昨日の欧州序盤でドル円は106円台の前半であった。このところ戻し切れないドル円である。上がっても106.30くらいがせいぜいではないかとの見方も強い。私も106.10でショートに振って、タイトストップで構えていた。
ドル円は小動きだったが、動いたのはユーロのほうだ。ECBの金利会合があって、その中で量的緩和の継続に関する文言のトーンが落ちたのだ。それで金融政策のタイトニングが意識され、ユーロは急伸。しかしよく見るとECBが来年のインフレ見通しをやや低めに抑えたうえ、ドラギ総裁が「好調な景気がインフレ上昇を意味しない」と発言したのだ。
これでユーロ金利先高観がまったく消え失せてしまい、ユーロドルは下げに転じた。確かにファーストショットでユーロロングに傾けたプレーヤーも多かったはずだ。そのままニューヨーク時間ではズルズルとユーロドルは値を下げ続ける一方の展開となった。そしてユーロは全面安のままニューヨーククローズを迎えた。
一方で市場の関心であった関税の問題も心配がやや薄らいできた。トランプ政権の関税の在り方があらかたわかってきたからだ。NAFTA関係のカナダとメキシコは対象外とすること、また軍事的な同盟国には配慮するなどである。
これらは想定の範囲内であったのだが、やはり公的に表明されて市場に安心感がもたらされたといってもいいだろう。米国株が一段高する中、ドル買いのファクターも積み重なった格好だ。
今日になって訪米中の韓国の使節団の話が伝わってきて、5月までには米朝の首脳会談をするという。また北朝鮮は非核化の意思もあるとのこと。これが地政学的リスクを薄めることとなって、マーケットは全体的にリスクテーク一色となった。
為替相場ではドル円が急伸。106円台の後半までジャンプアップしてきた。昨日の海外市場ではあれほど動かなかったドル円が、である。しかしこうして米朝の首脳会談が開かれることになるというのは、北朝鮮のテーブルの上で踊らされているだけなのではなかろうか。
そもそもトランプ大統領はこの25年間の対北朝鮮の政策は間違っていたと公言していた。それなのに対話できることになって喜んでいるというのは、過去の繰り返しになるリスクは考慮していないのか。それを反映してか、リスクテークが一巡後は、もう値が元に戻りつつある。
今晩はアメリカの雇用統計である。3月のFOMCでは利上げするというのがマーケットのコンセンサスなので、金融政策に与える影響は少ない。しかし先月の例でもわかるとおり、長期金利に上昇には敏感になっているところなので、賃金の上昇具合には注目が集まっている。
マーケットが壊れて欲しくないと思って、すなわち「適温相場」などと言って何もしないことを臨んでいる向きには、今回の賃金上昇率があまり高くないことを期待している。天候のせいだとか、年末商戦の影響などと言って、前回の高かった賃金上昇を合理化しようと努めているようだ。
これが今回発表において危ないところだ。予想通りであっても株価は崩れる遠因を形作っている。雇用統計の結果に関係なく、ドル円のショート攻めのほうに分がありそうだ。
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