■2016年は米ドル高の基調が続く! ただし…
年末になったので、恒例の「来年(2016年)の展望」について話したいと思う。
まず米ドル全体の話だが、結論から申し上げると、やはり、米ドル高の基調がなお続くと思われる。その主な根拠はドルインデックスの長期チャートにある。
このチャートが示すとおりなら、今回位置する16~17年サイクルの始点は2011年5月なので(※)、6年間の上昇リズムが繰り返しされるなら、2017年半ばまで米ドル高基調が続く、という計算になる。
(※このチャートは月足終値を使って描いているので、少しずれて見えるが、最安値をつけたのは2011年5月である)
一方、米ドル高基調とはいえ、米ドルがガンガン高値をつけていくとは限らない。
ブル(上昇)にしても、ベア(下落)にしても、トレンドの進行は往々にして一直線に進まない場合が多く、また2014年5月から今月(2015年12月)高値まで、ドルインデックスはすでに27%超の上昇幅を達成しているから、米ドル高の進行は、強くても来年(2016年)いっぱいまで続くとは想定しにくい。
高値を更新してから上昇一服、場合によっては、大きく調整してから、またブルトレンドへ復帰、といった市況が想定される。
■米利上げ継続せず!? 中国発の「李万ショック」に備えよ!
ファンダメンタルズでは、最も気になるのが米利上げのペースであろう。コンセンサスの4回利上げが、どれくらい現在のレートに織り込まれているかが1つの焦点であり、もう1つ、米利上げが本当に来年(2016年)継続されていくか、という問題もある。
何しろ、米利上げを疑問視する声がウォール街でも根強い。周知のとおり、今年(2015年)はチャイナリスクでFRB(米連邦準備制度理事会)がいったん利上げを見送った経緯がある。
換言すれば、米利上げサイクルの進行に、来年(2016年)のどこかで狂いが生じるとすれば、やはり、他ならぬチャイナリスクの鮮明化が一番の原因になり得る。来年(2016年)も中国事情に振り回される恐れが大きいかと思う。
もっとも、今年(2015年)は2007年に似ているかと思う。
2007年にサブプライムローンの問題が浮上し、翌年(2008年)、リーマンショックをもたらした。同じように、今年(2015年)の中国株、人民元の波乱はまだ序の口で、来年(2016年)こそ、中国発の「李万ショック」に備えるべきだ。詳細は以前、本コラムにて述べているので、ここでは繰り返さないが、現実味の高いシナリオとして意識しておきたい。
【参考記事】
●2015年は中国で「李万姉妹」事件発生!?経済危機警戒、リスク資産から手を引け!(2015年8月21日、陳満咲杜)
●中国ショックはまだ序の口で来年が本番!? 米ドル/円の調整は1年近く続く可能性も!(2015年8月28日、陳満咲杜)
となると、米利上げの進展も一本調子に進まない公算が高いから、来年(2016年)のキーワード、すなわち、「利上げの米ドル高」が崩れやすいリスクがある。
■リスクオフが進めば、結局、米ドル高基調が維持される
一方、リスクオフの進行が深ければ深いほど、逆に究極のリスク回避先として米ドルの選好度が高まるから、結局、米ドル高基調が維持される、といったシナリオが、もっとも可能性が高いでのはないかと思う。
なぜなら、チャイナリスクが高まりにつれ、新興国通貨や資源国通貨から米ドルへの資金シフトが容易に想定されるうえ、従来からのユーロのリスク回避先としての地位が、QE(量的緩和)政策の余地や地政学リスクによって、消滅した影響が大きい。
リーマンショックにしろ、「李万ショック」にしろ、有事の米ドル高という定律が変わらない以上、大きなトレンドとしての米ドル高が定着しやすいと思う。
ゆえに、来年春ごろまで米ドル高が続き、ドルインデックスの高値更新後、中国次第で波乱となってくる可能性が大きい。
そして、チャイナリスクで世界の金融市場の混乱や不安が広がっていくと、市場関係者はまず米利上げシナリオの狂いを連想し、米ドル売りを仕掛けてくるが、混乱の度合いが深まっていくと、今度は米ドルの買戻しに動く。こういった市場心理が働けば、夏場まで米ドル売り、秋口まで米ドルが買われる、といった大まかな推測が得られる。
ドルインデックスが102~103の水準に到達すれば、一応、要注意だと思う。
(出所:CQG)
米ドルの対極として位置づけされるユーロについては…
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