⇒松下誠氏のDVDブック『めちゃくちゃ売れてるマネー誌ZAiが作ったFXトレード演習帳[チャート攻略編]』の動画ダイジェストや松下誠氏の出演した「ザイFX! TV(原宿)」の番組はこちら
2010年から2011年にかけて、もっとも堅調なアップトレンド(上昇トレンド)を形成したクロス円(米ドル以外の通貨と円の通貨ペア)の通貨ペアとは、何でしょう?
豪/ドル円でしょうか、それともニュージーランドドル/円?
答えは、スイスフラン/円です。
■上昇から一転、安値を切り下げるスイスフラン
スイスフランは、欧州各国の財政破たん懸念や、米国のデフォルト懸念を嫌気した各国の資金が、リスク回避に選んだ通貨として、8月上旬まで上昇を続けました(スイスフラン/円の最高値は8月9日)。
それが一転して急落、8月26日現在、安値を切り下げる展開となっています。
この下落転換の背景には、スイス国立銀行(SNB、スイスの中央銀行)によるスイスフラン安誘導のための各種金融緩和策の存在がささやかれています。
そして、市場の焦点は、いつ再びリスク回避通貨として上昇を始めるか? という点のようです。
つまり、市場はすでにスイスフランの買いポジションを有しているか、もしくは、これからスイスフランを買おうか? という視点で見ているということです。
それでは、私はどう見ているかというと、現時点では「売り」です。
それは、なぜでしょうか?
■今のスイスフラン/円と似たチャートがあった!
下図2で、現在のスイスフランと同じようなステージにあったのでは? と思われる通貨をご紹介します。
この通貨ペアは何でしょう? また、いつの時点のチャートでしょうか?
答えは、ニュージーランドドル/円の2005年12月時点の日足チャートです。
私は、現在のスイスフランは、上記ニュージーランドドル/円の2005年12月に見られたようなステージにあるのではないか? と考えています。
このニュージーランドドル/円の2005年12月の現象とは、オーバーシュートや、大相場といった呼ばれ方をする、相場の行きすぎ局面です。
その特徴は、チャートにおける価格の上昇の角度(一定時間あたりに上昇する値幅の割合)が、徐々に急激になり、天井圏でピークを形成し、同じようなスピードで下落する、というものです。
この現象は、FX市場のみの現象ではなく、現物株式市場においても、指数先物市場においても、商品先物市場においても散見される、一般的な現象です。
実際に、2005年12月に天井圏でピークを形成して下落したニュージーランドドル/円の市場において、どういう声がよく聞こえたかというと…。
「押し目買いのチャンスじゃないか」、「いつから上がり始めるだろう」といった声が聞こえてきたのです。
実際、私もアドバイスを求められたことが、たびたびありました。
それではその後、ニュージーランドドル/円は上がったのでしょうか?
答えは、次の図3です。
■下落が簡単に止まらなかったニュージーランドドル/円
一旦天井から下落したニュージーランドドル/円は、わずかな期間の上昇を見せた後、さらに大きく下落。結局、天井から約半年間下落を続けた後、再び上昇に転じました。
この下落において形成した安値は、2005年12月の天井にかけ、上昇のスピードが加速し始めた位置をはるかに下回っており、これは上昇局面で買いに入った人が、すべて損失になったことを意味します。
もちろん、通貨の上昇や下落は、その個々の背景となるファンダメンタルズや、売りと買いのエネルギーのバランスによって異なりますので、現在のスイスフランが、この時のニュージーランドドル/円のように下落すると考えることは、時期尚早です。
しかし、可能性があることを知っておくのは大切。
実際に下落が続いた時に、自分自身の資金をどうするかという資金管理が行われていなければ、スイスフランの中長期の下落によって、多くの資金が失われる可能性があるのです。
そして、それはいつも繰り返されています。
■スイスフランのさらなる下落継続に注意!
私は、常々お話ししているとおり、トレードにファンダメンタルズ材料や要素を取り入れていません。また、市場や相場の先行きを、予想することを行いません。
上記に書いたことは予想のように思われますが、実際のトレードのためには、ここから一歩進んで、エントリーのポイントを決め、売買のサイズを決め、損切りポイントを決め、最後にエグジットのポイントを決める必要があります。
それらの過程を経た時、トレードは予想ではなく、ルールに変わるのです。
スイスフランを取り巻く報道を見ると、いずれリスク回避先として上昇を再開するだろう、といったようなものが多いように思われます。
その予想が当たったとしても、外れたとしても、自分の資金の損失を限定し、そして利益を出す、そんなトレードを作ってください。
スイスフランのさらなる下落継続には、注意と注目が必要です。
●このあとの展開は? 次の記事をぜひご覧ください。
⇒「スイスフランの急落は予想できたのか? 急落が予想できれば利益が上がるのか?」
株主:株式会社ダイヤモンド社(100%)
加入協会:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)