(「『東大院生が考えたスマートフォンFX』の著者が語ったFXで勝つための2つの武器」からつづく)
FXトレードで旅費を稼ぎながらアメリカ横断旅行
「ルールをひとつだけ、『旅費はトレードで稼ぐこと』。そう決めて、トレーダー仲間たちとアメリカの横断旅行をしてきたんです」
そう切り出した田畑昇人さん。その結果が気になるところだが――。
「10日間くらいの旅行だったんですが、トレードで100万円以上稼げました。旅費には十分かな、と。いちばんうまくいったのは最後、目的地だったニューヨークでのトレードですね。10月7日(水)、日銀会合のある日だったんですが、『時間』を参考にしてトレードしたんです」
アメリカ横断をしながらFXトレードで100万円以上の利益を出して旅費を稼いでいた田畑さん。ニューヨークでのトレードがいちばんうまくいったそうだ。これはカッコよすぎる!
過去の日銀会合、発表時間には傾向がある
ここで田畑さんが使ったのは、前回紹介したのとは違う時間の活用法。日銀の金融政策発表時間を利用したトレードだ。
【参考記事】
●『東大院生が考えたスマートフォンFX』の著者が語ったFXで勝つための2つの武器
FRB(米連邦準備制度理事会)やECB(欧州中央銀行)と違って、日銀の政策発表は時間が厳密には決まっていない。
日銀会合が終了次第の発表だから、正午を過ぎると今か今かとみんな発表を待ち構えてそわそわする。
うっかりランチにでも出ようものなら、その間に発表されちゃうかもしれないのだ。時間を決めてくれたほうが、みんなハッピーになる気もするのだが。
「ところが、発表時間が未定であることを逆にトレードに使うことができるんです。過去の日銀会合の発表時間を見ると、政策変更があるときは13時を過ぎてから発表されることが多いんです」
マネックス証券のシニア・ストラテジスト山本雅文さんがまとめてくれた過去の発表時間のデータを見ると、政策変更があるときの発表時間は平均13時20分だ。
※4月と10月は1カ月のうちに日銀会合が2回行われるため、その第1回会合と第2回会合については別欄が設けられて、記載されている。
(出所:マネックス証券 シニア・ストラテジスト山本雅文氏作成のレポート「FX戦略デイリー 2015年9月15日号」より抜粋)
先回りして円買い、遅くとも13時までに手仕舞う
「10月の日銀会合での焦点は追加緩和があるかどうかでした。追加緩和があれば円安要因ですし、なければ円高要因。
だったら、先回りして事前に円を買っておけばいいんです。『追加緩和なし』と発表されて円高になれば、利食えますから」
もしも追加緩和があった場合は?
「もちろん損切りは入れておきますし、円安が進むとしたら追加緩和が発表された後=13時を過ぎてからですよね。だから13時までに発表がないときも手仕舞います」
日銀が金融政策を変更するときは発表時間が遅れることも頭に入れて、先回りしてポジションを持つという田畑さん。もちろん、損切りは入れておくそうだ
ニューヨーク大戸屋での日銀トレード
前回紹介したのとはまったく別視点による時間の活用方法だけど、理にかなっている。このやり方、10月30日(金)の日銀会合でも当てはまった。
【参考記事】
●『東大院生が考えたスマートフォンFX』の著者が語ったFXで勝つための2つの武器
「11時すぎに米ドル/円を売って、50銭下に利食い。損切りは15銭上に置いていましたし、時間でも『13時に損切り』と決めていました」
12時15分すぎに「政策変更なし」と発表されて、米ドル/円は急落。121.40円に置いていた利食いの指値が約定した。
【参考記事】
●黒田バズーカ3はまだ出ず。日銀追加緩和見送りで米ドル/円急落も短時間で反発!
