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■スイス/円は8月下旬からの1カ月間に10円以上も下落!
私は、8月30日(火)の本コーナーで、「スイスフラン/円のさらなる下落継続に注意です」と書きました(「急上昇から一転急落したスイスフラン/円は再び上昇するのか?」を参照)。
その後、スイスフラン/円はどうなったのでしょうか?
(出所:Edge Trader)
8月30日(火)のコラムには8月26日(金)時点のチャートを掲載しましたが、その価格は95.043円でした。そして、この原稿を書いている9月23日(金)の終値は84.56円となっており、10円以上の下落を見せました。
つまり、8月30日(火)のコラムを見てスイスフラン/円を売っていれば、利益が上がったことになります。
実は、このスイスフランの暴落の背景には、特殊なファンダメンタル材料が働いたことは、みなさんもご存じのことと思います。
その特殊な材料とは9月6日(火)に発表されたスイス国立銀行(中央銀行)による為替介入で、「スイスフランの下落を誘導するために、無制限に外貨を買い入れる」というものです。
私が前回のコラムを書いて、スイスフランの下落に警鐘を鳴らしたのは8月30日(火)であり、スイス国立銀行による為替介入は9月6日(火)に行われました。
私が事前にこのスイス国立銀行の介入に関して、情報をつかんでいたと思われますか?
もちろん、私にはそのような情報ソースはなく、このニュースを見て「すごいタイミングで出たな」と思った程度です。
■上昇したり、下落したりしやすいタイミングがある
為替市場に限らず、金融市場の価格変動に影響を及ぼすニュースというのは、毎日ゴマンと出ています。
しかし、これらのニュースが価格変動に与える影響は常に一定ではなく、上昇しやすいタイミングや、下落しやすいタイミングというものがあります。
今回のスイス国立銀行による為替介入の発表は、8月30日(火)時点で私でもわかるくらいにチャートの形状が悪化し、スイスフランの買いを抱える投資家やトレーダーが損失を被って、かたずを飲んで見守っている、まさに下落しやすいタイミングで出た決定的なニュースとなったのです。
私は、スイス国立銀行の為替介入も、他のファンダメンタル材料も、何も知らない状態で、前回のコラムでスイスフラン下落の可能性について触れました。
前回のコラムでは、チャート形状の特殊性(大相場形成時の特徴的な値動き)を例に取り、2005年12月時のニュージーランドドル/円と似た動きになっているので、同じような下落の継続に注意しましょうと書きました。
つまり、為替相場においては、一定の確率で過去に形成された値動きが、現在も将来的にも繰り返される可能性があり、それを確認することでトレードを組み立てることができますとお伝えしたのです。
トレードは、予想から組み立てられるものではなく、過去の相場の値動き(チャート)の確認から組み立てられ、利益を上げて行くものなのです。
■「大相場形成時のパターン」を知ることが重要
たとえば、今回のスイスフラン/円の値動きでは、例として上げた2005年12月ごろのニュージーランドドル/円と同様の値動きを形成しましたので、8月9日(火)の最高値形成以降の急落の中で、それまでの買いポジションを利食いしていくことが可能でした。
途中で「特殊な材料」の発表はありましたが、数年~十数年のスパンで市場を観察すれば、特殊な材料の発表も、それほど特殊でないことに気づきます。
さらに、8月9日(火)の最高値形成以降の急落の中で、売りポジションを建て、現在の下落継続の中で、利益を確定していくことも可能です。
典型的なチャートパターン(値動き)である「大相場形成時のパターン」を知り、過去の相場において確認しているからこそ可能なトレードなのです。
(出所:Edge Trader)
確かに、スイスフランはリスク回避通貨として、8月上旬まで各通貨に対して一方向的に買われ、値を上げてきました。
つまり、世界中の投資家やトレーダーが、スイスフランを買ったのです。
■スイス/円で利益を上げている投資家はどれだけいるか?
しかし、米ドルに対しても、ユーロに対しても、8月9日(火)を境にスイスフランは急落しています。
このスイスフランの急落の中で、買いポジションを利食いし、売りポジションで利益を上げている投資家やトレーダーは、どれだけいるでしょうか?
(出所:Edge Trader)
(出所:Edge Trader)
実際のところ、ほとんどいないと思います。
なぜなら、誰もがスイスフランはリスク回避通貨として、まだまだ上がると予想していましたので、売る理由がないからです。
■FX市場でこれから利益を上げるためには?
しかし、チャートを確認すれば、スイスフランが下落を始めたことが確認できますし、さらに大相場の典型的な値動きまで作ったので、買いポジションの利食いや、新規の売り建てには十分な材料が出たと言えます。
「予想」という視点で考えれば、前回のコラムで私が書いたことは「予想が当たった」と見ることができるかもしれません。
しかし、投資家やトレーダーは予想が当たっても、その値動きの中で実際に売買を行い、利益を上げなければ意味がありません。
そして、予想の有無や当たり外れに関係なく、実際に売買を行っていくためには、何らかの基準を持ってトレードを組み立てていかなければなりません。その基準を「ルール」と呼びます。
今回のスイスフランの一方向的な上昇と、その後の急落の中で、過去の値動き(チャート)を元にルールを組み立て、準備していたトレーダーは、スイスフランの売買で利益を上げています。
あなたが、FX市場でこれから利益を上げるためには、過去の値動きやチャートを知り、ルールを作り、毎日の価格を確認する中で、ルールに従った売買を行っていく必要があります。
予想を行い、予想を当てることも大切かもしれませんが、それ以上に大切なのは過去のチャートを確認し、ルールの決定を行い、実際の売買につなげて、利益を上げることです。
スイスフランが急騰から急落した今、次に急騰・急落する通貨は何でしょうね? 予想ではなく、確認を行っていきましょう。
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