また、米ドル/円が軟調なのに、豪ドル/円が高値を更新するほど堅調なのは、円サイドの事情よりも外貨サイドの事情に強く影響されているとの理解が正しいだろう。
言い換えれば、豪ドル/米ドルで「豪ドル高・米ドル安」となっている勢いが米ドル/円で「米ドル安・円高」となっている勢いに勝るから、豪ドル/円での「豪ドル高・円安」をもたらした。
よって、豪ドル/円、加ドル/円といったクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)相場の上昇が続くかどうかは、円サイドの事情よりも、これらの通貨の対米ドルでのパフォーマンスに左右されることになる。
結論から言うと、筆者は、ドルインデックスにはなお上昇余地があり、米ドル/円も、つられて“それなりの”上昇余地があると見ている。
だが、クロス円相場全般に関しては、あまり楽観的なシナリオを描けていない。
すなわち、円全体のパフォーマンスは、これから円安トレンドを継続するよりも、円高トレンドへ復帰する可能性が高いと見ている。
第1四半期に、すぐには円高トレンドにならないかもしれない。だが、円安傾向も、どんどん進むことはないと考えている。
■もし、景気回復が市場の期待どおりに進めば…
もっとも、年初からの資源国通貨の上昇は、景気回復期待や商品価格上昇シナリオに基づく側面が強い。その上、FRBの金融緩和政策が、このようなマーケットの期待を支えているという側面もある。
だが、もし、景気回復が市場の期待どおりに進めば、FRBは「出口」政策の実行に踏み切るだろうし、それによって、FRBが米国債の購入を停止すれば、マーケットは2兆ドル規模の米国債を消化しなければならなくなる。
それは米国債の金利上昇を招くことになり、その分、豪ドルなど高金利通貨の魅力が低下し、米ドルへの資金回帰が起こることは、十分に想定できる。
また、FRBの「出口政策」自体が世界的な景気回復の腰折れを招く危険性もあり、米ドル資産への資金逃避もあり得るだろう。
半面、市場の予想どおりに景気回復が進まなければ、商品相場のブル(強気)基調が続くことはあり得ず、資源国通貨高を支えるファンメンタルズの根幹が崩れる可能性もある。
■米ドル高が、豪ドル/円と加ドル/円を反落させる!?
もっとも、筆者は、このようなファンダメンタルズ分析を重視しているわけではない。それでも、ここで「反論」を挙げた理由は、他ならぬ、市場のセンチメントにある。
実際、筆者の「反論」とは異なり、「正論」では、新興国と資源国の景気回復を根拠にして、豪ドル/米ドル、加ドル/米ドルともに、近々にもパリティ(1対1)になるといった観測が強まっている。
だが、筆者は、足元の豪ドル高、加ドル高は、このような期待をかなり織り込んでいて、そろそろ「危険領域」に入りつつあると考えている。経験則では、市場コンセンサスが強ければ強いほど、後になって、より強いインパクトを市場に与えることになる。
やや遠回しに述べてきたが、要するに、豪ドル高、加ドル高の前提条件が崩れれば、豪ドル/米ドルにおける豪ドル高、加ドル/米ドルにおける加ドル高に依存してきた豪ドル/円、加ドル/円における円安は続かなくなる可能性が高いということになる。
もちろん、米ドル/円とクロス円相場の値動きが、必ずしも同調するわけではないことも、重ねて指摘しておきたい。
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