(出所:DMM.com証券)
「いつまでも通用するやり方だとは思いませんが、今のところはうまくワークしています。
シンプルなやり方なので、スマホだけでもできますし。実際、ニューヨークでは大戸屋で食事しながらスマホでトレードしていました」
ニューヨークにもあるんだ、大戸屋……。
3通貨の力関係からトレードする通貨ペアを決める
時間の操り方で進化を見せる田畑さんだけど、OANDA(オアンダ)注文情報の活用方法もバージョンアップしている。
「複数の通貨ペアでトレードするときに効率がいいのは、いちばん歪みの大きな通貨ペアを取引すること。
英ポンド/米ドルで英ポンド高、米ドル/円では円高が進んでいるとき、英ポンド/円は値動きが出にくいですよね。両方とも買われている通貨だから…」
「英ポンド>米ドル」であり「円>米ドル」だったら、英ポンドも円も買われているから英ポンド/円をやらずに、両通貨に対して弱い米ドルを売ったほうが効率は良さそうってこと、理解できるはず。
「そのときに対円で売るか、対英ポンドで売るかは、英ポンド/円の値動き次第。
上がっていれば『英ポンド>円>米ドル』なのでいちばん強い通貨と最弱通貨のペア=英ポンド/米ドルの買いとなります。そうした力関係を注文情報から読み解くんです」
通貨間の力関係を重視しているという田畑さん。それも、OANDAの注文情報から読み解けるそうだ。ちなみにマイナー通貨ペアはノイズが増えるので建てるポジションを減らすんだとか…
そう言って田畑さんが示したのは、英ポンドと米ドル、ユーロによる3つの通貨ペアの注文情報だ。
3つの通貨ペアについて、OANDAの注文情報を読み解く
「これを見ると、ユーロ/米ドルは現在レートよりも少し下にストップがたまっています。前回説明したようにターゲットとされやすいので、値動きは下。『ユーロ<米ドル』だなと推測できます」
同じように英ポンド/米ドルを見ると、上に大きなストップがあった。「英ポンド>米ドル」となりそうなイメージだ。
(出所:OANDA Japan)
「この2つの注文情報から『英ポンド>米ドル>ユーロ』となりますから、いちばん強い英ポンドと最弱のユーロの通貨ペアで英ポンドを買っていくのが良いということになりますよね。
このときにユーロ/英ポンドの注文情報を見ると、下側に大きなストップがあるので、ここをターゲットにできます。
しかも、0.7350ポンドを超えたあたりには大きな指値売りがあり、レジスタンスとなってくれそうですから、『0.7350ポンド手前で売って、0.7280ポンドで利益確定』という戦略が立てられます」
(出所:OANDA Japan)
だったら、最初からユーロ/英ポンドの注文情報だけを見て判断しても良いのでは…という気もするが…。
「米ドル/円やユーロ/米ドルのような超メジャーな通貨ペアなら単体の注文情報だけを見てもトレードできると思いますが、少しマイナーな通貨ペアになると、ドルストレート(※)の動きに引っ張られることも多いんです」
(※編集部注:「ドルストレート」とは米ドルが絡んだ通貨ペアのこと)
買い手と売り手の優劣もヒントになる
また、注文情報の隣にあるポジション情報もヒントを与えてくれる。
「このときはユーロ/英ポンドの買いでつかまっている人が多かった。売り手優位な状況だったので、下がりそうだなと推測できるんです」
(出所:OANDA Japan)
このときのチャートが下記だ。レンジが続いたものの田畑さんが指摘していたように、大量の指値が入っていた0.7350ポンド付近がレジスタンスとなり、その後下落。逆指値のたまっていた0.7280ポンドに達して大きく下げていった。
(出所:DMM.com証券)
FXで勝ち続けるための2つのルール
「最近、もうひとつ変化したのはトレード枚数ですね。書籍ではレバレッジをフルに効かせたトレードを紹介していましたが、今はレバレッジを抑えています。
今はある程度資金も増えてきたので減らさないように、と」
書籍を執筆した当時はまだ資産を大きく増やす時期だったため、フルレバで積極的にリスクをとって大きな利益を狙っていた。
「それに。第1のルールは『お金を失わないこと』。第2のルールは『第1のルールを守ること』です(笑)」
「お金持ちになるための2つのルール」を学んだという田畑さん。そのルールは結局、どっちも「お金を失わないこと」だという。
これって「FXで勝ち続けるための2つのルール」でもあるかも。増やすことばかり考えて損切りが遅れて資金が全損、トレードを続けられなくなる人って多い。
でも、リスク管理をきちんと考えて、田畑さんのようにしっかりと「仮説→検証」を経たやり方を続けていけば、資金は増えていくはず。
「書籍を読んで成功した人から感想をもらうとうれしいですよね。僕の本を読んだ人が全員、FXで成功してくれればうれしいですけど、FXに向いていない人だっているわけで。
そんな人にも経済に興味を持ってくれるきっかけになればいいなって思います。あと『人生のやる気が出ました!』みたいなことを言われたりすることもあります(笑)」
「僕の本を読んだ人が全員FXで成功してくれればうれしい」という田畑さん。これからFXを始めようと思っている人もすでにトレードしている人も、田畑さんの本を参考にしてみてはどうだろう
田畑さんの書籍ってFXの指南書となっているだけでなく、モンスターハンターに明け暮れた落ちこぼれ大学生がFXと出会って変わっていく青春ストーリーでもあったりする。
「なんか最近やる気、でないなー」なんて人もぜひご一読あれ!
(取材・文/ミドルマン・高城泰 撮影/和田佳久)
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