日銀会合では政策の維持が決定され、円売りが一段と盛んに。
株式市場は「安心」し、為替市場は「失望」した!?
本日(2024年4月26日)の日銀会合で、政策維持が決定された。「これまでと同程度の国債購入を継続する」といった文言は削除されたものの、事前にリークされた、国債購入額の縮小は明言されず、マーケットに安心と失望をもたらした。
安心したのは株式市場、失望したのは為替市場だろう。円売りが一段と盛んに行われ、米ドル/円と主要クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)はそろって高値を更新している。
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期待されている日本当局の介入がなかなか見られないので、逆張りしたミセス・ワタナベさんのポジションが踏み上げられたか、含み損を拡大させられた状態だと推測される。
ここまで進行してきた円安が想定外であるかどうかは別にして、「逆張りは禁物」という相場格言を再度認識していただきたいところだ。
為替取引はゼロサムゲームなので、常に逆張りするようなスタンスで臨むと、いずれ大きなやけどを負い、退場する宿命にある。教訓として今回も然りである。
国際的な投機筋は、総じて順張りしてきた模様だ。ただし、CFTC(米商品先物取引委員会)の最新統計では、円売りのポジションが16万枚を超え、歴史的に大きな規模であった。
本来、このように円売りのポジションが膨らんでいる時期こそ、当局が介入しやすく、また介入が成功しやすいとされる。しかし、ミセス・ワタナベさんの逆張りが随分大きかった上に、155円超えた時点でもさらにポジションを増やしたようで、当局は身動きが取れなくなったと思われる。
そのあたりの理屈は以前のコラムで詳しく説明しているので、ここでは重複して取り上げないが、状態が改善されていないことを強調しておきたい。
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⇒米ドル/円は、一時的に155円台へ上昇する可能性あり!日本のFXトレーダーの逆張りが、介入実施の障害に!?円安局面も最終段階だが、円急落に警戒する理由とは?(2024年4月12日、陳満咲杜)
⇒米ドル/円は一時151円を割り込んだが、上値指向が強い。今は「拮抗と均衡」を保った絶妙な水準!? 米ドル/円が介入なしに円安の流れを修正する可能性は低い!(2024年4月5日、陳満咲杜)
ここまで来ると、当局がいつ介入してくるかを予想しても、もはや意味がない。介入の効果を確実に得るには、当局はミセス・ワタナベさんの損切りを確認しておかないと行動できないかもしれない。ここまで言うと非常に残酷に聞こえるが、これがセロサムゲームの真実なので、書かずにはいられない。
それにしても、日本の個人投資家の逆張りが円安のスピードを押さえ込んできた、という側面を改めて考えると、ぞっとする。
なぜなら、仮にミセス・ワタナベさんも国際的な投機筋と同様、専ら円売りを仕掛けていたとしたら、今、すでに160円の大台に乗せていたかもしれないからだ。
(出所:TradingView)
もはや「介入はない」と諦めムードだからこそ、これから介入が!
円安の流れは大きく修正されると思う
ところで、ここまで来ると、日銀の政策維持や当局の介入がないことを、世論はますます厳しく糾弾するようになってきたようだ。
いわゆる「悪い円安」の部分が目立ってきたから仕方がない側面も大きいが、日本の世論はやはり異常だ。まるで「円安亡国」のような言い方には、違和感を覚える。
本日(4月26日)もX(旧ツイッター)にて英ポンドの例を引き合いに出し、今の円安に関する「ヒステリー」的な考え方を批判した。
2022年9月、ポンド対ドルは史上再安値を記録していた。最安値なので、ドル/円の350ぐらいに相当。果たして当時のイギリス、足元日本世論のような「ヒステリー」があったでしょうか。
— 陳まさと@プライスアクション (@chinmasato) April 26, 2024
「円安は国益」とまでは言わなくとも、この程度の円安で政府や日銀を罵倒するのはおかしいと言いたい。円安はデフレ脱却の代償であり、痛みである。「失われた20年」あるいは「失われた30年」から離脱して、まったく痛みを伴わないというのも虫が良すぎる話だ。
執筆中の現時点で、米ドル/円は157円手前まで上昇、ユーロ/円は168円の節目を突破した。
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
もう介入がないのではないか…と諦める雰囲気が濃厚で、前述のように、逆張り筋の損切りが一段と加速しているように見える。
だからこそ、これから介入があると思う。逆張り筋の存在が厄介である以上、彼らの損切りが確認されれば当局が動きやすいと思うからだ。
さらに、今、流行っている「構造的な円安」や「介入でも流れを修正できない」といった論調には同意できないから、介入があれば円安の流れが大きく修正されると思う。
ちなみに、2011年10月に米ドル/円が史上最安値(円の最高値)を付けた時期も、目先の相場の雰囲気と似ていた。
当時、円高は構造的、また介入があっても焼け石に水といった論調が大流行りであったが、結果的には大間違いであった。
介入は、あくまできっかけ。
為替相場のサイクルが米ドル/円の頭打ちを示唆する
ではなぜ、当時、日本当局の介入で大きな流れを歯止めし、また歴史的な大底を打たせることができたのだろうか。
それを説明するには、まず誤解を解かないといけない。言ってみれば、確かに政府・日銀が介入してから円高の流れが止まったが、介入はあくまできっかけで、資金力で勝負したわけでもなかった。要するに、時代の流れが円高終焉を示唆していたから、介入が「容易」に成功したわけだ。
では、時代の流れとは何か。端的な答えとしては、やはり為替相場におけるサイクルである。2011年10月は米ドル/円の16年半サイクル(底から底へ数えた場合)の終点に差し掛かっていたから、円高自体が終焉する宿命にあった。それがすべてである。
今回も然り。トップからトップへと数える米ドル/円の8~9年のサイクルが、近々、米ドル/円の頭打ちを示唆している。だからこそ、目先、円が急落しても、まもなく流れが修正され、また米財務長官の牽制があっても、日本当局は、近々介入してくると思う。
一番大事なのは、今回、介入があれば、失敗ではなく成功する確率が高いということだ。これが一番言いたいポイントである。
(出所:TradingView)
詳しくはまた次回、市況はいかに。
16:20執筆
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