■ゴトー日なら、上昇する確率はもっと高くなるかも…
もう1つ、仲値トレードで忘れずに考慮したいのが「ゴトー日(五十日)」の存在です。
ゴトー日とは、毎月「5日、10日、15日、20日、25日、月末日」を指す言葉です。事業法人の資金決済日が、これらの日に集中しやすい傾向にあるため、通常日と比較して米ドル買い需要が高まりやすいといわれています。
また「5日、10日、15日、20日、25日、月末日」が土日や祝日と重なった場合は、その前営業日が「実質的なゴトー日」ということになります。
例として、以下に2016年10月のカレンダーを使って、実質的なゴトー日に当たる日を丸で囲ってみました。

上の定義とは少し異なりますが、検証をやりやすくするため、ここではゴトー日を単純に営業日の中で「5の倍数の日」として、先ほどと同じように「上昇した日」、「下落した日」、「変わらなかった日」の日数と、全日数に占める割合を算出してみました。先ほどとは、少し違う結果になるのでしょうか……。
●「上昇した日」の数…145日(50.7%)
●「下落した日」の数…139日(48.6%)
●「変わらなかった日」の数…2日(0.7%)
単純な割合だけでみると、上昇した日が全日数を対象にした検証では50.3%だったのに対して、「5の倍数の日」だけに絞ると50.7%と、ほんのわずかに上がっています。ただ、統計的検定を行ってみると、両者の差に有意性はみられず、上昇しやすい傾向にあるとはいえませんでした。
「実質的なゴトー日」をきちんと抽出してもっと正確に算出すれば、もしかしたら少し結果は違ってくるかもしれません。しかし、あたかも定説のように頻繁に聞かれる「米ドル/円はゴトー日の仲値にかけて上昇する可能性が高い!」 という話は、「おっしゃるとおりです!」とまでは言いきれないということになりそうですね。
■週末+5の倍数の日は6割を超える上昇に!
「仲値にかけて米ドル/円は上昇する傾向がある」って話を幾度も耳にしてきたけれど、有意差はないという結果になってしまい、ちょっと納得がいかない状況。それならば、他にも条件をつけ加えて、いろいろと検証してみれば、もう少し勝率のいいパターンが見つかるのでは……?
たとえば、9時から10時にかけて、米ドル/円には上がりやすい曜日や、下がりやすい曜日があるとか?
●月曜日…上昇131日(44.6%)、下落163日(55.4%)、変わらず0日(0.0%)
●火曜日…上昇146日(49.7%)、下落146日(49.7%)、変わらず2日(0.7%)
●水曜日…上昇152日(51.7%)、下落140日(47.6%)、変わらず2日(0.7%)
●木曜日…上昇142日(48.3%)、下落149日(50.7%)、変わらず3日(1.0%)
●金曜日…上昇169日(57.5%)、下落124日(42.2%)、変わらず1日(0.3%)
おお! 曜日別に算出してみると、金曜日は9時から10時にかけて上昇する確率が57.5%と、これまででもっとも高い結果になりました! さらに統計的検定をやってみると、このようなことが起こる確率は約5%であり、統計的には偶然と考えにくい有意差がある水準になっています。
これなら、この条件で長期的に売買を繰り返せば、利益を積み重ねられる可能性が高そうです。
逆に、月曜日に関しては下落する確率の方が55.4%と高く、統計的検定を行ってみると有意差が確認できました。値幅的にも下落時の平均値幅が10.1銭と、上昇時の平均値幅の9.3銭を上回っているので、月曜日は9時に米ドル/円を売って10時に買い戻すトレードが有効ということになりそうです。
金曜日に上昇する確率が高いのは、もしかして、カレンダー的に実質的なゴトー日にあたることが多いということも影響しているのでしょうか?
実質的なゴトー日を抽出してデータを出すのは大変なため、ここでは、金曜日で、なおかつ5の倍数の日に該当するものだけを抽出してみました。
●「上昇した日」の数…35日(60.3%)
●「下落した日」の数…22日(37.9%)
●「変わらなかった日」の数…1日(1.7%)
すると、60.3%の確率で上昇するという結果に! しかも、上昇した日の平均上昇値幅は12.2銭と、下落した日の平均値幅である5.8銭を大きく上回っています。これは、かなり効率的なトレードができるかも…。
ところが、統計的検定をやってみると、このようなことが起こる確率に、偶然と考えにくい有意差は認められないという結果になりました。単純な確率では上昇した日の方が多かったけれど、検証するデータの数が先ほどのものより少ないため、統計的にはこのようなことになるということなんですね。ただ、今回はできなかったのですが、これと同じ条件でもっとデータを集めれば、統計的にも有意になるかもしれない、という手応えは感じました。
下の図は、ここまでにご紹介してきた、9時から10時の検証結果を一覧にした表になります。ご参考まで。

(「『仲値トレード』って本当に儲かるの?(2) 相場観一切無視で勝率7割超の手法発見!?」へつづく)
(ザイFX!編集部・堀之内智)
株主:株式会社ダイヤモンド社(100%)
加入協会:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)