■テクニカル面で見れば、米ドル高がしばらく続きそう
筆者の予想どおり、ドルインデックスは、米国の雇用統計が発表となった先週末、12月4日(金)から大きく切り返し、一時は76.33まで値を戻している。
(出所:米国FXCM)
前々回のコラムで筆者が強調したように、ドルインデックスは、先々週のセリング・クライマックスを経て、「ダイアゴナル・トライアングル」の上放れを果たした(「今回の急落はセリング・クライマックス。米ドルは底打ち完了で、リバウンドへ!」を参照)。
ここで改めて、「ダイアゴナル・トライアングル」について説明すると、1つのトレンドの最終段階に「急落」の形が表れ、セリング・クライマックスを経てから、反騰に入る場合が多いとされるフォーメーションだ。
従って、テクニカル面で見れば、米ドル高の局面がしばらく続くことになる。
だが、足元で見られる米ドルの切り返しは、まだ、初歩段階にあると思う。
■「悪い米ドル高」から「良い米ドル高」へと転換した
ところで、米ドルの切り返しを引き起したファンダメンタルズの材料は、筆者の想定とは反して、米国の雇用統計の「悪化」ではなく、逆に、その「改善」であった。
なお、最近は、米国内の雇用環境が柔軟なものとなり、流動化が進んだせいか、米国の雇用統計の結果が、事前の予測とかけ離れることが多くなった。
また、発表後に修正されることもよくあるので、マーケットにサプライズをもたらす傾向にあるようだ。
それでは、米国の雇用環境の改善によって、米ドルが買われるということは、何を意味するのか?
これについては、筆者は、最近、「悪い米ドル高」から「良い米ドル高」へと転換したのではないかと考えている。
つまり、先々週までは、「米国の雇用環境の悪化 → 景気回復が遅れる → リスク選好度の低下 → リスク回避で米ドル買い/外貨売り」で、“後ろ向きの米ドル高”の構造となっていた。
これに対して、最近になって「米国の雇用環境の改善 → 景気回復が早まる → 米国の早期利上げへの期待 → 米ドル買い/外貨売り」と、“ポジティブな米ドル高”の構図に、修正されつつあるように思う。
■米国の雇用環境が改善しているということは?
ここで注意していただきたいのは、前述のシナリオは、あくまで市場心理の変化に重点を置いた推測であって、米国の雇用環境が本当に改善しているかどうかは、別の問題だ。
実際、たった1回の数字の改善では、米国が景気回復に向かい始めたとは言い切れない。
また、前述したように、米国の雇用統計の数字は、ブレがあったり、市場予想とのかい離が大きいものであるため、中~長期の景気を見通す材料としては、なかなか役に立たない。
そうなると、データ自体の好悪ではなく、マーケットの内部構造が市場の解釈を決めるということに、注目する必要がありそうだ。
仮に、米国の利上げの期待が高まっているのであれば、米国株は下落に転じるはずだ。
ところが、昨日までの相場を見る限り、米国株は高値圏で推移しており、少し前のように「米ドル堅調=米国株軟調」といった構図にはなっていない。
これは、どういうことなのか?
前々回のコラムで筆者が強調したように、ドルインデックスは、先々週のセリング・クライマックスを経て、「ダイアゴナル・トライアングル」の上放れを果たした(「今回の急落はセリング・クライマックス。米ドルは底打ち完了で、リバウンドへ!」を参照)。
ここで改めて、「ダイアゴナル・トライアングル」について説明すると、1つのトレンドの最終段階に「急落」の形が表れ、セリング・クライマックスを経てから、反騰に入る場合が多いとされるフォーメーションだ。
従って、テクニカル面で見れば、米ドル高の局面がしばらく続くことになる。
だが、足元で見られる米ドルの切り返しは、まだ、初歩段階にあると思う。
■「悪い米ドル高」から「良い米ドル高」へと転換した
ところで、米ドルの切り返しを引き起したファンダメンタルズの材料は、筆者の想定とは反して、米国の雇用統計の「悪化」ではなく、逆に、その「改善」であった。
なお、最近は、米国内の雇用環境が柔軟なものとなり、流動化が進んだせいか、米国の雇用統計の結果が、事前の予測とかけ離れることが多くなった。
また、発表後に修正されることもよくあるので、マーケットにサプライズをもたらす傾向にあるようだ。
それでは、米国の雇用環境の改善によって、米ドルが買われるということは、何を意味するのか?
これについては、筆者は、最近、「悪い米ドル高」から「良い米ドル高」へと転換したのではないかと考えている。
つまり、先々週までは、「米国の雇用環境の悪化 → 景気回復が遅れる → リスク選好度の低下 → リスク回避で米ドル買い/外貨売り」で、“後ろ向きの米ドル高”の構造となっていた。
これに対して、最近になって「米国の雇用環境の改善 → 景気回復が早まる → 米国の早期利上げへの期待 → 米ドル買い/外貨売り」と、“ポジティブな米ドル高”の構図に、修正されつつあるように思う。
■米国の雇用環境が改善しているということは?
ここで注意していただきたいのは、前述のシナリオは、あくまで市場心理の変化に重点を置いた推測であって、米国の雇用環境が本当に改善しているかどうかは、別の問題だ。
実際、たった1回の数字の改善では、米国が景気回復に向かい始めたとは言い切れない。
また、前述したように、米国の雇用統計の数字は、ブレがあったり、市場予想とのかい離が大きいものであるため、中~長期の景気を見通す材料としては、なかなか役に立たない。
そうなると、データ自体の好悪ではなく、マーケットの内部構造が市場の解釈を決めるということに、注目する必要がありそうだ。
仮に、米国の利上げの期待が高まっているのであれば、米国株は下落に転じるはずだ。
ところが、昨日までの相場を見る限り、米国株は高値圏で推移しており、少し前のように「米ドル堅調=米国株軟調」といった構図にはなっていない。
これは、どういうことなのか?
