米ドル/円を取り巻く環境と150円超えの可能性
皆さん、こんにちは。
米ドル/円を取り巻く環境に大きな変化はなく、7月中に150円を超える可能性が高いと見ています。今週は一時149.18円まで反発しました。

(出所:TradingView)
先週のコラムでも、7月の米ドル/円は150円を超えてくる可能性が高いとお伝えしましたが、現状、じわじわと値を上げています。
【※関連記事はこちら!】
⇒米ドル/円は150円台を今月回復か! 関税が25%で頭打ちの可能性、ユーロ/米ドルの1.2000ドルの壁、夏季休暇前の投機筋の円ロング解消が、米ドル/円を押し上げそう!(7月10日、西原宏一)
この円安傾向が続く主な要因は、以下のとおりです。
(1)関税交渉の猶予と石破政権の新たな提案
日米間の関税の発効日が8月1日(金)とされ、新たな交渉猶予期間が与えられました。これにより、石破政権が新たな提案を行い、関税率を引き下げられる可能性が出てきたことで、市場は一定の期待を抱いています。
(2)ユーロ/米ドルの下落が米ドル高要因
ユーロ/米ドルは、先週のコラムでも取り上げたとおり、6カ月で1688pipsも急反発していましたが、ECB(欧州中央銀行)当局から徐々にユーロ高牽制コメントが出たことで上昇が失速。一時1.16ドルを割り込んでいます。ユーロ/米ドルの下落は米ドル高に繋がり、結果として米ドル/円を押し上げる要因となっています。

(出所:TradingView)
(3)投機筋の円ロングポジション巻き戻し
投機筋の円ロングポジションは、8月の夏季休暇前にリスクを減らす目的で、今月中に円の売り戻しを進める可能性が高いと見ています。実際に円の売り戻しはすでに進んでおり、7月8日(火)時点でのIMM(国際通貨先物市場)通貨先物市場の円ロングは、11万6155枚まで縮小しました。残っている円ロングがさらに減少すれば、米ドル/円が150円を超えてくる可能性は高まるでしょう。

(詳しくはこちら → 経済指標/金利:シカゴIMM通貨先物ポジションの推移)
これらの要因に加え、さらに円安に振れる材料がもう一つ増えてきました。
それは、石破政権とトランプ政権の間の「信頼関係」と言えるかもしれません。
★ザイFX!で人気の西原宏一さんの有料メルマガ「トレード戦略指令!」では、タイムリーな為替予想や実践的な売買アドバイスなどをメルマガや会員限定ウェブサイトで配信! メルマガ登録後10日間無料です。
日米関税交渉は打開できず、日銀は利上げが難しい。米ドル/円は参院選前後に150円超えの可能性がさらに高まった
まず、安倍晋三前首相とトランプ大統領が親密だったことは周知の事実です。これは日本の報道だけでなく、海外でも広く知られています。FT(フィナンシャルタイムズ)も下記のように表現しています。
「米国の外交官らは、石破氏の弱点はトランプ大統領もよく理解しており、最初の任期中にトランプ大統領と心からの友情を育んだ故安倍晋三前首相が示した強さや自信とは著しい対照をなしていると指摘する」
「心からの友情を育んだ」という表現からは、両者の間の深い信頼と親密さがうかがえます。
一方、現政権は、トランプ大統領との関係において親密さを構築できていません。FTは「石破茂首相とトランプ氏の関与の初期段階には、あの時代からの好意がその後も継続し、貿易交渉を円滑にするという当てにならない期待があった」と報じています。
そもそも、日本の首相が関税交渉をめぐり「なめられてたまるか」とコメントしているようでは、心からの友情を育むことは難しいでしょう。
このため、日本の首席交渉官である赤沢良生氏がほぼ毎週ワシントンを訪問していますが、膠着状態は打開されていません。ベッセント米財務長官の訪日も、事態打開にはつながらないとみられています。
結果として、日米間の関税交渉がうまくいくと考えるのは難しい状態です。この環境下で、日銀は利上げしにくいのではないでしょうか。
日銀の利上げは円高を誘引します。「円高+関税」となれば、日本の自動車業界は大きな苦境に立たされることになるため、日銀の利上げが遠のくという、もう1つの円安要因が加わるわけです。
今後円安に推移すれば、友情関係にないトランプ政権からの厳しい関税も、ある程度はショックが和らぐ可能性があります。
海外でも「対米関係の歴史的リセットに迫られる日本(Japan faces an era-defining reset with the US)」というテーマでよく取り上げられるように、日本は新たな対米関係を構築する局面に迫られています。
この環境下では、参院選(参議院選挙)前後に米ドル/円が150円を超えてくる可能性はさらに高まっていると考えられます。
じわじわと値を上げてくる米ドル/円に引き続き注目です。
【ザイFX!編集部からのお知らせ】
ザイFX!で人気の西原宏一さんと、ザイFX!編集部がお届けする有料メルマガ、それが「トレード戦略指令!(月額:6600円・税込)」です。
「トレード戦略指令!」は10日間の無料体験期間がありますので、初心者にもわかりやすいタイムリーな為替予想をはじめ、実践的な売買アドバイスやチャートによる相場分析などを、ぜひ体験してください。
株主:株式会社ダイヤモンド社(100%)
加入協会:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)