カナダドル/円はBOCの発表前から上昇。BOCの大幅利下げはカナダドル/円にまったくインパクトがないイベントだった
みなさん、こんにちは。
まず週初、注目イベントとしてマーケットで取り上げられていたのは、BOC(カナダ銀行[カナダの中央銀行])の0.50%の利下げ予測でした。
BOCの利下げは今月(10月)だけではなく、今後も連続利下げが予想されており、それを織り込みに行く形で、カナダドル/円は続落すると想定されていました。
そして、マーケットのコンセンサスどおり、BOCは0.50%の大幅利下げを決定。
カナダ銀行は利下げペースを加速させ、パンデミック後の高インフレ時代が終わったことを示唆した。
ティフ・マッケルム総裁率いる政策立案者らは水曜日に基準となる翌日物金利を3.75%に引き下げ、これはパンデミック初期の2020年3月以来の借り入れコストの大幅な削減となります。
これは、市場やブルームバーグの調査でエコノミストが予想していた大幅な削減であり、
経済成長を促進し、インフレ率を2%の目標値に近づけることを目的としています
(出所:Bloomberg)
ただ、BOCの大幅利下げにもかかわらず、今週(10月21日~)のカナダドル/円は2円上昇しています。
(出所:TradingView)
マーケットは大幅利下げをすでに織り込んでおり、結果を受けてのbuy the facts(事実買い)でのカナダドル買い戻しというわけでもなく、BOCの発表前からカナダドル/円は上昇していました。
つまり、BOCの大幅利下げは、対円であるカナダドル/円にはまったくインパクトがないイベントであり、他のクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)に与える影響もなかったということになります。
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トランプトレードで米金利上昇と米ドル高が進行したが、米ドル/円の神田ライン152円超えは想定外
では、なにがマーケットの注目を集めたのか?
まず注目を集めたのが、いわゆるトランプトレードと称される米金利の上昇と米ドル高です。
10月23日(木)のNY市場では、米10年債利回りは一時4.2556%レベルと7月26日(金)以来約3カ月ぶりの高水準まで上昇。
(出所:TradingView)
11月の米大統領選でトランプ前大統領が優勢との見方が強まる中、米金利の上昇が続いている展開。
この米金利の上昇だけなら、じわじわと米ドル高が進む形で、いきなり米ドル/円が神田(前財務官)ライン(※)と言われる152.00円を超える展開を想定するのは難しい。
(※編集部注:神田ラインとは、政府・日銀の為替介入を指揮した神田前財務官が介入の際、意識していたのではないかと、市場が推測する米ドル/円の水準のこと)
米金利の上昇で総じて米ドルが上昇してはいますが、米ドル高というより、円の独歩安といった展開です。
(出所:TradingView)
衆院選で「自公過半数、微妙な情勢」との報道から、日本売りで「日本株安、円安」に。避難通貨のスイスフラン/円が大幅上昇
では、他のどんな要因がこの急速な円安をもたらしたのでしょうか?
過去3日間にかけて、円が一方的に売られたのは、週末の衆院選(衆議院選挙)の行方が意識されたから。
10月21日(月)東京市場で朝日新聞が「自公過半数、微妙な情勢 自民は単独過半数割れの公算」と報じた時の、最初のマーケットの反応は円高で、一時149.09円まで反落しました。
その後、自公が過半数を取れないという報道が増えるにつれ、日本の政治の不安定さが海外で報道されると、「日本売り」となって「日本株売り、円売り」へ。
毎日新聞によれば、自民が200議席も下回る可能性があるとの報道もあり、日本株は続落。
日経平均が続落している時は通常、リスクオフで「株安、円高」ですが、今回は日本売りとなりクロス円は続伸しています。
日経平均が連日値を下げるというリスクオフ時に、クロス円が上がると想定するのは難しい。
米金利が上昇しているので米ドル/円が上がるのは通常運転ですが、米ドル/円は200日SMA(単純移動平均線)を超えたあたりから円安が加速し、あっというまに神田ラインの152.00円を超えてきたことはサプライズです。
日本の政治的な報道で円相場が動くときは、一時的なことも多く、クロス円の続伸は一時的だとする見方もできます。
ただ、週末の衆院選の行方をマーケットが織り込みに行くのであれば、まだ2日間は「日本株安、円安」が続く可能性も高い。
各通貨ペアをチェックすると、今回の円安でもっとも反発したのはスイスフラン/円でした。
スイスフラン/円は最高値の180.07円にあと350pips程度のレベルまで反発しています。
(出所:TradingView)
米ドル/円の直近高値は162円レベルなので、まだ9円近くあり、ユーロ/円の直近高値は175円ですので、高値回復まで10円程度も距離があります。
つまり、この局面でのスイスフランの急回復が際立っているわけです。
この避難通貨であるスイスフランの上昇と株安とは、リスクオフという言葉で追随しやすい流れといえます。
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衆院選通過で日本株に反発余地。米大統領選まで米金利は下がりづらいが、乱高下もしそう。米ドル/円よりスイスフラン/円か
衆院選の結果を織り込みに行く形で、円安が進行しているという意味では、選挙が終わってしまえば、日本株は反発する余地があると考えています。
ただ、株が反発すれば、通常リスクオンでクロス円は上昇するのでこちらも円安。
トランプトレードでの米金利の上昇という意味では、まだ米大統領選まで2週間弱あるため、米金利は下がりづらい。
こうした流れの中では、200日SMAや神田ラインをあっさり上抜けた米ドル/円が急落するのも考えづらい。
しかし、このところの米金利は、FOMCの大幅利下げへの期待の反動という側面もあり、まだ乱高下しやすい。
こうした意味においては、米ドル/円よりもスイスフラン/円を筆頭としたクロス円のほうが読みやすいかもしれません。
どちらにせよ、海外勢の注目を集めているのは、今週末の衆院選の行方。
年末に向けての最大イベントである米大統領選の前哨戦として、今週末の衆院選の行方に注目です。
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