ユーロのソブリン危機を収束させるため、ECBがこのあたりで「最終兵器」を持ち出す可能性があるといった観測が浮上してきた。
その最終兵器とは他ならぬ「紙幣の刷り撒き」なのだから、これが現実となれば、今までのユーロ安がまだまだ「序の口」に過ぎなかったということになるだろう。
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もっとも、このコラムでも何度か書いてきたが、ECBはドイツ中銀のDNAを継承しているため、インフレ退治を第一任務として自らに課していると言われている。
この点で、「紙幣の刷り撒き」という量的緩和は、間違いなくインフレを引き起こす。今までのECBでは考えられない選択肢であり、実際のところ、このような政策を採用しないとずっと明言してきた。
しかし、焦眉の急となっているソブリン危機の退治に向けて、EFSFの機能は著しく欠けている。
10月に合意された1兆ユーロまでの規模拡大が実際になされるのか危い状況で、EFSFのレバレッジ化を疑問視するマーケットの声も依然として根強い。実際のところ、最近のEFSF債の入札は不調である。
EFSFのレバレッジ化は、トリプルAの国の担保が付与されているために可能となっているものの、担保国のフランスがトリプルAの格付けを失ってしまえば、元も子もない。
もはや、ユーロのソブリン危機を退治するために、EFSFだけで対応できない段階に来ている。
■ドイツもECBの量的緩和に同意せざるを得なくなる
EFSFとECBがイタリアなどの国債を買い支えているが、それにも関わらず、イタリア国債の利回りは一時7%を超えた。これは問題の深刻さを示すものである。
債券市場のトレーダーは、この買い支え自体を問題の深刻さを示す材料と見ており、かえって、これがポジションの手仕舞いを急がせているとも言われている。
EFSFにしても、ECBにしても、国債のマーケットを支えられなくなることは明白だ。
このような事情を背景に、最終手段として、あの孤高のECBにも「墜落」してもらって紙幣を刷り足し、ほとんど無制限に国債を買い入れるしかないといったシナリオが、ユーロ圏の内部で検討されているそうだ。
これは言うまでもなく、大国のドイツにとって、安易に同意し難いやり方だ。ドイツは今のところ、ECBが最後の貸し手(国債の買い手)となるような措置には断固反対しており、前述のシナリオの進行を妨げている。
その代わりにドイツが持ち出してきたのは、EU憲法を修正して「政治同盟」の形成を目指すという案だ。この案が実現すれば、「政治同盟」に共通した財務省の設立が可能となり、EU共同債券の発行が初めて可能となる。
しかし、こうすればソブリン危機が容易に解決すると思われる一方で、これは自国主権の一部を差し出すことを意味するだけに、一朝一夕にできるものではない。
したがって、ソブリン危機が悪化するにつれ、最終的には、ドイツもECBの量的緩和に同意せざるを得なくなるだろう。「政治連盟」の結成前にユーロが崩壊してしまえば、ドイツにとっても元も子もなくなる。
以上のことから、ユーロ安の進行はこれからと言えるだろう。
ただ、そうであっても、ユーロ安は2008年のように一直線に進むのではなく、段階的に進むと予想される。このあたりの話はまた次回に譲ろう。
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