昨日は外部環境に関係なく、ドル円は実に狭いレンジに固まった。107円ちょうどをはさんでである。アジア時間では106.90から107.00くらいまでで推移し、欧州時間からは107.00から107.10だった。いつ画面を見ても同じレートだった。
為替相場は動かなかったといっても、材料はそれなりにあった。まずは週末に発表されたアメリカの財務長官やNEC委員長の見解で、中国との貿易戦争も沈静化するだろうという内容だったので、日本株も含めて世界的に株価は上昇。つまりリスクテークの流れではあった。
円安になるにはなったが、50ポイントも動いていない。そしてニューヨーク時間の午後からは議会予算局が2020年までに1兆ドルの赤字に達すると公表したのをきっかけに、マーケットはリスク回避に向かった。米国株はそれまでの大きなゲインをすべて吐き出した。ドル円もようやく膠着していたレベルから離脱氏はしたものの、106.65あたりまでしか安値攻めはしなかった。
昨夕には黒田総裁の発言があった。立場が日銀総裁なので、従前の言動と違うことをしゃべるわけがない。しかし今回は2期目の就任後の発言でもあるので、今後の5年をうらなう意味でも比較的に重要性がある。
アベノミクスを評価する、もしくは評価しておかないといけない立場の人は、黒田総裁が現行の金融政策を継続することを好感する。だから金利などはいじってほしくもないし、余計なことも話してほしくはない。そしてそれに沿うように黒田総裁は話した。
発言の中身は「物価目標のプラス2.0%にはまだ距離がある」とか「緩和縮小の出口戦略は議論するのも時期尚早」などなど。要は「適温相場」なるものが金融政策のような官製相場であるならば、お上から積極的に動いて欲しくないということ。
一方で今後5年も同じことが続くのだから、これは「さらに失われた10年」になってしまうという懸念の声。金利は景気の過熱状況をコントロールすべき手段であるのに、それを放棄して20年以上が経っているのだから、そろそろ機能を回復させないと本格的な経済ショックに耐えられなくなるということ。
金利がショックアブソーバーの役割を果たさなくなることを心配してのことだ。そして老人が貯金の利息だけで食べていけなくなってから、かなりの時間が経過しているのも問題視されている。低金利が当たり前の社会になってしまうことに大いなる危惧を感じている人びとがいるのも確かだ。
今日になって習近平主席がアメリカとの貿易戦争で話し合いを模索していることを表明したことで、市場は再びリスクテークの流れが強くなっている。グローベックスでの米国株も前日の高値を追い抜いてきた局面もあった。
しかしトランプ大統領の顧問弁護士に捜査の手が入ったという事実もあるし、また48時間以内にリビアを攻撃するかを決めるとも言っているので、目先のリスクは減っていない。注目はこの買い進まれた高いレベルで始まるであろう米国株の値保ちである。
このまま高値追いで米国株が始まれば本物だが、やっぱり買っていけないということになると相当に大きなリスク回避が期待できる。米国株オープンの頃の挙動を探って、ドル円をショートにしたい。
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