■RBAの警告どおり、豪ドルは下落開始
一方、今月(5月)に入って下げ足を速めて来たのが豪ドル。
このコラムで何度かご紹介してきたとおり、RBA(オーストラリア準備銀行[豪州の中央銀行])が何度か警告(豪ドル高をけん制したコメント)したマーケット環境下では時間を置いて、豪ドルは急落するという傾向がありますが、今回もまさにそれが再現された展開になっています。
【参考記事】
●イースターに向けて調整相場入り。通貨高牽制など売り材料多い豪ドルは急落警戒!(3月24日、西原宏一)
豪ドル/米ドルが0.7000ドル台レベルを割り込むようなマーケット環境下でのRBAのコメントは、「金融政策は適切」といったものでした。
その後、鉄鉱石価格の上昇とともに豪ドル/米ドルが0.7500ドルを超えたあたりでは、RBAからの通貨高(豪ドル高)けん制コメントが増えてきます。
最後はRBAのスティーブンス総裁が通貨高けん制コメントをしたものの、豪ドル/米ドルの上昇は止まらず、一時0.7835ドルまで駆け上がります。
(出所:CQG)
オーストラリアの銀行の友人によれば、この局面ではまだRBAが利下げをすることを決断していなかったとのこと。
なぜなら、FRB(米連邦準備制度理事会)の利上げが迫っていたからです。
ところが上海合意のもと、「FRBは利上げを急がない」という流れの中、米国の利上げはどんどん後ずれしています。
鉄鉱石価格も反落に転じる中、5月3日(火)に、他の中央銀行の決定を待たず、RBAは通貨高抑制を主とした利下げを決定します。
(出所:CQG)
この決定により、豪ドル/米ドルは急落し、あっという間に0.7300ドルまでの下落を演じています。
(出所:CQG)
ここまでは、RBAがけん制コメントを繰り返した局面での豪ドル/米ドルの通常の流れとも言えます。
ところが今週(5月9日~)に入って、RBAのさらなる利下げを予想する銀行が増えてきており、豪ドル/米ドルが続落する可能性が高まってきました。
まず、5月11日(水)には米大手銀行がRBAのさらなる利下げを予測。
その内容は「RBAは年内1.500%まで政策金利を下げる」、というものでした。加えて、来年、2017年には1.00%まで連続利下げをするのではないかというのです。
そして、他の欧州系銀行が、RBAは他の中央銀行同様に「ゼロ金利への道を歩み始めたのではないか?」とのレポートまで出す状態。
他の中央銀行の動向にもよりますが、RBAが実際、1.00%へ政策金利を下げると仮定すれば、豪ドル/米ドルは0.65ドル方向へ続落する可能性が高まります。
(出所:CQG)
■豪ドル安進行で、ユーロ/豪ドルに妙味
そして、この中で注目されるのは豪ドル/米ドルよりも、豪ドルクロス(豪ドルと米ドル以外の通貨との通貨ペア)。
過去数年に渡り、米ドル/円やユーロ/米ドルでは、日銀やECB(欧州中央銀行)が緩和合戦を繰り広げ、通貨安が進んでいましたが、このところ、中央銀行の緩和策が功を奏せず、円やユーロに対し、徐々に米ドル安が進んでいます。
米ドル/円やユーロ/米ドルが米ドル安に傾く中、豪ドル/米ドルが「豪ドル安・米ドル高」に進むのであれば、豪ドル/円やユーロ/豪ドルでの豪ドル安の進行のほうがトレード妙味があると言えます。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/豪ドル 日足)
鉄鉱石価格が反落する中、RBAによる連続利下げがウワサされる豪ドル/米ドルの下落余地は拡大。
豪ドル/米ドルはもちろん、豪ドル/円やユーロ/豪ドルといった豪ドルクロスでの豪ドル安の動向に注目です。
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