昨日のアジア時間ではドル円が114円台に乗せてきて、なかなか下がらない。堅調のままだった。欧州序盤でもドル買いの流れは強まって、大幅ではないものの、ドル円は一段高した。これはドル金利の上昇が顕著になってきたからである。ドル金利といっても、短期金利のほうである。
短期金利がなぜ重要かというと、それはFEDの誘導目標だからである。長期金利はコントロールできないのである。日銀が指値買いオペとかいっているが、それがどこまでワークするのかは実験中なのである。
歴史的にも長期金利はコントールできそうなものだと思われてきたが、1980年代のインフレ相場の時に見られたように、金融当局の考えの通りに運ばない。直近の例では10年前にグリーンスパン議長が「長期金利の謎」と表現して、長期債のコントロールがままならないことを痛切に感じたという事実もある。
だからドルの値段に関する議論には、短期金利を見なくてはいけない。評論家がいうような「長期金利が上がったのでドルが買われた」などというのは、ほとんど当たらないのである。長期金利が上がってもドルが下がっている時もあり、それは半々なのである。要は役に立たない。
その短期金利なのであるが、1年先の短期金利先物で市場の感応度を測る。今でいうとドルライボーの先物2018年3月もので見る。為替レートと違って、日ごろはチキチキとしか動かない。しかし経済指標がサプライズなものであったり、金融当局者の発言の前後で大きく揺れることがある。
特徴はいったん動くとそっちの方向に張り付いてしまって戻ってこないのである。だからある意味では相場の方向性を見極めやすい。アメリカの失業率の前後では為替相場も株価も上下に激しく振れるが、短期金利を見ていれば、どっちに行きたがっているのか、わかろうというもの。
ここ1週間で多くのFRB理事や地区連銀の総裁が、追加利上げも妥当な時期だと表明した。これによって確かにドルの短期金利は0.15%分ほど上昇した。1回の利上げが0.25%だと考えられているので、かなり多くの利上げ分を織り込んだことになる。
これがユーロドルやドル円でのドル高傾向を強めたものといえる。そしてなお現在もドルは高値張り付きの状態である。トランプ大統領の演説が終わってから、その傾向はさらに強まったといえる。
今晩はイエレン議長やフィッシャー副議長のトークがある。ここで利上げもやむなしとのコメントが出てくれば、それは3月利上げの地ならしということで、ドルはやや買い進まれそうだ。しかしあくまでも「やや」であろう。
なぜならば利上げの大部分をすでにドルの値段に織り込んでしまっているからである。今となっては「50ベーシスも」という見解でも出てこない限りは、積極的なドル買いにはつながらない。むしろ「ペースはゆっくりと」とか「トランプ政権を見守りたい」などといったら、大きなドル相場の反落につながってしまうかもしれない。
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