■米ドル/円は本邦当局が死守したかった115円割れ
この米ドル安の流れの中、本邦当局が死守しようとしていた米ドル/円の115円をあっさりと割り込む展開。
黒田総裁はG7との連携も強力で、米ドル/円の115円死守には何らかの対策が用意されていると想定していた海外勢も、米ドル/円が116.00円を割り込んでも当局からなんの対策も出てこないことから、再び2016年年初からのリスクオフシナリオにスタンスを戻します。
結果、マジノ線(※)であった米ドル/円の115円を割り込むと、米ドル売りが一気に加速。以前もご紹介させていただいたとおり、今年(2016年)の米ドル/円のターゲットとしていた110円台に一気に到達。
(※編集部注:「マジノ線」とは第二次世界大戦前にフランスがドイツとの国境に築いた難攻不落と言われた要塞のこと)
【参考記事】
●2016年のドル/円は110円程度まで下落も。Brexit巡る国民投票に向け英ポンドは…!?(西原宏一&松崎美子)
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)
■米ドル/円の115円割れで本邦当局も対応に追われる
本邦当局も、「マイナス金利導入」で米ドル/円は当面115円台を割り込むことはないと想定していたようで、今週(2月8日~)の急激な円高に対して、対応に追われている模様。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)
2月11日(木)に米ドル/円が一時、110円台に突入すると、「介入」の可能性を示唆するコメントが多数出されています。
麻生財務相 円高の動きけん制
麻生副総理兼財務大臣は外国為替市場で円高ドル安が急激に進んでいることについて閣議の後の記者会見で「かなり荒い値動きがみられる」としたうえで「必要に応じて適切に対応していく」と述べ、円高の動きをけん制。
出所:NHK
しかし、現状の米ドル/円のレベルで、口先ではなく、「単独介入」を実行できるのかは疑問視されています。
最近の米企業の不振は、長期に渡って継続している「米ドル高」が要因のひとつとして挙げられているため、「米ドル高」を誘引する「単独介入」を実施するのは、米国の動意を得るのが困難な状況。
そもそも「単独介入」は基本的には一時的な措置に過ぎません。
マーケットでは、2月26日(金)~27日(土)に予定されている上海でのG20(20カ国・地域財務相・中央銀行総裁会議)で、何らかの「株価対策」が取られるとの期待もあります。
ただ、米ドル/円の重要なサポートであった115円を割り込んだことに加え、対ユーロでも米ドル安が進行していることから、米ドル/円のみ再び米ドル高トレンドに戻すのは困難な状態。
■アベノミクス行き詰まりで、米ドル/円は105円台も視野
先ほども紹介しましたが、米ドル/円の110円は、今年(2016年)のターゲットでもあり、当面サポートされると想定されますが、ヘッドアンドショルダーのネックラインであった115円を割り込んだことから、値幅的には105円台まで米ドル/円が下落する公算が高まっています。
【参考記事】
●2016年のドル/円は110円程度まで下落も。Brexit巡る国民投票に向け英ポンドは…!?(西原宏一&松崎美子)
(出所:CQG)
さらに海外では、黒田日銀の孤軍奮闘だけでは、アベノミクスを支えるのが難しい局面に入ったとの報道が目立つようになってきました。
アベノミクス、行き詰まりへの道
安倍首相が就任した12年12月、株式・不動産バブルの崩壊から20年以上が経過した日本は、精彩を欠きつつも安定期に入っていた。経済は低成長で高齢化が急速に進んでいたが、少なくとも都市部では衰退の兆候などほとんど目につかず、社会は依然として安全だった。
だが、安倍首相はそれでは不十分だとの認識を示した。金融緩和と財政出動、構造改革の「3本の矢」で経済再生を図り、物価・賃金を再度押し上げると公約した。
3本のうち即効性が期待できるのは第一の矢だけだ。第二の矢である財政出動は財務省の圧力を受け間もなく頓挫した。第三の矢に盛り込まれた女性の雇用推進などの構造改革は、短期的効果を意図したものではなく、また、首相は外国人労働者への門戸開放といったより積極的な措置を真剣に検討することもなかった。
このため全ての期待は、首相自らが指名した日銀の黒田東彦総裁に肩にかかることとなった。黒田総裁は大量の資金供給によって円安を誘導し、企業収益の大幅拡大を支えた。今月の講演では「追加緩和の手段に限りはない」とし、2%の物価上昇目標を達成する意気込みを示した。
ただ、黒田総裁が企業に対し、収益を賃上げや新技術への投資に回すよう強いることなどできない。また、円安でアジアからの観光客は増えたが、総裁が国内の消費者を小売店に向かわせ、より多くの物を買わせることができるわけでもない。
出所 Wall Street Journal
アベノミクス自体の行き詰まりも指摘される中、さらなる円高に警戒です。
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