■米国当局が調査に乗り出した本当の理由はなに?
また、米国当局の調査の真意について、首をかしげる市場関係者は多い。
前述のような為替マーケットの仕組みと本質を、米国の当局者がわかっていないはずはない。この類の調査で何らかの証拠をつかみ、起訴できる確率が限りなくゼロに近いことは、彼ら自身がよく知っているはずだ。
それなのに、このような“パフォーマンス”をあえて行っているのは、別に理由があるからに違いない。
ここからは私見であるが、米国当局は本質的に、足元の米ドル高をあまりよく思っていないに違いない。ユーロ安の受け皿を米ドルが一手に担うといった構図を良しとせず、危機を感じてさえいるのではないかと思う。
このコラムでも何度か指摘しているが、米国は本音では、米ドル安を望んでいるし、オバマ大統領が予算教書演説で披露した「輸出5年倍増計画」を達成するには、米ドル安が不可欠と言えよう。
結論を言えば、ユーロ安はすでに終了していたか、あるいは8合目に達しているということである。
大手ヘッジファンド幹部の会食会に関する報道や、米国当局が調査に乗り出したという“茶番劇”は、後になって振り返ったときに、ユーロ安終えんのサインだったと人々の記憶に残るかもしれない。
■今年は英ポンドの急落に要注意!
さて、ユーロ安が終えんに向かいつつあるといった見方が正しいとすれば、上昇を続けるドルインデックスのトップアウトも近いのかもしれない。
そう思わせるには、ワケがある。
それは、英ポンドの急落である。
対米ドルでは、一時1.48ドルを割り込み、対円でも一時、132円まで下落した。
英ポンドの軟調は、マーケットの次なるギリシャ探しの結果とも言われているようだが、米ドル高の受け皿が英ポンドにシフトしてきたことは、ユーロ売りに疲れていることの裏返しでもある(「『ボルカールール』が歴史的波乱の要因に!?為替相場が固定相場制に逆戻りするリスク」を参照)。
もっとも、下に示したチャートのように、問題山積みのように見えるユーロに対してでさえ、英ポンドは急落している。英ポンドの問題は、かなり深刻だ。
前回のコラムで指摘したように、今年は英ポンドが問題児なのだ!(「そろそろ英ポンドのサプライズが起こる!? 来年は『ポンドキャリートレード』が流行か?」を参照)。
次回のコラムでは、「英ポンドキャリートレード」をテーマとしたい。
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