基軸通貨の地位を悪用し、危機を他国に転化しようとする米国への反発であり、FRBがドルを刷りまくることへの怒りの表明である。
米ドルの地位に挑戦するようなはっきりした意見表明は中国としては初めてであり、通貨戦争は新たな時代に突入しようとしていると感じざるを得ない。
■トレーダーはアナリストになるな!
が、強調しておきたいのは、これらの材料を根拠に、相場のシナリオを立てることができるとしても、取引の根拠にはならないことだ。言い換えれば、ドル安の相場が続くかどうかは、ドルが準備通貨としての地位が危ないかどうかに関する論議と観測ではなく、チャート上のドル安トレンドを確認できるかどうかにある。
トレーダーはアナリストになってはいけない。敢えて先に警鐘を鳴らしておくのは、評論家達はこれらの材料を利用し、また相場を後解釈する光景が見えているからだ。
相場は相場に聞け、そしてシンプルでいこう。
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