それは、米国株と米ドルで、内部構造が異なっていることに原因がある!
たとえ同じ材料であっても、それぞれが「我田引水」的に解釈をする。
つまり、株式市場では「景気回復のメッセージ」として読み取り、為替市場では、「利上げの可能性」を中心に読み取るということだ。
どちらか一方だけが「本物」なのか、それとも、両者が「本物」なのか。このような問題は、トレーダーにとってはあまり重要ではない。
重要なのは、マーケットの解釈を読み取り、これからのトレンドに乗っていくことだ!!
このように考えてくると、これから数カ月間は、米ドル高が潜在的なトレンドであるということが、より鮮明になってきていると言えそうだ。
■米ドル/円の値動きを考える上で、カギを握るのは?
それでは、米ドル/円の値動きはどうなっていくか?
結論から言えば、米ドル/円は底打ちして、しばらく反発しやすい構造にあるだろう。だが、そのリバウンドの値幅がどれぐらいであるかということが、問題となってくる。
一部には、米ドル/円の100円台回復もあり得るといった予測もあるようだが、それが実現されるか否かを考える場合、カギは、ドルインデックスのリバウンドのスピードにあるのではないかと思う。
2009年の年初から、豪ドルやユーロが、米ドル安の受け皿としての主役を果たしてきた。その値幅も大きく、ゆえに、これから米ドル高が加速すれば、振幅の小さい対円よりも、調整は、豪ドルやユーロに対して進みやすいだろう。
それは、豪ドル/米ドルの通貨ポジションを見れば、一目瞭然だ!
たとえ同じ材料であっても、それぞれが「我田引水」的に解釈をする。
つまり、株式市場では「景気回復のメッセージ」として読み取り、為替市場では、「利上げの可能性」を中心に読み取るということだ。
どちらか一方だけが「本物」なのか、それとも、両者が「本物」なのか。このような問題は、トレーダーにとってはあまり重要ではない。
重要なのは、マーケットの解釈を読み取り、これからのトレンドに乗っていくことだ!!
このように考えてくると、これから数カ月間は、米ドル高が潜在的なトレンドであるということが、より鮮明になってきていると言えそうだ。
■米ドル/円の値動きを考える上で、カギを握るのは?
それでは、米ドル/円の値動きはどうなっていくか?
結論から言えば、米ドル/円は底打ちして、しばらく反発しやすい構造にあるだろう。だが、そのリバウンドの値幅がどれぐらいであるかということが、問題となってくる。
一部には、米ドル/円の100円台回復もあり得るといった予測もあるようだが、それが実現されるか否かを考える場合、カギは、ドルインデックスのリバウンドのスピードにあるのではないかと思う。
2009年の年初から、豪ドルやユーロが、米ドル安の受け皿としての主役を果たしてきた。その値幅も大きく、ゆえに、これから米ドル高が加速すれば、振幅の小さい対円よりも、調整は、豪ドルやユーロに対して進みやすいだろう。
それは、豪ドル/米ドルの通貨ポジションを見れば、一目瞭然だ!
シカゴIMM通貨先物ポジションの推移
(詳しくはこちら → 経済指標/金利:シカゴIMM通貨先物ポジションの推移)
ご覧のように、豪ドルのロングポジションが、数多くたまっている。
もし、反動があれば、かなりインパクトのある値動きになると推測される。
■当面は、クロス円相場の動向から目を離せない!
また、米ドル高が進むという方向性のみならず、米ドル高が進む“スピード”にも注意する必要がある。
仮に、米ドル高のスピードが速ければ、豪ドルやユーロの下落のスピードも激しくなり、豪ドル/円、ユーロ/円の急落も起こりうる。それは、結果的には米ドル/円のリバウンドを拒み、リバウンドどころか、反落することさえあり得るだろう。
逆に、米ドルの反発が緩やかなものであれば、豪ドルやユーロの下落スピードは緩やかなものとなる。
ひいては、米ドル/円がクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)相場から受けるインパクトは限定的なものとなり、ドルインデックスとリンクして、緩やかなリバウンドとなるだろう。
いずれにせよ、当面は、クロス円相場の動向から目を離せない。
また、目先、英ポンドが為替市場の「問題児」となる可能性が高く、マーケットの波乱要因として注意しておきたい。
このあたりの分析は、また次回に。
(2009年12月11日 東京時間12:50記述)
ご覧のように、豪ドルのロングポジションが、数多くたまっている。
もし、反動があれば、かなりインパクトのある値動きになると推測される。
■当面は、クロス円相場の動向から目を離せない!
また、米ドル高が進むという方向性のみならず、米ドル高が進む“スピード”にも注意する必要がある。
仮に、米ドル高のスピードが速ければ、豪ドルやユーロの下落のスピードも激しくなり、豪ドル/円、ユーロ/円の急落も起こりうる。それは、結果的には米ドル/円のリバウンドを拒み、リバウンドどころか、反落することさえあり得るだろう。
逆に、米ドルの反発が緩やかなものであれば、豪ドルやユーロの下落スピードは緩やかなものとなる。
ひいては、米ドル/円がクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)相場から受けるインパクトは限定的なものとなり、ドルインデックスとリンクして、緩やかなリバウンドとなるだろう。
いずれにせよ、当面は、クロス円相場の動向から目を離せない。
また、目先、英ポンドが為替市場の「問題児」となる可能性が高く、マーケットの波乱要因として注意しておきたい。
このあたりの分析は、また次回に。
(2009年12月11日 東京時間12:50記述)
株主:株式会社ダイヤモンド社(100%)
加入協会:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)