(「JPモルガン・佐々木融さんに聞く(4) 日本が財政赤字問題で円安に至る3段階」からつづく)
■「為替取引の8割は投機筋だから実需は関係ない」のウソ
さて、今度は長期的な為替相場の変動要因から、中期的な為替相場の変動要因へ話を移そう。佐々木融さんの『弱い日本の強い円』では、中期的な為替相場の変動要因として、次の4つが挙げられている。
(1)貿易に関連した資金の流れ
(2)証券投資に関連した資金の流れ
(3)直接投資に関連した資金の流れ
(4)上記の資金が為替ヘッジつきかどうか
佐々木さんが言う「中期的」とは6カ月から10年未満の期間を指すが、中期的な為替相場の変動要因はなかなか複雑だ。詳しいことは『弱い日本の強い円』に譲るが、佐々木さんは「為替相場に中期的に影響を与えるのは実需だ」と言っている。そのことから聞いてみよう。
よく、『為替取引の8割は投機筋の取引だから、実需なんて関係ない』という言い方をする人がいますが、そうではないと思います。
そういった投機筋は必ず反対売買するんです。彼らは買ったら、そのあと売るし、売ったら、そのあと買います。
さらに、投機筋のかなりの部分は1日~数週間でポジションを閉じるんです。だとしたら、その影響は相場に対してニュートラルということがわかりますよね。
それよりも、買ったら買いっぱなし、売ったら売りっぱなしという実需の取引のほうが相場の方向性に与える影響は大きいということです」

■円に買われる理由などいらない!
そして、実需の取引が影響を与える中期的な為替相場において、「円に買われる理由などいらない」と佐々木さんは述べている。
これはどういう意味なのか?
「日本は世界第2位の経常黒字国であり、日本の輸出企業は為替相場がどんな動きをしていようと、輸出で稼いだ外貨を売って、円を買わなければいけません。
だから、円はわざわざ新たに買われる理由がいらないのです。黙っていれば、買われるのが円なんです」

「逆に円には売られる理由のほうが必要です。
円は世界や日本の景気が好調なときに売られる傾向が強いです。これは好景気を背景にリスクテイク嗜好を強めた日本の投資家や企業が対外投資を活発化させるためです。
このような売られる理由があるときだけ、円安は進行するのです」
■米ドルに売られる理由などいらない!
日本が経常黒字国であるがゆえに、黙っていれば買われてしまうのが円。これに対し、「米ドルに売られる理由などいらない」と佐々木さんは言う。
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