■落ち着きすぎているVIX指数が意味することは…?
マーケットは一進一退を続けながら、基本的にはリスクオンのモードを維持している。このような状態の確認は、VIX指数(恐怖指数)の水準をもって確認できるだろう。
(出所:CQG)
VIX指数は足元で15未満のレベルに留まり、昨年(2013年)以来の変動レンジ(約12~22)の下方に位置している。とても、「ウクライナ危機」といった感じがしない「居心地よい」水準だ。現状のままでは、「イエレン・ショック」の可能性も微塵も感じさせない。
そういえば、あのチャイナリスクもあった。それにしても中国景気と緊密な関係があると言われる豪ドルやNZドルの上昇ぶりから考えて、とてもチャイナリスクがあるようにはみえない。こうしたリスク要素がホンモノでないのか、それとも相場が楽観しすぎなのだろうか。
こういった問いに答えるのはとても難しい。何しろ、「相場は常に正しい」と言われる一方、「相場は常に間違っていると確信」とあの投機の王様、ジョージ・ソロス氏が言っているではないか。
しかし、よく考えると、リスク要素がたとえホンモノであっても、市場がバブルの状態においてはしばしばそれが無視され、だいぶ時間が経ってから急速かつ過激な反応を見せてくる場合は多い。1990年初頭まで続いた日本のバブルとその後の崩壊は好例である。
■リスクオンの硬直化はバブルの末期症状
我田引水に聞こえるかもしれないが、こういった視点をもって目下の相場を検証すればするほど、マーケットはバブルの最終段階にいるのではないかと疑う。
最終段階に出る「末期症状」はまさにリスクオンの硬直化である。言い換えれば、リスクオンが恒例化し、また、正当化されればされるほど、マーケットは急変のマグマを溜めている可能性が大きい。だから、目下の静けさをもって嵐が来ないというのは性急だし、この不気味な静けさだからこそ、警戒すべきである。
何しろ、VIX指数における2013年以来のレンジは、近年の最低レベルにあり、その最低レベルに留まったレンジ変動の下っ端に位置しているのが目下の状況だから、リスクオンの限界はすでに来ているか、近々迎えることになるだろう。
そして、為替相場における連動は、やはりドルインデックス底打ちの有無にあるのではないかとみる。
つまり、2013年以来、リスクオンの結果として米ドル安・円安のセット(もちろんここで言う米ドル安は対円を除く)が進んできたが、極度なリスクオンに対する修正があれば、その反動として米ドル高・円高のセットの兆しが見えるはずだ。
■ユーロ/米ドルはすでにトップアウトした可能性大
この意味では、米ドルの対極と位置づけられるユーロの頭打ちの有無が重要になってくる。果たしてそのようなサインがあっただろうか。
ユーロ/米ドルの週足を見ればわかるように、ユーロは1.4000ドルの節目打診に失敗し、先週(3月17日~)の安値1.3749ドルを割り込んでき たから、2013年10月高値に対応したRSIが弱気ダイバージェンスを構築し、先々週(3月10日~)の高値トライ失敗をもって煮詰まりつつある。
(出所:米国FXCM)
したがって、ユーロ/米ドルはすでにトップアウトした可能性が大きく、これから反落してくるのではないかと推測できる。
しかし、弱気ダイバージェンスシグナルが構築されたとしても、相場が崩れるとは限らないし、一時の調整があってもトレンドの転換に至らないケースも多い。では、この弱気ダイバージェンス、本当に効いてくるかどうか、また効いてくる前提条件とは何か。それがわからないと、実はこのシグナルの利用価値はあまりないと言える。
要するに、ダイバージェンスというシグナルはよく出るだけに、ホンモノかどうかをチェックする基準がもっとも重要になってくる。
■ユーロ/米ドルのRSIが50レベルを割り込むか否かに注目
筆者としては、シンプルな方法をもって見極めてきたから、週足に限定した場合、ずばり、RSIがこれから50レベルを割り込むかどうかに注目すべきだと考える。
(出所:米国FXCM)
ユーロ/米ドルのチャートを詳細に見るとわかるように、2013年12月末高値に対応するRSIは、2013年10月高値に対応するRSIの高値と弱気ダイバージェンスを形成していたが、2014年2月安値前に、RSIはいったん軽く50レベルをタッチしたものの、結局上昇して、結局、50レベルを割り込めずにいた。
ゆえに、2013年末高値をもって形成されたRSIの弱気ダイバージェンスが効かず、先々週(3月10日~)高値の1.3966ドルにつながったわけだ。
したがって、今回も同様に、これからRSIが50レベルを割らない限り、週足におけるRSIの弱気ダイバージェンスが効いてくるとは限らない。
しかし、割り込んだ場合、長期に構築された同シグナルの威力で、相当な下落幅を覚悟すべきであろう。
筆者は、今回は効いてくる公算が大きいとみる。
その理由について、ここでさらに詳説するとキリがない上に、読者のみなさんに混乱をもたらす恐れがあるから、まず見送らせていただくが、週足における弱気ダイバージェンスが効いてくるかどうかを検証するには、RSIの50レベル割れの有無がもっともシンプルで実際に使いやすいことを覚えておいていただこう。
■米ドル/円のRSIは近々50レベルを割り込むだろう
同視点をもって米ドル/円の週足を見ると一目瞭然で、読者のみなさんは自分なりのシナリオを立てられるだろう。米ドル/円の週足は以下のとおり。
(出所:米国FXCM)
結論から申し上げると、筆者は米ドル/円のRSIは近々50レベルを割り込む可能性が大きいとみるから、最大で2013年3月から構築されてきた週足における弱気ダイバージェンスもいよいよ効いてくると推測できる。はたして市況はいかに。
ちなみに、ここでは50レベル割れの有無というシンプルな基準を採用しているが、RSIはシンプルでありながら、実に奥深い。
だから、日足における運用は、より多くの基礎知識とコンセプトを身につければ、RSIをトレンド系指標の代わりに使うこともでき、ほかのトレンド系指標と相俟って、より確実なシグナルを発見することもできる。興味のある方は、筆者の新刊『基本にして最強 GMMA+RSI 二刀流FX』(扶桑社)をご参照いただきたい。
■ユーロ/円は最大で132円台を割り込む可能性も
最後に、たびたび指摘してきたように、これからリスクオフの米ドル高・円高があれば、もっとも下落しやすいのはユーロ/円などのクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)であろう。
では、クロス円の週足で、RSIは何を語っているだろうか。
(出所:米国FXCM)
ユーロ/円の週足を見ると、誰でも大きな弱気ダイバージェンスの構築を発見できる。これからRSIが50レベルをを割り込めるかどうかに注目すべきなのはユーロ/米ドル、米ドル/円と同様だが、黄緑のラインでRSIのボトムとボトムを連結するRSIのシグナルも見逃せない。
これはダイバージェンスではなく、リバーサルというシグナルの点灯である。リバーサルというシグナルは、残念ながら、なぜか日本ではあまり普及していないが、実は極めて重要なシグナルで、同シグナルの出現によって方向とターゲットを計算できる。また、ダイバージェンスとの位置関係によって、これからのトレンドを測る上での重宝な存在になる。
結論から申し上げると、筆者はRSIから推測したユーロ/円のトレンドは円高方向にあり、また、最大で132円台を割り込むのではないかとみる。詳細はまた次回。
追伸:次回は海外出張なので、がんばって書くつもりですが、やむを得ない場合は1回お休みをさせていただきます。ご了承ください。
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