雇用統計はものすごく良かったと言えよう。事前の予想が官僚の作文的なものが多かったので、雇用環境をうまく説明し切れていないようだ。大手ITや金融機関などの雇用削減は目立ったが、その裏ではコロナ禍から正常化への過程で着実にサービス産業への回帰が見られるのだ。
労働の逼迫と言ってもいい。飲食やイベントの再開で人が戻ってきているのだ。それで就業者数は50万人を超える増加となって、失業率もさらに低下した。平均時給も過去の分まで上方修正されている。
そもそも金融引き締めが終了して、しかる後に利下げまで行われるとみた楽観論の説明が先立ってしまった。それでアップルやグーグル、マイクロソフトに加えてゴールドマンやJPモルガンなどでの解雇だけを過剰に観測していた。
雇用を増やすと言っていた企業のことは話題にも上がらなかった。思い込みと利下げシナリオへの期待が強すぎたので、マーケットではその反動は覚悟しないと行けないところまで来ている。
反動はドル相場にも顕著に現れた。雇用統計の直後からドル買いが進んだ。失業率が戦後の最低水準になっているというのに、その状況で利下げをするという根拠に足りないからだ。インフレは低下傾向を示しているといっても、物価は高止まりのままだ。
これでは年後半にも利下げに転じるのではないかという観測も薄まってくる。それを見込んでのドル買いだ。ドル円は128円台だったものが、131円台までジャンプアップ。上げ幅に比べて、ほとんど押し目らしい押し目を作らなかった。ユーロドルも1.07台まで突っ込んでいる。さらに悪いことにドルはそのまま高値引けしているということだ。
私はユーロドルをロングで持っていたのだが、雇用統計で秒速で即死。データが出る直前までは強い振る舞いを見せていたのだが、そのまま上がっていくのだろうと期待していたので、結局は損切りに引っかかってしまった。
今週はイベントが少ない。したがって強すぎた雇用統計の解釈と消化に費やされるという週になるだろう。アジア時間では日銀人事についての報道で円売りまで続いているが、要人の発言にも注意が必要だ。
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