■ソフトバンクの買収、やはりインパクトは大
今週(7月25日~)は27日(水)の深夜にFOMC(米連邦公開市場委員会)、29日(金)には日銀金融政策決定会合ですね。
先週、7月21日(木)は、BBCで「ヘリコプターマネーは必要性も可能性もない」と否定した黒田総裁のインタビューが流れて円高の進む場面がありました。ただ、あれは6月のインタビューだったようですね。
ヘリマネについて事前に肯定するはずがないというのは普通に考えればわかること。
とはいえ、安値99.02円から107円台ミドルまで米ドル/円がすでに8円も急騰していたところなので、日銀会合前の調整のきっかけになったと言えます。
(出所:CQG)
ただ、米ドル/円が底堅いのはヘリマネ期待もありますが、それ以上にソフトバンクのARM買収が支えているのでしょう。
【参考記事】
●孫社長の3.3兆円買収でトレンドが反転!? 米ドル/円は日銀会合に向けて110円へ(7月21日、西原宏一)
買収総額3.3兆円と金額は大きいですが、買われるのは英ポンドですよね。それが米ドル/円の押し上げになるんですか?
対英ポンドではあっても、3.3兆円の円売りがマーケットに投下されると、米ドル/円でも円買い方向には動きにくい。
2012年にスプリントを買収したときは完了までに9カ月かかりましたが、今回は9月末までに完了予定。期間が短い分、インパクトも大きくなっているのでしょう。
しかも今回は1ドル100円割れを試そうかという場面でのカウンターパンチでしたから、よりインパクトがある。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足)
ソフトバンクのM&Aという需給が後押しする形での円安は、1ドル80円台だったスプリント買収時を彷彿とさせますね。その後、金融緩和策がドンと出て、大きく円安が進行しました。
現在は「アベノミクスの初動に似ている」とする声は専門家の間でも少しずつ増えているようですね。
【参考記事】
●孫社長の3.3兆円買収でトレンドが反転!? 米ドル/円は日銀会合に向けて110円へ(7月21日、西原宏一)
(出所:CQG)
中期の円高の流れがソフトバンクの巨大な円売りによって変わったとはまだ判断できませんが、いったんは100円でボトムアウトしたかなと思います。
(出所:CQG)
■米国株高が円安を後押しする
今年(2016年)は1ドル120円から100円まで20円落ちていますから、下を攻めるよりも上を狙うほうが妙味ありでしょうか。あとはFOMC、日銀次第かと思いますが…。
FOMCは声明文で景気判断を上方修正して、小幅米ドル高要因になるのでは…というのがコンセンサス。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 1時間足)
いずれにせよ、直後に日銀会合を控えているため、大きな動きは出づらいでしょう。日銀は追加緩和があれば108円、なければ103円。
(出所:CQG)
ヘリマネについては黒田さんが記者会見で「議論があった」程度にコメントをするだけでも米ドル/円は急騰するでしょう。その程度のコメントも現実にはないとは思いますが…。
FOMCが少しでもハト派的になると、株式市場にはプラスですね。過剰流動性が株式市場に流れて、米ドル/円の押し上げ材料になる。
あとはヨーロッパでのテロ。週末、7月22日(金)にもミュンヘンで悲惨なテロが起きましたが、テロのたびにユーロがジリ安となり、一方で米ドルが買われています。
不謹慎な話ではありますが、ヨーロッパのテロが米ドル高を招いている面もあります。
NYダウもS&P500も史上最高値を更新する中、米ドル/円が下落するというのはちょっと考えづらいですね。
(出所:CQG)
(出所:CQG)
(出所:CQG)
株高の一方、蚊帳の外におかれているのがコモディティ。
原油は西原さんも言っていたとおり、52ドル台を天井に44ドル近辺まで調整していますが、そろそろコモディティの反騰がありそう。
(出所:CQG)
もう一段の下落を見込む声がコンセンサスになってきただけに、逆にここで落ち切らないと上がりそうな気配もあります。そのとき、米国株は多少調整するのかもしれませんが…。
米ドルがじり高となっているだけに今週、7月27日(水)のFOMCでハト派的な声明が出れば、米ドル安となってコモディティが一転上昇するかもしれません。
イベントで原油の下げる場面があれば買いたいと思っています。コモディティはダメだと思わないほうがいい。
■Brexitはアメリカにショックを与えず
英国のEU(欧州連合)離脱は、著名な政治学者のイアン・ブレマーが「今年の重大なリスクのひとつ」と年初に予想していて、それが現実になりました。
【参考記事】
●今年の10大リスクが早速炸裂!? 中国株暴落、中東大荒れ、2016年相場は波乱の幕開け(1月5日、西原宏一&松崎美子)
日本では円高・株安となったため、ショックのように感じますが、米国株は史上最高値を更新。Brexit(英国のEU離脱)のリスクを警戒していた投資家があわてて買っているため、上がってきているのでしょう。
アメリカの株式市場から見れば「Brexit? だから?」という世界です。リーマンショックのようなことにはならず、孫正義さんのような人から見れば、結果的に絶好の買い場となりました。
孫さんはディールが上手ですね。円は孫さんやヘリマネ期待で売られやすく、コモディティが上がるとすれば、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)、資源国通貨の買いもおもしろいかも。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 日足)
日銀次第ではありますが追加緩和がなく、落ちる場面があれば拾っていきたいですね。何もなければ1ドル102円、103円程度までの押し目はあるかもしれません。
(構成/ミドルマン・高城泰)
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