■保ち合いの米ドル/円は強気・弱気両方の解釈がなされる
同じ視点で米ドル/円を見てみよう。
米ドル/円は安値圏で保ち合いに推移しているので、強気(米ドル高・円安)、弱気(米ドル安・円高)の両方の解釈がなされる。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)
強気に解釈する場合は、本年(2016年)の米早期利上げや日銀のマイナス金利拡大の余地が持ち出されるが、同じ材料でも弱気の方にも解釈できる。
この場合、「米早期利上げは世界景気に大打撃を与えるから円高をもたらす」とか、「日銀のマイナス金利拡大があっても前回と同様、かえって円の急伸につながる」といった具合だ。
どちらが真実かは、相場の反応を見ないと検証できないので、結局、相場次第ということになる。
■チャート上のサインは思惑の集大成なので信憑性が高い
ここで大事なのは、チャート上のサインをどう見るべきかであり、また、チャートのサインをもって判断すべきだ、ということだ。
なぜなら、チャートはウソをつかないし、いろいろな材料や材料に対する思惑を織り込んできた集大成なので、信憑性が高いからだ。
米ドル/円の日足を見てみよう。
下のチャートはGMMAチャートだが、短期線(ブルー)と長期線(ピンク)の位置関係を見ればわかるように、目下はベア(下落)トレンドの途中。足元の保ち合いはベアトレンド途中のスピード調整にすぎず、これから頭が重くなることが示唆されている。
(出所:アイネット証券)
要するに、マーケットにおける材料はいろいろとあり、また、その解釈もいろいろあるが、チャートは円安の根拠を示していない上、円高途中のスピード調整はむしろ円買いの好機であることを示唆してくれている。
だから、材料が円安に解釈され、相場が一時、スピード修正に動く場合は逆に円買いの好機となり、また円高になれば、同じ材料でも円買いと解釈されるはずであるから、トレンドに沿ったトレードには安定感がある。
さらに、プライスアクションの視点では、いろいろなサインが見られ、円高トレンドの不変が示唆される。
まず、2015年12月18日(金)のチャートにおける「フェイク セットアップ」のサインが強烈な売りを示唆していた。
【フェイク セットアップの参考記事】
●「■フェイク セットアップとは?」 (「ユーロのトップアウトがもたらす全面円高。杞憂ではなく相場の「天」は時に落ちる!」(2015年5月9日、陳満咲杜)より)
そして、途中のスピード調整が1月29日(金)の日銀のマイナス金利付きQQE(量的・質的緩和策)の発表でオーバーになったものの、ここで日足の組み合わせではいわゆる「宵の明星」を点灯。
両サインが連続して出たことにより、しばらく円高トレンドが維持される、と相場は語っている。
【参考記事】
●ソロスが“孫子の兵法”で中国政府を翻弄? マイナス金利導入でも昨年以上の円安なし(2016年1月29日、陳満咲杜)
(出所:アイネット証券)
したがって、今晩(3月4日)の米雇用統計が良かったとしても、また、米3月利上げがあったとしても、さらには日銀のマイナス金利拡大があったとしても、円高トレンドは容易に修正はされないだろう。
途中のスピード調整は、振れ幅が大きいかもしれないが、トレンドの修正をもたらさないなら、円安へ振れることがあれば、それは結局、円買いの好機を提供してくれることになる。
2015年8月安値115.90円割れをもって、日足における「ヘッド&ショルダーズ(※)」というフォーメーション成立をもたらし、そのターゲットである105~106円台へ進むトレンドは不変、という見方を維持しておきたい。
(※編集部注:「ヘッド&ショルダーズ」はチャートのパターンの1つで、天井を示す典型的な形とされている。人の頭と両肩に見えるため「ヘッド&ショルダー」と呼ばれていて、仏像が3体並んでいるように見えるために「三尊型」と呼ぶこともある)
■日銀のマイナス金利政策が長く続かない理由とは?
最後に、日銀のマイナス金利政策は長く続かないことを指摘しておきたい。実際、金利差では説明できない足元の米ドル/円の水準は、マーケットが日銀政策の継続性に疑問を呈しているというほかあるまい。
さらに、高齢化が進む日本では、マイナス金利がもたらすデメリットが大きい。現金を自宅保有するための金庫がよく売れているといった話があることからもわかるように、いずれ国民の大半がアベノミクスと日銀政策を支持しなくなるだろう。
2018年まで安倍さんや黒田さんの任期は残っているが、果たして最後の花道を飾れるかどうか、疑問だ。
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