米ドル/円は一時157.93円まで急騰。FOMCがタカ派で終わり、日銀総裁の記者会見が極めてハト派だった
みなさん、こんにちは。
今回でこのコラムは年内最後の投稿となります。
過去何度か、来年(2025年)の相場を展望し、米ドル/円、ユーロ/米ドルとも米ドルは堅調に推移する公算が高いということをご紹介させていただきました。
今回はこれまでと違った視点から、米ドル/円の行方を探っていきたいと思います。
12月12日(木)のコラムで、2025年は日米金利差縮小で円高になるという予想が本邦事業法人に広く浸透しているため、彼らの米ドル買いの為替予約が大幅に遅れており、米ドル/円は底堅いということをご紹介させていただきました。
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⇒【2025年のFX予想】米ドル/円は145~165円程度のレンジの中で、円高局面では米ドル買いが機能しそう! 日米金利差縮小がわかりやすい分、米ドル買い遅れ組が増加中(12月12日、西原宏一)
しかし、先週(12月16日~)のFOMC(米連邦公開市場委員会)と日銀総裁の会見を経て、そもそも日米金利差はマーケットで想定されていたほど縮小しない可能性が高まり、米ドルは上昇しています。
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⇒米ドル/円、ユーロ/米ドルとも米ドルの押し目買い継続! FOMCが2025年利下げは2回と示唆、インフレ懸念で利下げ不要論も一部台頭。米10年債利回りが底堅く推移しそう(12月19日、西原宏一)
まず、FOMCは主要政策金利を0.25%引き下げることを決定。注目の2025年の利下げについては、FOMC参加者の中央値で0.25%利下げが2回実施されることが示唆されています。
2025年の利下げは4回というのがコンセンサスになっていた時期もありますが、結局来年の利下げは2回。呼応して、米金利と米ドルは上昇。
さらに、注目の植田総裁の会見はかなりハト派。
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⇒【2025年のFX予想】米ドル/円は145~170円のレンジか。トランプ氏の政策は米ドル高要素が多く、本邦企業の米ドル買い遅れもあり、他の通貨ペアより米ドルが底堅い(12月23日、西原宏一&叶内文子)
今回の会見から想定できることは、来月1月の利上げは極めて困難といったところ。
マーケットのコンセンサスは1月の利上げだったことから、いきなり円売りに傾斜。
FOMCがタカ派で終わり、日銀総裁の記者会見が極めてハト派だったことから、米ドル円は一時157.93円レベルまで急騰。
(出所:TradingView)
総じてみれば、今年(2024年)最後の重要イベントであったFOMCも日銀総裁の会見も、米ドル買い要因として終了。
結果として、来年に向けて米ドル需要が衰えない展開となりそう。
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2025年の米ドル/円は150円〜170円か? マイナス金利が噂されるスイスフランに対しても円は軟調。円安の構造は変わらず
これまで日米金利差縮小や、トランプ次期政権の政策である減税、追加関税、不法移民排斥は、総じて米ドルを堅調に推移させる公算が高いことをご紹介させていただきました。
今回は視点を変え、大幅利下げが続いているスイスフランに対しても、円は軟調であることを確認したいと思います。
スイスフラン/円の四半期チャートを見ると、2000年の58円から今年の180円まで、スイスフランは円に対して3倍以上に急騰しています。
(出所:TradingView)
逆にいえば、過去24年という期間で、円はスイスフランに対して3分の1に価値を劣化させたと言えます。
その理由はいろいろと挙げられますが、過去3年に絞って言えば、インフレに苦しむSNB(スイス国立銀行[スイスの中央銀行])が通貨高を志向し、状況によってはスイスフラン買いの介入も躊躇しないとしたことが大きな要因となっています。
スイスでは、一時ビックマックセットが日本円で2500円という価格になっていたことが良く例に出されていたように、スイスはインフレに苦しんでいました。
このスイスのインフレに関しては、2022年のコラムでご紹介しています。
筆者の知り合いに有名な画家がいるのですが、先月(6月)、バーゼルに滞在していたので、物価動向を聞いてみました。
なんと、マクドナルドのビッグマックセットが2200円!従業員の時給が2800円というから驚きです。
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⇒スイスのビッグマックセットは2200円!? ユーロ/スイスフランは、年末には0.9000フラン、米ドル/円は調整後に137円突破か(2022年7月7日、西原宏一)
その後、昨年(2023年)12月に、自国通貨高に苦しむスイスの輸出企業が当局に危機感を訴えたこともあり、SNBがスイスフラン売り介入を示唆したことから、スイスフランは反落しました。
インフレが沈静化したこともあり、他の主要中銀に先駆けて、SNBは3月に利下げを開始。今月(12月)も0.50%と大幅利下げを発表。
これで今年、SNBはトータルで1.25%も利下げしたことになり、政策金利は2年ぶりに0.50%にまで下がっています。
短期金利の指標のひとつで、市場参加者の金融政策の見通しを反映すると言われているOIS(※)によれば、SNBはさらに0.50%利下げすることを織り込み始めています。
(※OIS(Overnight Index Swap)とは、固定金利と変動金利の翌日物レートを交換するスワップ取引のこと)
そして、SNBのシュレーゲル総裁によれば、必要ならばマイナス金利復活の可能性すらあるとコメント。
これはつまり、2025年のどこかで、日本とスイスの金利は逆転する可能性が高くなっていることを意味します。
日本とスイスの金利が逆転する可能性があるのであれば、円に対して3倍にも高騰しているスイスフラン/円は大きく値を下げる事が予想されます。
常にスイスフランに対して強気である僕ですら、今年は珍しくスイスフラン/円をショートにした局面もあるぐらいです。
しかし、こうした環境下ですら、スイスフラン/円は本稿執筆時点で174.80円と直近高値の180.07円から5円強しか下落していません。
(出所:TradingView)
繰り返しますが、SNBは来年、マイナス金利の可能性すらあるのですが、それでもスイスフランは円に対して底堅い。
つまり、スイスフランが円に対して急騰してきたのは、両国の金利差では説明できないことになり、円の弱さを改めて、確認せざるを得ないということになります。
円と言えば、スイスフランと双璧をなす避難通貨と言われたことは、もう完全に過去のものになってしまったようです。
これまで日米金利差や、トランプ次期政権での米ドル高、そして日銀総裁のハト派なコメントなどから、円の弱さを検証してきましたが、最後にマイナス金利の可能性すらある通貨に対しても円が弱いことを確認してきました。
こうした環境下では、2025年の米ドル/円も堅調に推移するという方針は変わらず。レンジは150〜170円でしょうか?
(出所:TradingView)
本年も、当コラムをご愛読していただいてありがとうございました。
来年もよろしくお願いします。良い年をお迎えください。
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