(「オプザイルと個人投資家がツイッター上で戦争! NHKからザイFX!に取材が…!」からつづく)
■オプザイルが販売する「Air」と「Axis」
NHKのニュース番組『ニュース シブ5時』で特集されたUSBツールを販売する集団「オプザイル」。NHKの特集では、オプザイルを追跡、名古屋でキャッチすることに成功していたが、本人は関与を否定するばかりで、満足いく話を聞くことまではできていなかった。
ザイFX!でもオプザイルについて取材を進めたが、どうもオプザイルは正体がつかみにくい。
だが、取材を進めて、わかってきたこともある。まずは彼らが販売するUSBツールを見てみよう。
「オプザイルが販売するUSBツールには2種類あるようです。ひとつは“Air”、もうひとつは“Axis”と名づけられています。内容はほぼ同じで、販売しているグループが違うようです」
そう教えてくれたのは自身もSNS経由で知り合った人からUSBツールを購入したという北井さん(仮名)だ。
■「シグナルどおりに売買してもまったく勝てなかった」
「私が購入したのも、NHKのニュースで紹介されていたようなルートです。
ツイッターで『バイナリーオプションで稼いでいます』という人にコンタクトをとったのがきっかけ。すぐに2人の男性が静岡から東京まで来て、『サインどおりにやれば勝てるから』とUSBツールを40万円で買わされました。
最初は30万円、のちに40万円、50万円と値上げされたようです」(北井さん)
オプザイルの拠点のひとつが静岡。その他、名古屋、仙台での活動も目立っている。
「私はまったくの投資初心者。FXの経験もありません。サインどおりに取引して勝てたのは本当に最初の1、2回だけ。あとはまったく勝てなかった」(北井さん)
彼らが販売するツールとはどんなものなのか。北井さんから借りたUSBツールをパソコンに挿してみた。

■オプザイルUSBに40万円、50万円の価値はあるか?
USBメモリーからして普通のものとは違う。中のファイルがコピーできないようになっているコピーガード仕様。主に情報商材販売者向けに作成されているもののようだ。
その中身はというと、NHKの『ニュース シブ5時』でも触れられていたように、米国のあるFX会社が配布しているメタトレーダー(MT4)だった。メタトレーダー(MT4)はロシアのメタクオーツ・ソフトウェア社が開発した取引ツールで、通常はそれがメタトレーダー(MT4)口座のあるFX会社などを通じて配布されている。
【参考コンテンツ】
●ザイFX!×メタトレーダー(MT4)
オプザイルは、米国のあるFX会社が口座開設者向けに無料で提供しているメタトレーダー(MT4)を有償で配布している時点で、法律を侵害している可能性が高い。
ただ、通常のメタトレーダー(MT4)と違うのは、特殊なカスタム・インディケーターがインストールされていること。「TheAir」と「TheAirSystem」だ。
そして、このインディケーターなどを表示させる「定形チャート」と、複数のチャートの「組表示」があらかじめ設定されている。
■矢印で3分バイナリーオプションの購入を指示
定形チャートにはボリンジャーバンドと移動平均線が表示されているが、目をひくのが矢印のシグナル。これがオプザイルのUSBツールの心臓部だ。
「上向きなら上昇のオプションを、下向きなら下落のオプションを買うように言われました。業者はハイローオーストラリア(金融庁から警告書が発出済み)、矢印が出た足が確定後、3分後が判定時刻のバイナリーオプションを取引するように、と」(北井さん)
ハイローオーストラリアの3分バイナリーオプションは予想が的中すれば約1.8倍の払い戻しで、負けたらゼロ。勝率50%とすれば期待値はマイナスとなる。1.8倍の払い戻し倍率で収益をあげるには、55.6%以上の勝率が必要になる計算だ。
【参考記事】
●オプザイルが利用しているのは「ハイローオーストラリア」
ちなみに日本のバイナリーオプションだと、払戻率はおおむね90%から96%前後。ある特定の条件下だと、払戻率が連続して100%を超えている事例も見受けられる。

■“フィボナッチトレースメント”とはいったナニ?
TheAirのインディケーターは親切にも過去の勝率を表示してくれるのだが、55%を越えているものもあれば、下回るものもあり、バラバラ。いっそ勝率20%で安定してくれているなら、逆指標として使えそうなものだが、表示された数字を見ると50%前後の微妙な水準が多く、これで安定的に勝てるとは思いがたい。
そう思う人のためなのか、USBメモリーにはPDFファイルも入っていた。そのタイトルは「勝率を上げるために」。
そういうの待ってた!と思って読み進めると――
基本1.サイクル チャートは常に上昇と下降を繰り返して進んでいく
基本2.トレンドとレンジ トレンド:明らかな上がりor下り
基本3.いつ起こるか トレンド:急に起こる
基本4.バイナリーオプションでは値動きの激しいトレンド相場はNG より安定したレンジ相場を狙うのが鉄則!
全19ページの中身はこのレベルの内容に終始していた。オプザイルのターゲットが未経験者であることがわかるだろう。果たして、この程度の内容で勝率が上がるのだろうか?
このPDF資料、記載されている用語にも気になるところがあった。38.2%、50.0%、61.8%といった上昇相場での押し目、下落相場での戻りの目安を示す「フィボナッチ・リトレースメント」を知っているFXトレーダーは多いはず。けれど、オプザイルのPDF資料には、これが「フィボナッチトレースメント」という間違った用語で何度も何度も繰り返し記載されていたのだ。
このPDF資料を作成した人のトレード知識はさほど深いようには思えない。

PDF資料のレベルはともかく、メタトレーダー(MT4)のインディケーターを作るには…
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