みなさん、こんにちは。
昨年末に始まった足元のユーロの下落局面ですが、格付け会社のS&P(スタンダード&プアーズ)がユーロ圏9カ国を格下げしたことで、そのスピードは加速しています。
一時、ユーロ/米ドルは1.2624ドルまで下落し、昨年末に100円を割り込んだユーロ/円は大きな戻しもなく、97.18円まで急落しました。
また、ヘッジファンドが注目しているユーロオージー(ユーロ/豪ドル)も大幅に値を下げ、1.2228ドルまで下落しています(「ユーロ売り・オセアニア通貨買いが欧米で主流に。ユーロキャリーは定着するのか?」など参照)。
ただ、今週に入ると下落幅は縮小しており、ジワジワと反発しています。ユーロは調整相場の様相を呈してきました。
■ユーロ圏からの悪材料にも反応薄となってきた
2012年に入ってからの欧州発の報道は、ネガティブなものばかりでした。前述したユーロ圏9カ国の格下げ、S&PによるEFSF(欧州金融安定ファシリティー)の「AAA」から「AA+」への1ノッチ引き下げなど、ユーロ売りの材料には事欠きません。
加えて、ギリシャPSI(債務危機の解決に向けた民間部門の関与)の協議が難航していることも伝えられました。
しかし、グローバルではユーロショート(売り持ち)が増大していることもあり、ユーロの下げ幅は次第に限定的となってきています。

(詳しくはこちら → 経済指標/金利:シカゴIMM通貨先物ポジションの推移)
また、「ポジティブサプライズ」とまでは言えませんが、1月18日(水)の欧米市場で、IMF(国際通貨基金)が融資能力の増強へ最大5000億ドルの調達を目指すと発表しました。このことを受けて、相場環境は改善しています。
さらに、「ギリシャ政府が民間債権者との協議を再開した」という報道も好感され、ユーロ/米ドルは切り返しています。
■ユーロ/米ドルは直近高値を抜けると、上値余地が拡大か
足元のユーロの反発局面においても、格付け会社のフィッチから「イタリアは2ノッチ格下げされる可能性」との見通しが示され、一時は1.2740ドルまで急落する場面も見られました。
しかし、終わってみれば、1月18日(水)のNY市場は1.2865ドルの高値圏でクローズを迎えています。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 4時間足)
今週も週初から、ユーロ圏に関するメディアの報道は圧倒的にネガティブな材料ばかりです。
ところが、ユーロ/米ドルの日足は1月16日(月)以降の3日間すべてで陽線引けとなっています。とりわけ18日(水)は、上ヒゲのない陽線でクローズとなっています。
ユーロ/円も98.81円の高値引けで、ヘッジファンドが注目し、ユーロの下落を主導してきたユーロオージーやユーロキウイ(ユーロ/NZドル)も陽線引けです。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/豪ドル 4時間足)

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/NZドル 4時間足)
友人によると、世界的に有名なサイクル・アナリストであるレイモンド・メリマン氏が示す変化日は、1月13日(金)~16日(月)(前後3営業日を含む)とのことです。
仮にユーロ/米ドルが直近高値の1.2881ドルをクリアに上抜いてくれば、もう一段上昇する可能性が高そうです。
現執筆時点のユーロ/米ドルは1.2865ドルレベルにありますが、1.2880~1.2900ドルエリアの攻防には注目したいところです。
■CDS市場のほうが格付け機関より市場心理を反映している
年初からのユーロの暴落がようやく沈静化し、友人のヘッジファンドも今週に入ってからはユーロ/米ドル、ユーロクロスの利益確定に動いているもよう。年初のユーロ下落局面では、うまく運用できたようです。
ただ、このユーロの反発局面は、世界中の投機筋などの巨大なユーロショートの巻き戻しに過ぎないと、多くの市場関係者は考えているようです。
その理由は「CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)市場」を見るとわかります。
CDS市場のほうが格付け機関より的確に市場心理を反映しており、マーケットでは、「格付け会社がCDS市場の後追いをするのではないか?」といったことが、中期的なユーロのネガティブ要因として話題にされています。
たとえば、CDSはフランスのほうがブラジルよりも高い(リスクが高い)ですが、S&Pの格付けを見ると、フランスはAA+、ブラジルはBBBとなっていて、格付け的にはフランスのほうがブラジルよりも良い(リスクが低い)ということになっています。
このようなギャップが生じているために、「近いうちに、格付け会社がEU(欧州連合)各国をさらに格下げする」と考える投資家が増えているようです。
■ユーロ/円の戻しのメドは100円台ミドルか?
この意味では、次はムーディーズの発表に注目すべきでしょう。
ムーディーズがイタリアを格下げすれば、多くの年金はポートフォリオからイタリアを外さざるを得なくなります。これにより、ユーロの不透明感がさらに拡大し、結果的にユーロ売りへとつながる可能性が高まります。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/円 4時間足)
注目のユーロクロスはユーロオージーが筆頭ですが、ユーロ/円にも着目しています。
ユーロ/円は昨年末に100円割れとなり、2ケタの数字で2012年の相場をスタートしましたが、年末年始の休暇中に急落したことから、本邦勢のユーロの売り遅れが目立っています。
そのような状況下で、ユーロ/円が100円台を回復するような場面があれば、本邦勢から断続的にユーロ売りが持ち込まれる可能性が高く、ユーロ/円の上値はきわめて限定的となりそうです。
今週に入ってユーロを買い戻している短期筋も、反発局面では、再びユーロショートを構築しようと目論んでいるもようです。
こうした市場環境を踏まえて、ユーロの反発局面にうまくのって効率的に運用し、ヘッジファンドをはじめとするプロの投資家のように、2012年をいい形でスタートしたいところですね。
ユーロ/円の戻しのメドは100円台ミドルといったところでしょうか?
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