2016年7月29日(金)、日本銀行(以下、日銀)は金融政策決定会合で、追加緩和を決定。この発表を受け、為替も株も大きく動いている。
日銀がETF買い入れ枠を6兆円に増額
今回、日銀が決定した追加緩和策のメインは、ETF買い入れ枠を現在の年間3.3兆円からほぼ倍増となる、総額6兆円にするというもの。国債買い入れ額の増額やマイナス金利幅の拡大は行わなかった。
日銀が今回実施した追加緩和策は以下のとおり。
(1)ETF買い入れ額の増額
(2)企業・金融機関の外貨資金調達環境の安定のための措置
・成長支援資金供給・米ドル特則の拡大
・米ドル資金供給オペの担保となる国債の貸付け制度の新設
なお、日銀の重要な意思決定は、総裁、副総裁2名、そして審議委員6名の合計9名による多数決で行われるが、今回の追加緩和の(1)については、賛成7人、反対2人、(2)は全員一致での決定だった。
日銀の追加緩和決定までの動きを振り返ると…
今回の日銀金融政策決定会合までの動きを簡単に振り返ると、まず、バーナンキ前FRB議長の訪日を受けて、ヘリコプターマネー(ヘリマネ)観測が急浮上。
ところが、黒田総裁がBBCのインタビューで「ヘリマネは必要ないし、可能性もない」とはっきり発言したこともあって、ヘリマネへの期待感は後退した。
西原宏一さんは、このヘリマネに関連した動きについて、「事前に肯定するはずがないというのは普通に考えればわかること」だと指摘していた。
【参考記事】
●米ドル/円は日銀追加緩和あれば108円、なければ103円。反騰しそうな原油は買い(7月26日、西原宏一&大橋ひろこ)
その後、政府が50年国債を発行し、それをまた日銀が買い取るといった政策を検討していると報じられたこと、そして、安倍首相が28兆円規模の経済対策を発表し、これに合わせて日銀も追加緩和を実施するのでは…との見方が広がっていった。
これについて今井雅人さんは、「今週は、確認がとれないヘッドラインなどに振り回される相場展開」と指摘した上で、「日銀からの正式な政策決定を待つしかない」との冷静な見方をしていた。
【参考記事】
●一般的に日銀の決定は事前に漏れない。追加緩和あっても効果持続は難しいとみる(7月26日、今井雅人)
それでも、日銀金融政策決定会合が迫るにつれて、市場関係者の間には、追加緩和の有無もさることながら、追加緩和実施を前提に、その内容がどうなるかという点に注目が集まっていった。
日銀の追加緩和発表後は大荒れの相場に
米ドル/円は流動性が急激に低下する中、日銀の発表前から大きく振れ、103.40円台から104.90円台を短時間で上下するかなり荒れた動きに。
その後、104円台半ばで日銀から追加緩和実施が公表されると、一瞬で、105.80円近辺まで急上昇。ところが、その後はすぐに急反落し、102円台後半まで下落した。その後は反発して、103円台後半まで一時、回復。14時現在は103円台前半で推移している。
(出所:CQG)
そして、円全面安となる中で、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)も急騰したが、その後は急反落してから上昇するといったように、上下に大きく振れる動きとなった。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 5分足)
さらに日経平均は、日銀会合の結果公表後、一時、1万6680円近辺まで上昇。ところがその後は、1万6170円台まで急反落したあとに、また反発するなど、こちらもかなり荒れた動きとなっている。
(出所:株マップ.com)
先ほど紹介したコラムの中で今井さんは「どのような政策が決定されようが、持続は難しいのではないかと思っている」との見方を示していたが、日銀の発表からここまでは、いったんそのような動きになっている。
【参考記事】
●一般的に日銀の決定は事前に漏れない。追加緩和あっても効果持続は難しいとみる(7月26日、今井雅人)
このあと、15時30分からは黒田総裁の記者会見が予定されている。欧州時間に入った直後ということもあって、内容次第では相場が再び荒れる可能性もあるので注目したい。
今回の日銀からの発表内容には、黒田総裁のもとで実施されてきた金融緩和策の総括的な検証を次回会合で行うことも含まれており、本日(7月29日)の黒田総裁の会見で、この点について何か説明があるかどうかについても注目される。
なお、今回の日銀の追加緩和決定でかなり大きな動きを見せた米ドル/円だが、FX会社の中では、スプレッド0.3銭程度で取引できる口座も非常に増えている。最新の米ドル/円スプレッドは以下の比較コンテンツでチェックしていただきたい。
【参考コンテンツ】
●FX会社おすすめ比較:取引コストで比べる「米ドル/円スプレッドの狭い順」
(ザイFX!編集部・庄司正高)
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