■米ドル/円は再び80円を割り込んでいく!
次に気になる米ドル/円はどうだろうか?
「欧州問題が落ち着いて、みんながリスクテイクを始めると、米ドルと円が両方弱くなるでしょう。
通常、リスクテイクの流れでは米ドルと円はそのように動くからです。ただ、その両者では米ドルのほうが弱くなる結果、米ドル/円は下がっていくと考えています。
2月に入ってからの米ドル/円の急激な上昇が、介入終了後の中長期的な米ドル/円上昇とみることもできないわけではありませんが、全体的なファンダメンタルズに変化がないことから、中長期的な米ドル/円の下落トレンドは変化していないでしょう」

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 週足)
目下の米ドル/円は上昇基調にあるが、再び80円を割り込んでいくというのが佐々木さんの予想なのである。

■豪ドルは世界中の投資家の注目を集めつつある
佐々木さんのユーロ/米ドル、米ドル/円についての見通しは以上のとおりだが、その他の注目通貨として、佐々木さんは豪ドルを挙げる。
「リスクテイク嗜好が強くなる局面で強いのはやはり豪ドル。
コモディティ価格が上がってきているということで、豪州は貿易収支が改善しているんですね。豪州は貿易赤字国から黒字国になってきて、資産運用先として注目を集めています。
豪ドルに注目しているのは日本の個人投資家だけではないんです。外貨準備の運用先を含め、豪ドルは世界中の投資家の注目を集めつつあります。米ドルやユーロをずっと持っているのはイヤだという資金の受け皿になっているんですね。
豪ドル/米ドルは1.2ドルぐらいまで上がっていくのではないでしょうか」
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:豪ドル/米ドル 週足)
■日本では為替に関する感情論が多い
では、本シリーズ記事の最後に『弱い日本の強い円』の著者・佐々木融さんから読者へのメッセージをお伝えしよう。
「為替相場は経済、ビジネス、投資などさまざまな重要分野に関係していることなのに、現実に起こっていることに沿っていない解説が多いと思います。
為替相場がどうして動くのかについて、現実的な資本取引の流れなどに沿って理解を進めていく必要があると思います。
あと、私が1つ思うのは、日本では為替に関して感情論が多い気がします」

「米ドル/円が100円を割れそうなとき、95円を割れそうなとき、90円を割れそうなとき、『日銀/財務省はこのレベルを死守する』とか、『このレベルを割れると輸出企業は崩壊する』とかいう人が必ず出てくるんですよ。
相場は『こう動いたら、○○になっちゃうから、そうはならない』というふうには動きません。
これは個人投資家に限らず、事業会社もそうなんですが、『こう動いたら、○○になっちゃうから、それに対する対策はどうしたらよいだろう』と冷静に考えるべきだと思います」
(取材・文/ザイFX!編集部・井口稔 撮影/和田佳久)
株主:株式会社ダイヤモンド社(100%)
加入協会:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)