■為替では「インサイダー取引」「相場操縦」はあり得ない!
為替市場の焦点は、引き続き、ギリシャ問題に集中している。
足元では、ギリシャ政府による緊縮財政案の発表やドイツ政府関係者の「支援なし」発言、さらに、格付け機関のムーディーズ(MDY)によるドイツ銀行の格下げなどを材料に、相場は敏感に反応して、ユーロは一進一退を続けている。
その上、今週に入り、米国当局がユーロ売りに絡んで、大手ヘッジファンドに対して調査に乗り出したというニュースが伝わった。著名投資家であるジョージ・ソロス氏の傘下のものも含まれており、市場関係者の興味を引いている。
ちなみに、為替市場においては、株式市場のように「インサイダー取引」、「相場操縦」といった罪が問われたケースは、寡聞にしてあまり聞いたことがない。
もし、報道されているように、大手ファンドが手を組んでユーロ売りを仕掛けたとしても、相対取引がメインで、かつ、1日あたり3兆5000億ドルもの取引高を誇る為替のマーケットでは、相場を操作することは決して容易ではない。
為替相場の流れは、1つの国やいくつかの集団の力でチェンジできるものではない、というのは今では常識だ。
それでも、この件がマスコミに大きく取り上げられているからには、その背景を考えなければならないだろう。
■WSJのニュースは関係者のリークだった!?
共謀してユーロ売りを図ったとされる、大手ファンドの会食会が開催されたのは2月8日。そして、ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)がこの件を報道したのは、2月26日だった。
この報道によると、昨年12月上旬に欧米の大手銀行が大規模なユーロのショートポジションを作り、ユーロのプット・オプション(売る権利)を買い始めていたようだ。
つまり、ユーロ売りは、この時点ですでに始まっていたのだ。
大手ヘッジファンドの幹部を務めるには、頭がよい、精神的にタフといった素質と並んで、口が堅いという絶対条件がある。
だから、WSJの報道とはいえ、会食会の参加者が意図的に外部に漏らした以外には考えられない。
■ジョージ・ソロス氏の発言の真意は?
そうとなると、その意図も透けて見える。
つまり、彼らはすでに、ユーロ売りでたっぷり儲けているものの、手持ちのポジションが多すぎることで困ってもいた。誰かがさらなるユーロ売りに加担してくれないと、うまく買い戻せず、手持ちのユーロ売りポジションをさばききれない。
そのためには、「ユーロの崩壊は間違いなし! 我々についてきてほしい」というメッセージをマスコミに報道させる必要がある。
もちろん、彼らが、他人を儲けさせるために無料で情報を提供するような「お人よし」でないことだけは確かだ。
実際、ジョージ・ソロス氏は、この会食会が報道される約1週間前に、ユーロ崩壊の可能性を公言していた。何とも絶妙なタイミングだ! 1992年に英ポンドを崩壊させた男の言葉だから、その説得力と影響力は絶大である。
だが、最近わかってきたことは、昨年後半から金(ゴールド)のバブル論を展開している同氏が、実はひそかに金を買いあさっていたということだ。
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