■史上初のマイナス金利を予想するFRB理事まで!
こういった不安に拍車をかける要素は他にもある。FOMC(米連邦公開市場委員会)メンバーの金利見通しを示すドットチャートでは、何と史上初のマイナス金利予想が出たのだ!
マイナス金利予想をした某委員は「2016年年末までマイナス金利を実施する必要がある」と表明、マーケットに衝撃をもたらした。この某委員とはミネアポリス連銀総裁コチャラコタ氏と推測され、もうすぐ離任する方とはいえ、やはり史上初の出来事に皆が驚いている。
2016年年末までの政策金利見通しをマイナス金利にしてしまったと推測されるミネアポリス連銀総裁のコチャラコタ氏。そこまで米国経済は弱いということなのか…? 写真:ロイター/アフロ
まとめてみると、米2015年年内利上げといった観測は、なお支配的であるものの、10月ではなく、12月に後ズレする公算が高いだろう。
さらに、こういった観測自体もこれからの市況次第で流動的になり、金利先物市場の動向でみると、12月利上げの確率は、今回政策発表前の64%から47%へ低下しており、これからさらに低下していく可能性も大きい。
■QE再開観測を一蹴できない理由とは?
より過激な見方が、今回の政策決定前からウォール街にすでに出回っていたし、今回の決定を受け、さらにその声は強まっている。それは2015年年内利上げ見送りといった生ぬるいものでなく、金利正常化どころか、これからFRBが再度QE(量的緩和策)に踏み切るという主張だ。
当然のように、FRBが再度QEに踏み切らなければならないことは世界経済、金融の大混乱が一段と拡大していくシナリオが現実になるほかあるまい。
本コラムが提示していた7年サイクルで見る世界経済・金融クラッシュの可能性、そして来年(2016年)の「李万ショック」の可能性から考えると、米QE再開の観測は一蹴できるものではないのが怖いところだ。
【参考記事】
●2015年は中国で「李万姉妹」事件発生!?経済危機警戒、リスク資産から手を引け!(2015年8月21日、陳満咲杜)
●中国ショックはまだ序の口で来年が本番!? 米ドル/円の調整は1年近く続く可能性も!(2015年8月28日、陳満咲杜)
したがって、今回のFOMCは通過したものの、マーケットはますます不安定になり、相場の先行きも一層読みにくくなっていると言える。少なくとも短期スパンでは、リスクオフの値動きが強まると思われる。
■日銀追加緩和説も円買い相場を修正するには力不足
リスクオフになれば、まず浮かび上ってくるのが円買い。おそらく、それは当面において正解で、米ドル/円に限って言うと、じわじわと8月安値をもう1回打診する値動きになりそうだ。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)
この間、おそらく日銀追加緩和の話が出てくるので、波乱含みになりがちだろうが、米ドル安・円高のトレンドを修正するには力不足であろう。
何しろ、日銀追加緩和は早くても10月末にならないとわからない上、追加緩和予測自体、FRB利上げ観測よりだいぶ不確実な要素が多く、仮にできたとしても、米利上げを待たずに実行するのはハードルが高い。このあたりの話は、また次回に譲るが、当面、円高傾向を警戒しておいた方が無難であることは強調しておきたい。
■「ユーロ上昇=リスクオフ」という見方自体リスク大
ところで、米ドル安ならユーロ/米ドルの上昇を意味するものだから、悪材料に満ち、かつ量的緩和姿勢を維持するECB(欧州中央銀行)からすると、ユーロの上昇はリスクオフによる買い戻しだと片づけられやすいが、FRBのスタンスが微妙にずれてきた現状では、こういった安易な見方自体もリスクが大きい。
前回のコラムでも指摘したように、ユーロ高を単純にリスクオフによる値動きと帰結することには落とし穴がある。それがどんなものかはこれからの値動きによって一段と証左されるはずだから、より鮮明化してから、詳しく解説したい。
【参考記事】
●来週にも日銀追加緩和という説まで浮上!進むも地獄、退くも地獄の黒田日銀総裁(2015年9月11日、陳満咲杜)
ただし、2015年年内の市況は結構流動的なので、リスクオフがこれからさらに拡大し、たちまち大きなクラッシュを迎えないとも限らない。
今回のFOMCを受けたリスクオフがいったん収まれば、また保ち合い相場に入りやすいだろう。次の本格的な危機が到来するまで、相場の神様が再度ご慈悲をくださるだろう。やはり無体なことをしてはいけない。市況はいかに。
(PM2:30執筆)
※来週9月25日(金)は海外出張のため、コラムを1回お休みさせていただきます。
株主:株式会社ダイヤモンド社(100%)
加入協会:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)