■Brexit後、確実なのは「不確実性が高まっていること」
英EU(欧州連合)離脱を国民投票で決定したものの、英国内においても、国際社会においても混乱が続く。
が、1つだけはっきりしていることがある。それはほかならぬ、不確実性がこれまでになく高まっていること、そして、これから連鎖反応が引き起こされることだ。
こういったポイントを押さえれば、Brexit(英国のEU離脱)後の世界を予想するのもそう難しくないかと思う。筆者は6月26日(日)に、以下の文章をもって同予想を試みた。
■Brixit後の相場
英EU離脱を受け、金曜(24日)世界金融市場が大揺れした。日経平均の急落、世界主要国においてワーストNo1になったことも別にサプライズではなかった、何しろ円の急伸、特に対ポンドの急伸が凄まじかったからだ。いつものように、日本株が衝撃に一番弱く、円がリスク回避先として「過剰」に反応しがちで、今回も然りだ。
これからの相場、はっきり申し上げられるところがあれば、それは誰も正確に予想できないこと、この一点である。なぜなら、変動要素が多すぎるからだ。EU圏の問題で2008年リーマンショック時の性質と違うといった論点もあるが、賛成できないところがある。要するに、英EU離脱自体よりもその連鎖反応のほうが怖いわけだ。
ひとつはEU全体の存続が疑問視され、リスクオフの流れが地政学の次元に発展する恐れがある。この場合、ポンド建て、ユーロ建ての株式はもちろん、債券マーケットの崩壊もあり得る。根本的なところ、流動性がなくなるリスクが大きいから、EU発の景気後退、深刻化されていく可能性がある。実際、ドイツ銀行がすでに破産寸前と言われ、EU全域銀行株の暴落がその危険性を暗示していると思われる。
次は昨年から所謂チャイナリスクが警戒されてきた。ロンドンは人民元国際化の先陣として布局されてきただけに、EUの離脱が中国にとっても大きな打撃だ。英国をかけ橋とし、EUに投資する中国企業が多かっただけに、今回のEU離脱、このままチャイナリスクを増大させる一因としても無視できない。EUの混乱に中国を加えれば、米も独善的になれない。ウォール街は早くも7月FRB利下げが噂される。
となると、円が引き続き買われやすく、また日本株も更なる下落の余地を拓くでしょう。2008年リーマンショックより今回円高が「行き過ぎ」だといったテクニカル的な視点を無視できないが、確信を持てない。EUの混乱にしても、中国のクラッシュにしても、これからであれば、警戒しておいたほうが無難だ。
肝心のポンド、メリルリンチさんの指摘では、第2四半期の終値が1.4以下に沈む場合、今後数年ポンドが売られる運命にあるという。現在のレートを鑑み、むしろ1.4以上にキープするのが難しいかと思われる。従って、ポンド/円において、早ければ年内でも史上最安値(つまり対ポンド、円が史上最高値)を記録する、といった可能性を念頭におきたい。ちなみに、ポンド/円の史上最安値は2011年9月の116.76である。英国旅行でもいかがでしょうか、奥様。
■ドイツ銀行は「リーマンブラザーズの二の舞」?
実際、先週日曜日(6月26日)に予想した問題が、今週(6月27日~)に入って次々と鮮明化してきた。まず、ドイツ銀行の問題だ。ソロス氏が空売りを仕掛けていたとされるこの銀行、株価がどんどん下がっていき、にわか「リーマンショック前夜」の様相を呈している。
(出所:CQG)
ドイツ銀行が抱える最大の問題は過剰なレバレッジだとされ、あのリーマンブラザーズ破綻前の状況と似かよってきた。
また、資産を売却しようとしても、信用市場の流動性が低下しているためうまくいかない。一段の資金調達なしでは難局を乗り切れず、また、それによって一段と難局に陥るといった悪循環にさらされるから、ドイツ銀行はあのリーマンブラザーズの二の舞かとささやかされ始めている。
より深刻なのは、今回、英EU離脱がもたらしたリスクオフの流れで、EU全域の銀行株が売られ、ドイツ銀行の問題が氷山の一角と言われることだ。こうなると、仮にドイツ銀行が破綻した場合、その連鎖的インパクトは計り知れず、EU全域の信用市場に破滅的な結果をもたらす恐れが決して低くはないとみる。EU版リーマンショックの再来が危惧される。
■政治面はもっと混乱! EU解体の危機も
もちろん、これから想定される混乱は、経済面よりも、政治面においてより大きいだろう。
スコットランドのEU残留表明は、事実上の独立宣言に近く、オランダやイタリアのEU離脱がささやかれることもEU解体の危機を露呈している。こういった経済、政治の両面においての混乱や危機を回避していくのは決してたやすいことではなく、仮に成功するとしても、かなり時間がかかるだろう。
■中国人民元安、第二幕開幕!?
もう1つ的中したのが、中国人民元の問題だ。
昨日(6月30日)、ロイターが、中国人民銀行(中央銀行)が中国人民元を6.8人民元まで安くするよう、誘導する用意があると報道。この報道により、オフショア市場における中国人民元は10分間で400pipsも急落した。
(出所:CQG)
その後、中国人民銀行はすぐ否定する声明を発表したが、経験上、中国人民銀行がすばやく反応すればするほど、情報はホンモノである可能性が高いから、いよいよ中国人民元安の第二幕が開き始めたとみるほうがよいだろう。
要するに、2016年は波乱の年で、7年サイクルごとに発生する世界景気後退の現実味が英EU離脱によって一段と高まってきたわけだ。
このような本格的な景気後退があれば、米利上げどころか利下げもあり得るうえ、日銀がいくら量的緩和やマイナス金利を拡大しても焼け石に水、失敗に終わるだろう。
その上、アベノミクスの失敗が一段と証左され、その反動はまだまだ続く。すでにそれが今までの株価と円相場に織り込まれていると考えるのは甘すぎるだろう。
■英ポンドは戦後最安値更新が視野に!
肝心の英ポンド/円はというと、逆張りのミセス・ワタナベたちは、あの2008年のように再度やられるリスクが大きいだろう。なぜなら、英国の量的緩和がすでに規定路線として浮上している以上、英ポンド安の進行は避けられず、戦後最安値の更新が視野に入っているからだ。
(出所:CQG)
詳細はまた次回。
執筆者の都合により、7月8日(金)は記事公開を1回お休みさせていただきます。次回の記事公開は7月15日(金)を予定しています(ザイFX!編集部)。
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