■「ユーロ崩壊」は予言師の煽りと同じ!
今回は、2012年最後の執筆となるので、来年の見通しについて大まかに話しておきたい。
ところで、本日(2012年12月21日)は何の日かご存じだろうか。
そう、いわゆるマヤの予言で言う「世界の末日」である。
当然のように、今この記事をお読みなっているみなさんは、こういった予言を信じていないはずだ。なぜなら、今日が本当に世界の末日であれば、みなさんはポジションを持たないし、これからの見通しに関心をお持ちとは考えられないからだ。
しかし、筆者から見れば「世界末日の予言」と同じレベルのものであるにもかかわらず、今年(2012年)また盛り上がってきた「ユーロ崩壊論」を、どれほど多くの方が信じていたことか。
エコノミストやアナリストから個人投資家まで、2012年に一番口にしていたのはギリシャ危機、スペイン危機、そしてユーロ崩壊といった単語ではなかったかと思う。
エコノミストたちは深刻な問題をさらに深刻に解釈し、それで給料をもらっているが、個人投資家たちは身銭を切っているだけに、「ユーロ崩壊予言」を信じてやまなかったなら、損失も大きかったはずだ。

(出所:MetaQuotes Software社のメタトレーダー)
言ってみれば、エコノミストやファンダメンタルズ派のアナリストたちは現代の「マヤ予言師」的な存在だ。
「現代」と強調しておきたいのは、昔のマヤ予言師が本当に世界の末日を予言していたかどうかは実は疑わしく、世界の末日というのは現代人が勝手に推測しているにすぎないからだ。
同じ理屈で、ユーロ崩壊論というものは本来の定めではなく、現代の予言師たちに煽られたものであった。
■相場の内部構造的には2013年は新紀元の幕開け
こういった教訓をもとに、来年(2013年)の相場を予測する場合、まず以下の2つの原則を守らなければならないことをおわかりいただけるだろう。
第一に、相場は相場に聞く。
第二に、相場は行くべきところに行くから、相場の内部構造の解明が何よりも優先されるべきである。
本コラムでは、繰り返し相場の内部構造という言葉を使い、また実例をもって説明してきた。
いまさら列挙するヒマはないので、過去1年の振り返りという意味合いでも、本コラム過去記事の再読をお勧めしたい。そうすれば、相場の内部構造とは何かをおのずとおわかりいただけるのではないかと思う。
重要なのは、来年、つまり2013年は相場の内部構造から見れば、極めて重要な1年になるということで、これをまず認識しておきたい。場合によっては、2013年は為替相場の新紀元をひらく1年となり得ると思う。
新紀元の意味はいろいろあるが、大まかに言うと、過去のメイントレンドを修正する、つまり相場の内部構造が新たな方向を生み出していくといった可能性が大きい。
そして、為替相場なので、もちろんまずドルインデックスのチャートを見なければならない。

上のドルインデックス長期チャートから考えて、まずおわかりいただけるだろうことは、1971年から始まった戦後為替相場の歴史は、そのまま米ドル安トレンドの歴史であると言っても過言ではないということだ。
次に、ドルインデックスはおもに16/17年のプライマリーサイクルを持ち、足元では2個目のサイクルの最終変動に位置していること。
過去のメイントレンドを修正していくなら、新たな16/17年サイクルをもって米ドル安トレンドから米ドル高トレンドへの転換を図る、ということになる。
したがって、確かに今は米ドル安(対円を除き)が進行しているが、相場の内部構造から考えると、2013年のどこかの時点で米ドル高トレンドへ転換していくはずである。
■「ユーロ崩壊」と「米ドル高への懐疑」は両立しない
非常に矛盾しているが、ちまたでは多くの論者が「ユーロ崩壊」を信じてやまない一方、米ドルの全面高にも懐疑的である。
双子の赤字とか、財政の崖といった構造的な問題はもちろん、バーナンキFRB(米連邦準備制度理事会)議長はQE3どころか、QE4(※)も打ち出している。
よって、米ゼロ金利が2015/16年まで続くと予測されるが、そんななかでは米ドルの全面高はとても想定しにくいだろう。
ファンダメンタルズ派アナリストたちの話を聞けば聞くほど「不安だ」となりがちで、すべて悲観的な見方になってしまう。
ただし、先に述べたように、ユーロ崩壊を信じるなら、その対極としての米ドルは当然高くなるから、ユーロ崩壊論を信じる一方で、米国のファンダメンタルズを持ち出して「米ドル高があり得ない」という論理は矛盾しているし、相場の基本を理解していないということになる。
(※筆者注:「米金利水準」を「米失業率や米インフレ率」に連動させて決定する政策はQE4と呼ばれている)
■ドルインデックスから読み取れる米ドル高へのトレンド転換
「相場のことを相場に聞く」なら、「米国はたび重なる量的緩和を実施し、深刻な構造問題を抱えているにもかかわらず、ドルインデックスが2008年3月安値を下回っていない」ことがサインとして読み取れるだろう。
つまり、米ドル安トレンドは最終段階にあり、2013年のどこかの時点で米ドル高トレンドへ転換し、さらにそれは何年間も続く大きなトレンドとなるであろう。
2012年10月にセミナーで使用したチャートを以下に掲載するので、イメージをつかんでいただきたい。

