■「普通」の日銀会合の背景に、何が?
海外出張の間に日米金利決定があり、とりわけ日銀の政策決定が注目された。いわゆる「新QQE(量的・質的緩和策)」については賛否両論となっているが、日銀が「量」から「質」へ舵取りを取った、といった見方が共有されているようだ。
具体的な政策の中身やそれに関する解釈はエコノミストにお任せしたいが、為替市場に対する影響については、円安方向にもっていかれなかったことが観察された。一方、2016年1月末の日銀会合後のような急激な円高にもつながっていないから、「普通」の日銀会合であった、といった印象が強い。
(出所:CQG)
その背景には、やはり「黒田路線」の修正があったのではないだろうか。「戦力の逐次投入はしない」や「2年2%の目標達成」と公言してきた黒田日銀総裁が、ここに来て「長期戦」にシフトしてきたとみられ、必然的にお得意の「サプライズ演出」もできなくなった。
もう日銀は「普通」の中央銀行に戻ったわけで、1月末の日銀会合を最後に、これから「日銀会合相場」、すなわち日銀政策がもたらす大相場は、もうないと悟るべきだと思う。
■政策は出尽くし、テーパリングへ向かう下準備か
「普通の中央銀行」に戻った日銀、そして、「普通の総裁」に戻った黒田さんが、政策の出尽くしを物語っている。だから、今回日銀の決定に国債買い入れ額減額(※)があったこと自体、いわゆる「テーパリング」(QE縮小)へ向かう下準備とみるべきだ。
この意味では、為替面においても、これから日銀政策に依存する円安傾向は限られ、日銀政策への過度な期待自体も次第になくなっていくだろう。
(※編集部注:これまで日銀は「長期国債について、保有残高が年間約80兆円に相当するペースで増加するよう買入れを行う」としてきた。それが2016年9月21日(水)の発表では(長期国債の)「買入れ額については、概ね現状程度の買入れペース(保有残高の増加額年間約80兆円)をめどとしつつ…」という表現に変わっている。「年間約80兆円」という数値自体は変わっていないものの、今回はこれが「めど」にすぎないということになった)
■円高・円安の決め手は、日銀政策よりもリスクオン・オフ
もっとも、円高・円安の決め手は、日銀政策よりもリスクオン・オフの環境が、より重要だった。換言すれば、アベノミクス構造が打ち出されて以来、大幅に円安が進行したが、これには日銀政策のほか、リスクオンの外部環境が不可欠な要素だった。
アベノミクスがもたらした唯一の結果、すなわち円安は、世界的なリスクオンの環境が長く続いてきた結果だった。しかし、昨年(2015年)より人民元ショックを皮切りに、外部環境が不安定になってきたから、円安トレンドが修正され、足元まで円高傾向が強まってきたわけだ。
要するに、これから円高傾向が修正されるかどうかは日銀云々よりも外部環境のほうがカギを握る。
確かに、最近中国絡みのネガティブな材料が…
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