早くからドル安円高論を唱えてきた松田哲さん。当コーナーで4月に松田哲さんに取材した際、松田さんは次のようなことを話していた。
「確かに週足で見た時のレジスタンスライン----これは今、109円あたりにありますが、ここを上に抜けてくれば、上昇トレンドへ転換する可能性も出てきます」(「ドルはどこまで下がるのか? (5)」より)
その時、掲げたのが以下のチャートだ。
4月に掲載した【米ドル/円チャート】
松田さんが「今、109円あたりにある」と言っていたレジスタンスライン。これは右肩下がりの直線だから、当然その後、下がってきている。一方、ドル/円は3月に95円台をつけたあと、上がってきた。その結果、以下のとおり、ドル/円のローソク足はこのレジスタンスラインを超えてきている。
レジスタンスラインを超えてきたが…
となると、上昇トレンドへ転換する”可能性”が出てきたことになるのだろうか? そのあたり、松田さんに今一度聞いてみることにしたのである。
■「上昇トレンドへの転換」はまだ起こっていない
「ごく目先で言えば、買いのシグナルはいったん出たと言えます。だけど、大きなトレンドで言えば、上昇トレンドに転換はしていない。下落トレンドのままでしょう。
直近の動きは上値が108円台、下値が105円のボックス相場。ホントは105円の下に102.50円というのも下値のポイントとしてありますが…」
「上昇トレンドへの転換」はまだ起こっていないというのが目下の松田さんの見解。そして、現在は横ばいのボックス相場ということだ。
ドル/円の直近の値動きで、チャートポイントとなっていたのは105.80円、そして106.20円だと松田さんは言う。
「3月に95円台の安値をつけたあと、5~6月の上昇過程で何度も上値のレジスタンスとなったのが105.80円と106.20円です。6月の上旬にここを上に抜けてきたので、いったん買いシグナルが点灯し、108円台まで行きました」
米ドル/円 日足
「テクニカル的に見るならば、そのままさらに上伸してもおかしくなかった。でも、ファンダメンタルズを分析してくと、ドルを買っていく材料がないんです。結局、テクニカルでは上へ、ファンダメンタルズでは下へ行くような動きの綱引きになって、保ち合いになっている感じでしょうか」
■奇妙な値動きの背後にあると松田さんが推測するもの
松田さんの連載コラム「FX一刀両断」では、最近のドル/円は理不尽な値動き、奇妙な値動きなどとよく表現されているが…。
「おかしかった典型は前回、6月発表の失業率ですよ。前月と比べて0.5%の悪化というのはホントにぶったまげる数字です。僕が外国為替市場にかかわるようになってから、こんなにひどい失業率は見たことがない。通常なら、ドル/円は3~5円ほど円高方向にぶれてもおかしくないと思いますよ。ところが、あの日は瞬間的に上がってるんです。
今のドル/円相場は需給が歪んでいて、無理矢理に力づくで堰き止められていると感じています。これはあくまで推測にすぎませんが、ドルが暴落すると困る勢力----ドル資産をたくさん持っている中東筋のオイルマネーなどが大量にドルを買っているのだと思っています。
だけど、こういった堰き止めているものがいったん破れたら、もっとひどいことが起こると思いますよ」
ここで、チャートポイントの話に戻ると、先ほど出てきた105.80円とか106.20円というのは、その後、何度も破られてしまったので、今はチャートポイントにはなっていないとのことだ。
結局、現在は上値を108円~108.50円、下値を105円近辺としたボックス相場。テクニカルの教科書的にはそれを上に抜けるか、下に抜けるかで大きく相場が動き出す可能性ありとのこと。
■「ひどいこと」はいつ来るのか?
「ドル/円は売り」……この松田さんの見解は今も変わっていない。だから上か下かで言えば、当然、松田さんが見ているのは”下”だ。105円を下に抜けて、さらに大きく下がる動きである。これが松田さんの言う「もっとひどいことが起こる」なのだ。
では、それはいつ頃、来るのか?
「ほどなく来ると思っています」
では、「ひどいこと」をさらに具体的に言うと?
「3月につけた安値、95円台を割れるということです」
そういう可能性があるということですね?
「そうです。…というか、そうなるでしょう」
105円を下に抜けるかどうか? ドル/円の当面の注目ポイントはここだ!
(ザイFX!編集部・井口稔)
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