(出所:米国FXCM)
注意していただきたいのは、上のチャートで2008年安値から引かれたトライアングル型フォーメーションは、1987~95年に形成されたトライアングルの保ち合いパターンと近い、16/17年サイクルの最終段階を示唆するフォーメーションである可能性が高いことだ。

したがって、すでに3回底打ちを果たしたドルインデックスで、これから4回目の底打ちが形成されれば、ドルインデックスが本格的に米ドル高トレンドに転換し、米ドル高トレンドという新紀元の幕開けを告げるだろう。
ファンダメンタルズ上の「不安だ」についてだが、筆者が常に主張しているように、相場の真実とは値動きが先で、材料が後を追って発生するもので、米ドル高トレンドへの転換が果たせれば、こういった「不安だ」は解消されるか、解消されなくてもマーケットのテーマとして語られなくなるだろう。
その上、米ドルにとってプラスの材料が多くみられるだろう。現時点で一番あり得るのは、米ゼロ金利政策が早期解消される見通しではないかということだ。
為替はドルインデックスなり。
ドルインデックスの値動きをある程度つかんだら、主要通貨ペアの見通しも立つ。
■主要通貨ペアは2013年夏場から米ドル高トレンドに…
筆者は今回の米ドル安が、2013年春ごろにピークを迎え、夏場から米ドル高に転換する可能性が大きいとみているから、ユーロ/米ドル、英ポンド/米ドルなど主要通貨ペアの動きが一番わかりやすいのではないかと思う。
大まかなシナリオでは、2013年前半の早い段階でユーロ/米ドルは最大1.4000ドル、英ポンド/米ドルは最大1.7000ドル前後の高値をつけると思う。

(出所:MetaQuotes Software社のメタトレーダー)

(出所:MetaQuotes Software社のメタトレーダー)
ただし、それをもって最後の米ドル安となり、そこから2015/16年まで長い米ドル高トレンドが形成される。ユーロ/米ドルは2013年後半に1.1800ドル割れ、英ポンド/米ドルは1.5000ドルの節目を割れるだろう。
先行して米ドル高に反応した米ドル/円に関しては、2011年10月安値をもってすでに16年/17年サイクルの底を打っていたから、2013年いっぱい、基本的には米ドル高・円安トレンドを継続できるだろう。
米ドル/円は最低でも90~92円のターゲットを狙える公算で、米ドル高の本格化はまず円が受け皿となって実現される見通しだ。

(出所:MetaQuotes Software社のメタトレーダー)
ユーロ/円、英ポンド/円などクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)に関しては、基本的には2013年前半が強く、割と早い段階で年間の高値をつけるのではないかと思う。
2013年後半ではユーロ/米ドル、英ポンド/米ドルのベア(下落)トレンドに影響され、騰勢に勢いを失う可能性があるものの、米ドル/円がしっかりしているなら、ブル(上昇)トレンドを維持できるだろう。ユーロ/円は122-123円台、英ポンド/円は150-153円台を視野に入れたい。

(出所:MetaQuotes Software社のメタトレーダー)

(出所:MetaQuotes Software社のメタトレーダー)
■豪ドルは最後に米ドル高トレンドに反応か
ちょっと違った動きを見せるのは、ドルインデックスに含まれていない豪ドルではないかと思う。
豪ドルは米ドル高トレンドに対する反応が最後になるのではないかと思われ、ちまたの考えと違い、筆者は2013年に豪ドルがどこかで頭打ちになると見るものの、基本的にその頭打ちはいったん2011年高値を更新してからでないと起こらないのではないかと思う。
ゆえに、豪ドル/円の見通しも楽観的だ。2007年高値の109円台の水準まで回復してもおかしくないとみる。

(出所:MetaQuotes Software社のメタトレーダー)
偶然かもしれないが、ホンモノのマヤ予言では、明日(12月22日)に太陽が東から昇れば、まったく新しい新紀元の始まりだという。為替相場でも2012年が米ドル高の幕開けという新紀元に入っていくから、大きな取引チャンスに恵まれるだろう。
大まかな見通しで粗雑な部分も多いが、イメージとしてみなさんが2013年の相場動向をつかむために役立つところがあれば、無上の喜びである。それではみなさん、メリークリスマス&良いお年を。
株主:株式会社ダイヤモンド社(100%)
加入協会:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)