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田向宏行
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ドル・円・ユーロの明日はどっちだ!?

吉田恒さんに聞く(7)
~株と為替の連動性はなぜ薄くなったのか?~

2008年08月12日(火)16:09公開 (2008年08月12日(火)16:09更新)
ザイFX!編集部

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「吉田恒さんに聞く(6) ~円全面高のリスクはあるが、ドル/円の最安値、79.75円は割らない~」からつづく)

 ここまでドル/円、ユーロ/ドルを中心として、吉田恒さんに為替相場の見通しを聞いてきたが、最後に「為替以外の相場」と「為替相場」の関係について、吉田さんに解説してもらったので、それについて触れておきたい。

 「為替以外の相場」というのは、一つは株、もう一つは原油である(原油については次回触れる)。

■株と為替の連動性が薄くなってきた

 昨年のサブプライムショック以降、株価が急落すると、それに連動して為替も動き、ドル/円をはじめとして急激な円高がやってくるシーンがよく見られた。”世界同時株安、もれなく円高のおまけつき”といった感じになっていたのだ。

 ところが、最近は株価がガーンと下がった場合、ドル/円も下がりはするものの、以前ほどは下げがきつくなく、意外としぶとい感じがする。
 

 上の2つのチャートはニューヨークダウとドル/円の動きを比較したもの。つまり、株と為替の動きを比較したものだ。上のチャートが07年10月~08年3月の6ヵ月間、下のチャートが08年4月以降のものとなっている。

 これを見ると、確かに今年3月ぐらいまではかなりきれいに連動していたのに(途中、やや連動性が薄い時期もあるが…)、最近はその連動性がなくなっているように見える。これはなぜなのだろうか?
 「昨年の場合、世界同時株安の際はすべて円高になりました。世界同時株安なら、米国株も下がり、日本株も下がるわけですから、株の売買に伴うお金の流れからは円高になるはずがありません。

 けれど、世界同時株安になれば、リスク回避の動きが強まります。そして、為替の場合、リスクをとるということは、低金利の円を売って、高金利の通貨を買う”円キャリー取引”が多かった。

 だから、リスク回避の動きが強まれば、その逆の動きが起こり、円が買われて円高になる……昨年までの『世界同時株安=円高』はこのように説明されていました」

 その説明が今も成り立っているのなら…。世界同時株安になったら、リスク回避の動きが起こり、円高になってもおかしくない。けれど、実際にはそういうケースで極端な円高は起こっていない。これはなぜか?

 「それは、もう『為替ではリスクをとっていない』からですよ」

 為替ではリスクをとっていない…これはどういう意味だろう?

■そのヒミツはIMM通貨先物ポジションに隠されていた

 「下のグラフはIMM通貨先物ポジションについて、非米ドル主要5通貨のポジションをショートもロングもすべて合算したものです。こうして見ると、昨年の2月とか6月って、異常なポジションの取り方でしょう?」
IMM通貨先物ポジションとは、シカゴマーカンタイル取引所(CME)で取引されている通貨先物のポジションのこと。ヘッジファンドなどの投機的なポジションを示しているとされる。そして、これを見ると、確かに昨年の2月や6月はグラフが大きく上に伸びている。つまり、ポジションが非常に大きくなっていたのだ。

 「もう、みなさん、忘れているかもしれないけれど、この頃のG7やサミットでは『為替で異常に片寄ったリスクがとられている』と何回も警告が出ていました。こうして見ると、確かに異常ですよね。

 この異常なポジションのかなりの割合が円キャリー取引だったわけですね。だから、世界同時株安になると、異常なリスクを取りすぎた反動が出て、円高になる。

相場の急激な反動はリスク取りすぎの修正によって起こるもの。だけど、グラフを見ておわかりのとおり、今はリスクをとっていないんです。投機マネーが萎縮してしまって、為替のマーケットから逃げてしまっているわけです。

 そして、今はリスクをあまりとっていないのだから、世界同時株安になっても、急激な反動は起こらないのです」

 なるほど、こうしたデータを見てみると、今の株と為替があまり連動しないのも不思議じゃないと納得できる。

「吉田恒さんに聞く(8) ~原油価格と為替の関係を読む~」へつづく)

(ザイFX!編集部・井口稔)
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