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西原宏一の「ヘッジファンドの思惑」

今回は「口だけドラギ」でなさそう!?
仏当局の言動怪しく、ユーロ下落に注意!

2014年05月15日(木)18:43公開 (2014年05月15日(木)18:43更新)
西原宏一

FXトレーダー・羊飼いに聞く、初心者におすすめのFX口座の選び方とは?

■米ドル/円は狭いレンジで推移、ボラティリティ低下で動けず

 みなさん、こんにちは。

 米ドル/円は相変わらず狭いレンジ圏で推移。

米ドル/円 2時間足

(出所:米国FXCM

 オプションのボラティリティがかなり低下しており、通常なら大きく動く前兆となり得ます。しかし、オプションデスクが低ボラティリティに苦しんでいるため、「上がれば米ドル売り、下がれば米ドル買い」のガンマトレーディング(※)に終止。よって、今週も米ドル/円は101.50円-102.50円のタイトレンジに収まっています。

(※編集部注:「ガンマ」とは、オプション取引で使われる用語の1つ)

 このレンジ相場を崩せるかは、クロス円の動向次第。

世界の通貨VS円 4時間足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 4時間足

 そのクロス円の中で、もっとも重要なユーロ/円が先週から動意づいてきています。

ユーロ/円 4時間足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/円 4時間足

■今回は「口だけドラギ」ではなく、本当に実行しそう!?

 デフレに直面しているユーロ圏では、ECB(欧州中央銀行)の追加緩和が長らく期待されてきました。

 加えて、ユーロ/米ドルの1.4000ドル近辺は多くの市場参加者がオーバーバリューだと指摘。2014年に入り、短期筋がユーロ/米ドルのダウンサイドに賭け、ショートにしたり、下向きのオプションの購入などをしてきました。

 しかし、これまでECBはまったく動かず、米金利が低下していることもあり、ユーロ/米ドルは高値圏での膠着相場。

 そのため多くのマーケット参加者の思惑がはずれ、彼らの保有するオプションは劣化し、スポット取引ではショートカバーが入り投資家の収益を圧迫してきました。

 ところが先週、5月8日(木)のECB理事会では、ドラギ総裁がいきなり来月、6月の緩和を示唆。

「もし必要であれば6月のECB理事会で行動することは容易である」

 ドラギ総裁はこれまで何度も緩和を示唆してきましたが、行動に移さず、「口だけドラギ」と揶揄されてきました。しかし、今回は6月という時間軸を設定しているため、これまでと違って信憑性が高いコメントとなっています。

 このコメントを受け、ユーロ/米ドルは1.3993ドルと1.4000ドルのバリア突破目前の水準から急反落。一時、1.3689ドルまで約300pips急落しています。

ユーロ/米ドル 4時間足

(出所:米国FXCM

■フランス当局のコメントに注目、ユーロ下落の兆候?

 そして、マーケットの注目を集めているのがフランス当局からのコメント。

「ユーロは強すぎる、ユーロ圏の経済成長と雇用市場の改善のためにも、(ユーロ高をけん制するような)金融政策を取る必要がある」パルス首相

「EU(欧州連合)条約によると、為替政策については、政府にも(介入)権限がある」モントブール経済相

 マーケットでは、フランスからのコメントが目立つようになると当局が動く可能性が高まってきているというのがコンセンサス。

 加えてマーケットの注目を集めたのが、ジョージ・ソロス氏の下記のコメント。

「フランスは欧州の中の病人、ECBはようやくデフレを認識するようになった。
スペインはフランスより構造改革の面で努力している。フランス政府は行動する勇気が欠けている」

(出所:レゼコー紙)

 ジョージ・ソロス氏がこうした発言をするときは、もうすでに反落に対する準備ができているとの連想も……。

 ともあれ、本稿執筆時点、5月15日(木)のユーロ/米ドルは日足の一目均衡表・雲の下限である1.3722ドル近辺で推移。

ユーロ/米ドル 日足

(出所:米国FXCM

 また、週足の一目均衡表・基準線(=1.3696ドル)とオプションのエクスパイアリー(満期日)がまとまっている1.3700ドルレベルでサポートされていますが、オプションからの売り返しも強く、上値が重い展開となっています。

ユーロ/米ドル 週足

(出所:米国FXCM

■ユーロ/円下落継続なら、米ドル/円は重要サポート割れも

 来月、6月のECB理事会がどういった内容になるのか現時点ではわかりません。その中で、短期のヘッジファンドは来月のECB理事会に向けてユーロ/米ドルのダウンサイドのオプションを物色中

 ユーロクロス(ユーロと米ドル以外の通貨との通貨ペア)も軒並み下落していますが、注目はユーロ/円。

 米金利がなかなか上昇してこないことから、狭いレンジではあるものの、米ドル/円は何度も101円台まで押し戻されています。

 結果、ユーロ/米ドルと米ドル/円の合成通貨であるユーロ/円はじり安の展開で、5月14日(水)には日足の一目均衡表・雲の下限(140.02円)をブレイクし、一時139.46円まで急落。仮に基準線と転換線がクロスすると三役逆転となり、下落幅がさらに拡大する可能性があります。

ユーロ/円 日足(クリックで拡大)

(出所:米国FXCM

 このユーロ/円の下落が続くと、長期に渡ってサポートとなっていた米ドル/円の101.20円と100.75円をブレイクする可能性もあります。よって、米ドル/円のトレードに関しては、ユーロ/円の動向にも警戒が必要です。

米ドル/円 日足

(出所:米国FXCM

 ともあれ、ドラギ総裁のコメントにより、今回も1.4000ドルのブレイクに失敗したユーロ/米ドルは上値が極めて重くなっています。

レジスタンスは1.3850ドル、サポートは1.3650ドル。

 仮に1.3650ドルをブレイクすれば、下値余地が大幅に拡大。

 ようやくドラギ総裁が6月の緩和策を示唆したことで、今後はユーロ/米ドルやユーロクロスの動向に注目です。


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