■ユーロ/米ドルのパリティ達成はいつ?
米ドルの対極として位置づけされるユーロについては、ドルインデックスと反対の値動きを示すはずだ。したがって、ユーロ/米ドルはいったん2015年3月安値1.0462ドルを割り込むだろう。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 週足)
ただし、一気にパリティ(1ユーロ=1ドル)を達成できるかというと、ちょっと微妙だと思う。何しろ、ECB(欧州中央銀行)政策の先行きは不透明さが増しており、先日のドラギ・マジック不発もあって、単に政策格差のみの視点でユーロ売りは仕掛けにくくなっている。
その上、前述のように、米ドルサイドの最大材料、すなわち、現在想定されている利上げペースが、何らかの事情(チャイナリスクの可能性が一番大きい)によって、疑問視されると、一時的にせよ、米ドル売りが仕掛けられる可能性があるから、必然的にユーロが買われる余地がある。
よって、パリティの達成は、いったんリバウンドしたあとになるのではないだろうか。場合によっては来年(2016年)後半にならないと、なかなか現実味が増してこない可能性もある。
■米ドル/円は2015年6月高値を超えられない!?
では、肝心の米ドル/円はどうだろうか。
結論から申し上げると、黒田日銀総裁の「三度目の正直」(※)がある、ないにかかわらず、米ドル/円はなかなか2015年6月の高値を更新できない公算が大きく、来年(2016年)はチャイナリスクの高まりで、円が一番買われやすいのではないかとみる。
(※編集部注:「三度目の正直」とは、黒田日銀による三度目の量的緩和策実行のことを指す)
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 週足)
もっとも、2015年6月高値は、今まで日銀の量的緩和を織り込んできただけではなく、黒田さんの「三度目の正直」もだいぶ織り込んだ結果であった。日米金利差から見ると、仮に来年(2016年)米国の利上げが4回実施されても、2015年6月高値125.85円は正当化することができない。
換言すれば、今年(2015年)高値までの米ドル高・円安は、米ドル高サイクルに日銀量的緩和策を加え、めいっぱい買われてきた結果だから、これからの米ドル/円はドルインデックスに連動しにくく、場合によっては乖離した値動きになりやすい。
■米ドル/円の8年サイクルが示す米ドル高トレンドの終焉
米ドル/円における米ドル高サイクルについては、以下のチャートで示したとおりである。
(出所:CQG)
トップからトップを数えると、米ドル/円の8年サイクルは歴然としている。2007年6月にてこの前のトップをつけてから、2015年6月高値をもって米ドル高トレンドがいったん終了、といったシナリオの現実味が増している。
■2016年は2008年リーマンショックの市況を再現する公算大
歴史は常に繰り返されるのであれば、今年(2015年)のチャイナリスクが2007年のサブプライムローン問題に相当、来年(2016年)はこれが本格化し、「李万ショック」につながっていくことも十分想定されるはずだ。
当然のように、リーマンショック級の混乱があれば、円が買い戻され、一時的にせよ、米ドルよりもリスク回避先の役割をさらに強く果たすだろう。
この意味では、2016年の為替市場が2008年の市況を再現する公算が一番高いとみる。
「李万ショック」で米ドル全体が買われる一方、円が急上昇し、結果的にユーロ/円などクロス円の急落をもたらす。ファンダメンタルズにおけるキーワードは米利上げペースであるが、サイクル論におけるキーワードはやはり、危機の再来ではないか。しっかり警戒しておきたい。
■米ドル/円のターニングポイントはどこ?
では、米ドル/円はどこまで反落してくるだろうか。また、ブルトレンドが反転するポイントはどこにあるか。
市況は流動的(「李万ショック」の度合いや日銀、三度目の量的緩和の有無)だから、言いきれないところがあるが、反転のポイントは比較的わかりやすいだろう。ズバリ、2015年8月安値115.89円(FX会社によって多少数値が違ってくる)割れである。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 週足)
この安値が今年(2015年)のチャイナショックを受けてつけた安値だからというだけではなく、この安値を下回れば、高値から10円超の下落が初めて達成される公算が高まるからだ。
「初めて」とは、アベノミクスを打ち出して以来の市況を指しており、この間、1回も10円以上の下落幅を達したことがないから、達成された場合、やはり、円高局面へ大きくシフトしていくと覚悟しておきたい。
「李万ショック」の度合い次第で、米ドル/円の押し幅も違ってくるが、2011年10月安値(戦後最安値)を起点とした全上昇波の38.2%~50%程度の押しは106.68円~100.75円を示し、大まかな目安として注目される。ちなみに、100.75円は2014年安値でもあり、同安値へ「全戻し」の可能性も排除できない。
まとめてみると、来年(2016年)の見通しは、あまり楽観的なシナリオが描けない。あの「李万」の本拠地の情報を収集すべく、筆者は本日から現地へ行ってくる。新春に、またいろいろご報告できれば幸いである。それでは皆さん、メリークリスマス&良いお年を!
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