■最近の市況は米ドル高の方向に向かっている
足元の為替市場では、米ドルが全般的に底固く推移している。
ドルインデックスは8月29日(月)に73.52の安値をトライしたものの、9月1日(木)には一時74.71まで切り返している。
ユーロ/米ドルも、7月高値の1.4536ドルをわずかに更新したものの、その後は一時300pips超の反落を見せた。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 日足)
基本的に、最近の市況は筆者の考えに沿った形で米ドル高の方向に向かっている。
その中で、気になった点をテクニカルとファンダメンタルズから1点ずつ挙げてみよう。
■「QE3」が行われる確率は5分5分に
まずはファンダメンタルズの側面からで、8月26日(金)に行われたジャクソンホールにおけるFRB(米連邦準備制度理事会)のバーナンキ議長の講演では、予想どおりに「QE3(量的緩和政策第3弾)」は示唆されなかった。
ただ、8月30日(火)に公表された8月9日(火)開催分のFOMC(米連邦公開市場委員会)議事録では、FRB内部の分裂が想定より大きかったことが判明した。
したがって、バーナンキ議長は当面、内部統一のために根回しを行う必要がある。
しかし、量的緩和策の実行は急がないものの、米国の経済指標で景気後退を示唆するものが、この間にもさらに出てくるかもしれない。そうなれば、反対の声を封じ込めるまで、何らかの形で実質3回目の量的緩和を行う可能性も浮上してくる。
つまり、9月2日(金)の雇用統計も含めて、米国の経済指標の悪化(現時点の予測も総じて悲観的だが…)は、バーナンキ議長にとって、緩和策の反対派を封じ込める絶好の材料となる。
むしろ、バーナンキ議長が芳しくない経済指標を望んでいるのではないかと揶揄されるほどで、FRBは量的緩和という非常手段を完全には放棄していない。
「QE3」とは呼ばれなくても、何らかの形で9月20日(火)~21日(水)のFOMCで、FRBがさらなる量的緩和策を打ち出してもおかしくはない。
したがって、前回のコラムで申し上げた見方を修正させていただきたい。すなわち、5分5分の確率で「QE3」ありということだ(「『株の神様』も中国も救世主にはなれない。次の危機はリーマン・ショックより深刻に!」など参照)。
■為替相場のターニングポイントは近づいている
次に、テクニカルの側面から見てみよう。一時的とは言え、ユーロ/米ドルが7月高値を更新したことが気になっている。
足元では、7月高値更新後につけた1.4549ドルからだいぶ反落してきたが、下のチャートが示しているように、本来ならば、7月高値の1.4536ドルのブレイクは「トライアングル」の上放れを示唆するサインとなる。
仮に、ユーロ/米ドルがこのまま下落していくと、「トライアングル」のフォーメーションのブレイクが「ダマシ」のサインだったことになる。
その点で、ユーロ反落の蓋然性を証左するシグナルとも解釈されるが、そうでなければ、調整一巡後に再びリバウンドを継続し、フォーメーションの指示どおりに上放れしていくことも考えられ得る。
(出所:米国FXCM)
注意していただきたいのは、ユーロの反落はかなりきついものの、現執筆時点では「トライアングル」のフォーメーションを破壊するまでには至っていないということだ。今後の値動きを待つ必要がある。
いずれにせよ「QE3」の有無に関する思惑で、為替相場のターニングポイントが近づいている。
米ドル安の終えんという大きな見通しは不変であるが、その「クライマックス」がどのような形で現れてくるかは決めつけないほうがよさそうだ。
上のユーロ/米ドルのチャートが示すように、再び「トライアングル」を上放れた場合、ユーロが年初来高値を再更新してから、ユーロ発足以来の長期上昇トレンドに転換する可能性もある。油断できない情勢だ。
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